【キャンプレポート】疲労の中で質を要求 全ては栄光のために ※一部無料
第1次串本キャンプ第4日の18日、和歌山県串本町のサン・ナンタンランドで午前と午後の2部練習が行われた。午前中は今季初めて11対11フルコートの実戦形式に取り組んだほか、午後はカウンターの攻守やシャトルランなど。連日の2部練習で追い込み、シーズンを戦い抜くだけのタフな心身を練り上げようとしている。
「疲労が溜まっていて、フレッシュな状況でゲームをやったわけではない。そこでどれだけ頑張れるか」「評価のためのゲームではない」と霜田監督。主力などの色分けなくメンバーをシャッフルして2チームを作り、20分2本を行った。互いに手の内を分かった中で、それでも相手を上回れるか。両チームがピッチでにらみ合った。
得点は2-1で、2点決めた側はいずれもショートカウンターだった。1本目でまず安藤が右サイドの高い位置で奪うと、中央の前田を経由して最後は左の山口が難なくフィニッシュ。その後も再び敵陣深くで奪い、山本の左クロスから前田がネットを揺らした。2本目は鋭く裏に抜けた滝がファウルを得て、安永が鮮やかな直接FKを決めて1点を返した。
裏に抜ける、高い位置で奪う。これらは落とし込んできた昨季以来のスタイルで、そこからゴールが生まれた。裏返すと失点した側がビルドアップの局面でミスが出たり、背後を取られて倒したからこそでもある。連日の2部練習で疲労が蓄積している状況だが、シーズンの最後にJ2昇格を達成するために、後悔のない日々を送っていく。
「最後に笑って終われるように――と考えたら、何も苦じゃない」。前日に滝がそう話した通り、積年の悔しさを晴らして再び右肩上がりの曲線に転じるべき勝負のシーズンだ。新加入選手の多くも、悔しさをバネにして這い上がるためにこの松本山雅を新天地に選んだ。
午後練習の最終セッションではシャトルラン。片道20mを2往復し、わずか10秒のレストで再び2往復する。実戦での走り方に即した設定で、さらなるポイントは最後にボールを蹴ってコーンに当てること。國保塁フィジカルコーチは「最後の一番大事な局面でボールタッチが入る。つらい時のクオリティーを意識して、身体はヘタるけど粘ってほしい」と選手に説明した。
ホイッスルとともに一斉に駆け出す。霜田監督はターンする側に立ち、全力を出し切るようゲキを飛ばす。ダッシュで20m先のポイントをしっかり手で触り、足に負荷をかけてターン。レストのタイミングなどで盛んに声を出し、仲間を鼓舞しながら2セットを走破した。
このほか、30mほどのフィールドで攻守の切り替えやカウンターの守備などを意識付けるメニューも。午前にはセットプレーの攻守も再び入念に確認した。今季初のトレーニングマッチ・奈良クラブ戦を控えた19日は午前のみの1部練習とし、コンディションを整えて臨むという。
霜田監督と選手2人のコメントは以下の通り。
霜田 正浩監督
――今日も最後にシャトルランを組み込みました。
キャンプで毎日午前と午後の練習をしていて、負荷も高くなっています。環境は良いし3食がついているので、キャンプならではの練習になっています。何のためのキャンプかと言えば、シーズンを戦う体力もそうだし、結束力もそう。いろんな準備をしたいと思っています。
――シャトルランを走った最後にボールをコーンに当てるルールでした。キツい時にこそ丁寧にプレーすることの大事さを求めていましたね。
そういうところです。そこにこだわる。あのパス一本が大事。走り切るのも大事。全力を出し切るのも大事。疲れるのも当然ですけど、疲れてもボールを蹴らないといけないのがサッカー選手です。そういうところにこだわっていきたいです。
――フィジカル面の強化はもちろんですが、そうした練習を通じて、新体制発表会で言及していたような「心」の部分も強くしていきたいのでしょうか?
時代が変わっても変わらないところは残っています。根性のドラマは好きな人が多いでしょうし、僕も嫌いではありません。必要なことですが、根性だけで勝てるわけではありません。頭と心は繋がっているものですが、サッカーの理解は頭で、戦う気持ちは心。その両方がないといけません。
――午前中は紅白戦を行いました。どんな狙いがありましたか?
週末にゲームが控えているので、プレータイムを確保したいと思いました。40分やった選手もいるし、20分しかやらなかった選手もいますが、初めてやってどのくらいできるのか。何ができないのか。いろんなことが見えました。やることに意義があったと思います。シャッフルしてチーム分けをした中で、去年のことがわかっている選手もいれば、どうすればいいのかと聞いてくる選手もいました。
疲労が溜まっていて、フレッシュな状況でゲームをやったわけではありません。そこでどれだけ頑張れるか。足が出ないとか、技術の精度が落ちるとか、そういうことも出てきます。それは至って自然な現象なので、なんとも思っていません。2チームに分けて、お互いのやりたいことをやり合う。お互いをわかっている中で、相手をどれだけ上回れるか。それが精度や強度の部分です。2-1と点差はつきましたけど、どちらが勝った負けたは気にしていません。「こうやるぞ」とわかっていて「でもうまくいかない」とわかるのも一つのトレーニング。どちらが強くて、どちらかが弱いゲームにならなくてよかったです。