コラソン試合レポート 第9節 アルビレックス新潟戦

手ごたえを感じたガンバ大阪戦から中2日、ホームスタジアム・アルウィンに戻りアルビレックス新潟を迎え撃つ第9節。

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まず対戦相手である新潟について。アルビレックス新潟と言えば、現在山雅を率いる反町監督が2001年から2005年までの間監督を務めていたチーム。しかも、就任3年目の2003年には、J2で優勝しJ1へと昇格を果たしている。

それからJ112年目を迎えた同クラブだが、不思議なもので反町監督が去ってから10年が経ち監督が変わっているにも関わらず、運動量が多く皆が真面目にプレーするという反町監督時代に築かれたベースが今でもしっかりとチームに根付いている。そんなJ1でも屈指のハードワークのできるチームである。

地方のチーム、ハードワーク、そして、反町監督がJ1へと導いたチーム…。山雅の先輩であり、目指していかなければならないチーム、とも言えるだろう。

ゴールデンウイークは中3日、中2日でどんどんと試合が来る。

しかし、このゴールデンウィーク中のリーグ戦、中2日という日程で迎えるのはこの試合だけ。

なぜこんなことを言うのかというと…僕の体感だが、中3日あれば疲れはかなり取れる。でも、これが中2日の試合となると前の試合の疲れが来ている時に次の試合が始まる感覚で、正直体が重かったのを憶えている。まあ、あくまでも僕の感覚なので、皆は若いので大丈夫だと思う(笑)。が、少なからずそういうこともあるのではないだろうか。

しかし、この連戦を乗り越えるために山雅はキャンプの時から厳しいトレーニングをしてきているし、この様な試合に臨むにあたり何より大事なのは「メンタル」。

これに関しては全く心配してない。それは戦いの舞台となるスタジアムが山雅のホームである「アルウイン」だから。あの雰囲気の中、足を止める選手はいないでしょう(笑)。

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山雅は今まで全試合先発してきたDFの酒井が累積警告で出場停止。代わりにリーグ戦初先発の大久保を3バックの中央におき、後藤が左にスライドした布陣で臨んだ。

今節、新潟からも2500人以上とも思われる沢山のサポーターが駆けつけた。試合前から両チームサポーターのプライドがぶつかり合う、そんな素晴らしい雰囲気の中で迎えたキックオフ。

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開始早々の6分、思わぬ形で試合が動いた。ペナルティエリア内でボールを奪おうとした後藤が足を出すと、新潟のFW指宿選手が倒れる。正直、微妙な判定ではあったがPKを取られ、これをレオ・シルバに決められ新潟に先制を許してしまう。

このプレーの判定には賛否両論あると思う。しかし、厳しいことを言うかも知れないがペナルティエリアに入られ足を出し、PKと思われてもおかしくないプレーをした自分達の実力。

僕だったらそう思う。

先制された山雅だが、9分には岩上からのクロスを飯田が迫力のあるヘディング。

全く引くことなく攻めると22分、待ちに待った瞬間が訪れる。

右サイドでスローインから田中とパス交換をした前田。中に切れ込むと、左足を思い切り振り抜き蹴られたボールが逆サイドのサイドネットに突き刺さった!

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解説の必要なし!これがギンギラギン前田のやり方!(笑)。冗談はこれくらいにして、前田は誰もが認めるポテンシャルを持っているのがこのプレーで証明された。

今までも惜しいところまでは行っていただけに、まさに待ちに待ったリーグ戦初ゴールだ。

誰が見ても文句なしのビューティフルゴールで得点を奪い、同点に追いつくことに成功した山雅の勢いが増す。

その後も29分には岩上からのパスに田中が走り込み決定機を作ると、43分にはフリーでボールを受けた岩間がミドルシュート。

立て続けに岩上のFKのこぼれ球に飯田が詰めるなど、新潟を激しく攻めたて前半を終了。

後半からは、前半に接触プレーで怪我をした後藤に変わり今季リーグ戦初出場となる坂井が入った。

後半の立ち上がり、お互い決定機を作るまでには至らない時間が続くが、球際で見せる激しいぶつかり合いにはお互いの勝ちたい「気持ち」が出ていてとても見ごたえがあった。

風下に立った山雅は我慢の時間が続く。

70分のCKのピンチも体を張って凌ぎ切ると71分には阿部を投入。新潟ゴールをこじ開けにかかる。

しかし逆に82分。中盤でボールを失うと、新潟の途中投入された山本がボールを運び左足を振り抜く。足を出した飯田の股を抜けて山雅のゴールに吸い込まれた。これで1-2

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このゴールには駆け引きの技術が隠されている。僕もこのDFの対応にはいつも悩まされていた。

どういうことかと言うと…。試合後にシュートを打った山本選手は「ディフェンダーの股を狙った」と言っていた。

あの状況では、ディフェンダーはシュートコースに足を出す。しかし、レベルの高い選手は相手が足を出してくるのを想定してわざと股の下を狙ってシュートを打ってくる。

僕もこれで何回、悔しい思いをしたことか…。

対戦相手ではあるが、山本選手のプレーは素晴らしかったと思う。

しかし、ホームの大観衆に押され85分には岩上のロングスローに途中投入されたドリバがフリーで飛び込む。が、ゴールならず。

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90分にもロングスローからオビナがヘッドで飛び込むが、ディフェンダーに当たりポストを叩くなど、ゴールまで後一歩と迫りながら1-2で試合終了。

「山雅らしさを出せただけに勝ち点1でも取りたかった。悔しい」と反町監督が語った通り、球際でも全く引けを取らずに良く戦った。

前田選手にはリーグ戦初ゴールも生まれた。これからの爆発を予感させるのに十分なゴールだったし、負けはしたが明るい材料の多かった試合だったと僕は思う。

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最後に一つ。試合終了後、レフェリーに対してブーイングが浴びせられた。

この日のレフェリーは、オーストラリアから来たジャレッド・ジレット主審。

オーストラリアとではジャッジの基準も多少違うとは思うが、それもサッカーの1部。PKのシーンでも書いたが、少なくとも僕はそういう笛を吹かれてもおかしくないプレーをしてしまったんだ、と思う。

判定に勝敗を左右され、審判のせいにしてる様ではダメだと思っていた。…実際、勝つチャンスはいくらでもあったのだから。

そうしないと自分達は成長しないと思う。

ブーイングする気持ちは良くわかる。でも、山雅にとって必要なのは自分達と向き合うこと。

そして、審判にも左右されない強いチームになろうではないか!!

飯尾和也

文章:コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表