コラソン試合レポート 第4節 浦和レッズ戦

ここまでの戦績は111分の松本山雅FC。第4節となる今日の対戦相手は言わずと知れたビッグクラブの浦和レッズだ。

このチーム名を聞くと、山雅と共に長い間を闘ってきた方々は、天皇杯での「ジャイアントキリング」を起こした記憶が蘇ることだろう。

01s

山雅が地域リーグに所属していた時代の話であり、当然、僕もまだ入ってはいなかったが、そんな僕が松本山雅というチームの名前を初めて聞いた瞬間でもあった。地域リーグのチームがJ1のビッグクラブに勝ったのだから、サッカー通ならずとも多くの人たちを驚かせる大ニュース。そして、「松本山雅」という名前が初めて全国区に躍り出た試合といっても過言ではないだろう。

この2009年の偉業から6年。

その因縁の相手でもある浦和レッズと、J1のリーグ戦として埼玉スタジアムで行われる本試合。…否が応でも期待と注目が集まる一戦であった。

02s

さて、試合に入る前に浦和レッズというクラブについて少し語っておく必要があるだろう。浦和レッズはリーグ優勝経験もあり、資金力はもちろんのこと、当然戦力を見ても他のどのクラブもが羨むJリーグを代表するビッグクラブである。

それに対して、松本山雅は今年J1に上がってきたクラブ。僅か3年前まではJFLに属していた。

J1では、どこのチームと対戦しても個の力で勝つことは難しい。そんな中、より個の力が強い浦和レッズに対して松本山雅がどう戦うか?そして勝ち点を奪えるのか?山雅の組織力がどのくらい通用するのか?僕個人としても見どころの多い、とても楽しみなゲームだ。

06

15時を過ぎ、大勢の観客を集めた埼玉スタジアムにキックオフの笛が鳴り響いた。

立ち上がりは予想通り、レッズが攻めて山雅が守る時間が長く続く。

前半7分には右サイドから切れ込んだ梅崎がシュート。10分には左サイドを上がって来た槙野からズラタンにクロス。ギリギリで合いはしなかったが、立ち上がりからレッズの技術の高さ、パスの精度の高さは際立っていた。山雅もボールに対して強くプレスに行くものの、そのプレスを剥がせる技術と落ち着きは目を見張るものがあったと思う。

03s

レッズの選手は簡単にプレーしているように見えるが、難しいプレーを簡単そうに見せられるからこそ彼らは給料を貰っている(笑)。

28分にも柏木から宇賀神にピンポイントのスルーパス。だが、これはハンド。これも簡単そうに通したパスだが、パスの強さも含めて簡単なパスではない。それに山雅の選手からしたら、「ここに通してくるのか?」と思うパスだった。

30分、35分と決定的なピンチもあったがGK村山のスーパーセーブで防ぎ我慢強く戦う山雅。

山雅も33分。喜山から池元にスルーパス。池元が落としたボールを岩上が無回転のミドルシュート。GK西川にセーブされた。

しかし、その後もレッズが試合を優勢に進めて前半は終了。

後半、山雅はシステムを変更してレッズの攻撃に対応した。岩間を真ん中、両サイドに喜山と岩上を置いて中盤の並びを変えたのである。

前半、浦和に使われていたバイタルエリアに人を置くことによって、そうさせないためのシステムチェンジだ。これが功を奏し、レッズは明らかに前半よりは攻めにくそうに見えた。

そして山雅は後半開始早々の47分、岩上のスルーパスに抜け出した池元がシュート。

このシュートがクロスバーを叩く。

後半の山雅は非常に上手くレッズの攻撃を守れていたと思う。

しかしレッズも得点を取ろうと「個」の力で打開を図る。

79分に山雅の左サイドを関根が崩しあわやの場面を作ると、83分またも深い位置まで上がった関根から上がって来た森脇にパス。

これをワントラップしてミドルシュート。

04s

これが決まってレッズが1点を先制。

この得点には目に見えない「個」の力があったのは皆さんわかっただろうか?

この場面、関根選手にボールが渡った瞬間、岩沼が対応に行ったが、その前の79分の場面で関根選手は岩沼選手を抜いて決定的なチャンスを作っている。

そのイメージがカバーをした喜山にはあったに違いない。そのため森脇についていた喜山がカバーに入っていた。

前の「布石」さえなければもう少し森脇の近くにいてパスが出ても対応出来ていただろう。

そういう意味ではシュートの質も含めてレッズが山雅を「個」の力で上回った瞬間だったと思う。

05s

そして10のままで試合は終了。

この試合、山雅は本当によく戦った。しかし、レッズがそれを上回ったのである。

レッズの技術の高さ、そして焦れながらも最後にゴールを決めるメンタリティ。

毎年のように優勝争いに加わり、悔しい思いをしているチームだからこその強さ、というものを正直、感じるゲームだった。

でも、そんなチームを相手に山雅の選手は自分達の力を出し切って戦った。

と同時にこういうゲームを続けて行けば、粘り強く勝ち点にも手が届く…そう思わせてくれた試合内容だったと思う。

浦和レッズをホームに迎える時には、更に力を付けた山雅とサポーターの皆さんも共に戦い、そして浦和を倒しましょう!

飯尾和也

文章:コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表