【試合展望】天皇杯3回戦 ※無料配信

連戦の2試合目は天皇杯3回戦となり、山雅はアルウィンにJ1浦和を迎える。言わずと知れた国内屈指の名門で、昨季はAFCチャンピオンズリーグで10年ぶり2度目の優勝を果たした。そして山雅にとって「アルウィンの天皇杯・浦和戦」は、いやが上にもかき立てられるものがある。2009年、当時北信越リーグだった山雅が2−0の大金星。9年ぶりとなる今回もボールを支配される時間帯が長いと予想されるが、粘り強く守って当時の再現を狙いたい。

天皇杯・浦和戦 9年前の再現なるか

09年の天皇杯2回戦。圧倒的な劣勢の中で12分に柿本倫明が、72分には阿部琢久哉がゴールを奪う。守備ではシュート20本を浴びながらも無失点に抑えた。相手には先日のワールドカップ(W杯)でベルギーから先制点を奪った原口元気をはじめ田中達也、鈴木啓太、細貝萌などスター選手がずらり。まさに「ジャイアントキリング」の先駆けとも言える大番狂わせを成し遂げた。

pre18em3_1

前回の天皇杯浦和戦=2009年10月11日

あれから9年。山雅は長足の進歩を遂げ、15年にはJ1まで上り詰めた。今季もここまでのリーグ戦は順調。前節のホーム新潟戦から中3日、次節のアウェイ岡山戦まで中4日の連戦となるが、大幅にはメンバーを変えず真っ向勝負で挑む構え。その意味では橋内、中美らが戦列復帰したのも大きなプラス材料と言える。工藤は千葉へ移籍したものの、攻撃陣の好調ぶりは不変。天皇杯2回戦で先制点を奪った永井、故障明けで実戦復帰したセルジーニョらにも期待がかかる。

pre18em3_3

前回の浦和戦=2015年7月11日

だが09年当時ほどの力量差はないにせよ、やはり相手に分があるのは確かだ。MF柏木陽介やMF阿部勇樹、GK西川周作など有名選手を数多く擁するほか、W杯帰りとなる日本代表DFの槙野智章と遠藤航が出てくればさらにクオリティーは上がる。W杯開催に伴うJ1中断期間は8日間の清水キャンプを実施。磐田、清水など同じJ1勢と練習試合を行っており、実戦感覚が鈍っているという期待も薄い。

pre18em_3

浦和 前節のフォーメーション

ただ、今季は14位と苦しんでいる。開幕5試合で2分3敗の未勝利となり、ユース監督だった大槻毅氏が暫定監督に就任。オールバックの強面が話題を呼び、チームも一時3連勝と復調した。その後07〜11年に鹿島を率いたオズワルドオリヴェイラ監督が後任に就き、中断期間中のキャンプで立て直しを図ってきたものとみられる。

ただでさえ個々の技量で山雅を上回るうえにどう出てくるか未知数なため、入念な分析を基にゲームプランを組み立てる山雅にとっては難しいシチュエーション。だがこうした逆境だからこそ、もし下すことができれば歓喜も収穫も特大のものとなるだろう。思えば09年も浦和に勝ったのが要因の一つとなって上昇気流に乗り、悲願のJFL昇格を果たした山雅。今回もまた、特別な一戦になるかもしれない。試合終了後に響く勝どきの声は「We are “GANS”」であってほしい。

編集長 大枝 令 (フリーライター)

1978年、東京都出身。早大卒後の2005年に長野日報社に入社し、08年からスポーツ専属担当。松本山雅FCの取材を09年から継続的に行ってきたほか、並行して県内アマチュアスポーツも幅広くカバーしてきた。15年6月に退職してフリーランスのスポーツライターに。以降は中信地方に拠点を置き、松本山雅FCを中心に取材活動を続けている。