コラソン試合レポート 第11節 サガン鳥栖戦
J1第11節サガン鳥栖戦。
この試合、誠に勝手ながら『飯尾和也ダービー』と名付けてみました(笑)。
僕が2005年から2010年の6年間に渡り在籍、個人的にはプロキャリアの中でも1番長い期間所属していた特別なクラブのサガン鳥栖と、言わずと知れた僕にとって特別なクラブである松本山雅。
この両チームが対戦するなんて試合前から興奮するね!しかも舞台はJ1!
個人的な感情はこれくらいにして…今日の相手であるサガン鳥栖。
2011年にJ1昇格を果たし早4年目を迎える。
昇格した1年目の2012年はダントツの降格候補だったにも関わらず、いきなり5位という好成績を残すと、その翌年は12位。J13年めとなる去年は再び5位となり、大方の予想をいい意味で裏切り続け降格争いには1度も顔を出すことなく今季もここまで5位につけている。
山雅と鳥栖。フォーメーションこそ違うが似ているチームスタイルと言っていいだろう。
まず、ハードワークがベースのチームであると言う事。ハードワーク出来ていない選手が1人でもピッチにいたならば、J1では1つも勝てないだろう。
あとは鳥栖には豊田、山雅にはオビナと言う屈強なセンターフォワードを擁し、まずはそこにロングボールを入れて攻めるチームだと言う事。
もう一つ加えるなら、鳥栖には藤田、山雅には岩上と言う精度の高いキッカー、ロングスロアーがいてセットプレーと言う「飛び道具」を持っている点。
…これらのことから、自然とこの試合のポイントが見えてくるだろう。いかに両チームが豊田とオビナと言うエースに基点を作らせず、セットプレーで得点を奪えるか。または抑えられるか、が大きなポイントだろう。
山雅は左ワイドにJ1デビューとなる、飯尾竜太朗をスタメンで起用。走れ竜太朗!!
15時。試合の舞台はベストアメニティースタジアム。
素晴らしいスタジアムで熱戦がキックオフ。
前半立ち上がりは、鳥栖のエース豊田に対し厳しく対応する山雅。
反町監督は豊田を北京オリンピックの時に選出し一緒に戦ったこともあり豊田の良さ、そして怖さを知っていることもあり、選手には豊田の事に関してかなりしっかりと抑えるように指示していたと思う。
それが見て取れるくらい、山雅のディフェンダーが特に豊田には厳しい対応をしていた。
相手の基点をしっかり抑えることに成功した山雅が、序盤にチャンスを作り出す。
14分。FKを岩上がファーサイドに蹴ると飯田が折り返しキーパーが弾いた、こぼれ球を前田が左足でシュートを放つがこれは鳥栖のGK赤星にセーブ。さらにこぼれたボールを岩上がミドルシュート。が、これもゴール上に外れる。
更に攻める山雅。右サイドでボールを受けた岩上がクロスボールを上げると、難しい態勢ながらオビナがヘディングでゴールにねじこんだ。
しかし、これはオフサイド。
19分には、左サイドにおけるオビナと前田のテンポのいいパス回しから右サイドへと展開。
田中がボールを受けると岩上にスルーパス。
岩上が角度のないところからシュートを放つが、これもGK赤星にセーブされる。
更に更に21分、岩上のCKからオビナがヘディングを放つとこのボールがクロスバーを直撃。
このように、序盤から次々と決定機を作り出す山雅。
しかし、鳥栖も黙っていない。28分には水沼のクロスに豊田がヘディングで、合わせる。
しかしこれは飯田と大久保がしっかり体を寄せる。
前半のロスタイムにはキャプテン藤田にGKとの一対一の場面を作られるが、村山が飛び出し事なきを得た。
お互いがアグレッシブに攻め合う、見せ場の多い前半はこうして終了。
後半に入って51分に鳥栖の藤田にミドルシュートでゴールを脅かされると、55分にはキム・ミヌから池田にパスを通され決定的なピンチを作られるが村山のビックセーブで凌ぐ。
すると迎えた63分。左サイドのハーフウェイラインからのFKをゴール前に蹴って来ると思っていた鳥栖の陣形を見て喜山が岩上に横パス。更に岩上は、右サイドにいた田中にパス相手の目線を変える。このことが鳥栖にマークのズレを生じさせ、田中がクロスボールを上げるとニアに走り込んだ飯田が頭でフリックで流す。そこに待っていたのが大久保だ。魂のダイビングヘッドでゴールにねじ込み先制。
「飯田がそらしてボールがゴール前に来ると信じていた」と味方を信頼しているからこその大久保のゴールだった。
それと、今まで単純に蹴っていたFKだが、相手を見てショートで始めた喜山の頭脳プレーも見逃せない。喜山のこの機転が生んだ得点とも言えるだろう。
その得点の後は鳥栖の猛攻を受け防戦一方の展開の中、78分にはカウンターから途中投入された石原がオビナにパス。シュートは力なく追加点は奪えなかったが、しっかり守ってカウンター、という山雅の勝ちパターンに入って行く。
しかしロスタイム突入間際の89分。
ペナルティエリアに放り込まれたロビングを酒井がクリアすると鳥栖の途中投入された高卒ルーキー鎌田がダイレクトボレー。「ブラインドでボールが見えなかった」と言う村山が一歩も動けず、無情にもゴール右隅に吸い込まれた。
試合はまだ終わらない。ロスタイム3分が経過した鳥栖のCK。藤田の蹴ったボールに、この日完全に抑え込まれていた鳥栖のエース豊田が牙をむく。ミートしたヘディングがゴール右隅へ。山雅サポーターは誰もが目を覆ったかもしれない。
しかしこのシュートを村山がビックセーブ!続けざま、更に詰めていた菊池がシュート。これもクロスバーを叩く。
最後の最後まで息つく暇もないエキサイティングなゲームは1-1で終了。
反町監督は試合後「本当に良くやった。最後失点はしたが誰を責めるとかは出来ないと思います」と話したが、ゴールデンウィークの5連戦を2勝2分1敗。勝ち点8を稼いだ。
この日も遠い九州まで足を運んだ沢山のサポーターが、選手と共に戦った。
そのサポーターに勝ち点3を届けられなかった選手達は、皆、一様に悔しそうな表情を見せていた。
しかし、連戦にも関わらず最後まで必死に、勝つために走りぬいた選手たちは素晴らしかった。
追いつかれたとは言え、J1で引き分けでも満足しない選手の表情…更に、この先を期待してしまうのは僕だけだろうか?
まずは選手には、連戦がひとまず終わったので一週、体力的にも精神的にも回復をさせて欲しいと思う。
文章:コラソン 飯尾 和也
元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表