【試合展望】第19節 八戸戦

前半戦ラストの次節を、逆転昇格への「序章」とする。山雅は2連敗中で4試合勝ちから遠ざかっており、首位・愛媛まで勝点10差の10 位。状況を列挙すれば、苦境にあることは間違いない。だが逆に、なんの可能性もついえていないことも確か。総得点はリーグ首位タイの30となっており、失点を排せば白星を引き寄せられる。“向かい風の吹く方へ”突き進みながら、したたかさを示して勝点3をつかむのみ。それが、連戦連勝の後半戦に繋がっていくだろう。

試練の前半戦ラストゲーム
隙を排して確固たる自信つかめ

確かに結果は出ていない。前々節の琉球戦で終盤に2失点して逆転負けを喫してから、霜田監督は「勝負強さ」の必要性を口にしてトレーニングから実践。しかし前節、またしても終盤に勝ち越しを許して連敗となった。試合終盤のセットプレーや、相手のなりふり構わないパワープレーに屈して勝点を取り逃がしている格好。確かに疲労がピークを迎える時間帯だが、そこで底力を振り絞らなければ勝点3はつかめない。

とはいえ前節は、琉球戦よりは修正力を示したのも確か。3バックの相手にプレスがハマらない現象をピッチ内で素早くキャッチアップし、守備時に2トップとなる小松と菊井を縦関係にすることなどで問題を解消した。後半は展開力にすぐれた米原を投入。相手の運動量が落ち始めたことも手伝い、ほぼ一方的に相手陣内でゲームを展開した。終盤にスローインから失点して全てが台無しになったものの、裏を返すとそこさえ克服すれば「ナイスゲーム」に転じていた。

言うのは簡単だが、遂行するのは難しい。だが“限界のピンチを本気で感じて、新しい自分が目覚める”のであれば、今こそそれを呼び覚ますとき。もったいない失点も肩を落とす敗戦も、これ以上は決して必要ない。我らがサンプロ アルウィンはもうすでに、十分すぎるほど苦しみと悲しみに満ちてきた。もちろん勝負強さはトレーニングですぐに身に付く要素ではなく、日々の積み重ねが全て。かつての勝負強さを知る古株が中心となり、そのマインドを改めてチーム全体に伝播させたい。

対する八戸は今季、7勝5分6敗の勝点26で8位となっている。J通算726試合と歴代1位の試合数を重ねる石﨑信弘監督が率いており、3-1-4-2で前線から強度の高いプレスをかけてくるスタイル。山雅はこれまでミスマッチが生まれる3バックの相手に分が悪い。ビルドアップの局面で引っ掛けられることはあるかもしれないが、すぐにカバーして未然にピンチを防げるか。最も避けたいのは、圧力を怖がってパスコースから隠れること。プレスのかけ方も含め、11人が統一感を失わずに戦うことが何より重要だ。

八戸 前節のフォーメーション

八戸も一進一退のシーズンを送っている。前節は首位・愛媛に1-0とリードしていたものの、90分のセットプレーと90+1分のバックパスのミスから一気に逆転を許した。歴戦のベテラン指揮官はこうした課題をきっちり修正しつつ、隙を見せない準備をして乗り込んでくるはず。山雅は前節の後半に見せたように、攻撃時は位置的優位を取りながら3バックの相手を丹念に攻略していきたい。そして何より、チャンスできっちり決め切る精度を示せるかどうかがポイントとなる。

前回の八戸戦=2022年7月31日

リーグの八戸戦は過去1勝1敗。ただ、天皇杯も含めるとサンプロ アルウィンでは2戦全敗となっている。昨季はチームに体調不良者が続出するなどして苦戦を強いられ、0-1で連勝が4でストップ。J1時代の2019年には天皇杯2回戦で、延長後半119分にMF國分将のゴールを許して2-3と敗れた。7月のホーム八戸戦、今度は「三度目の正直」で過去を超克したい。そして後半戦は勝負強さを示し続け、光の射す方へ。“たとえ馬鹿げた夢であっても、追うしかできない”のだ。

編集長 大枝 令 (フリーライター)

1978年、東京都出身。早大卒後の2005年に長野日報社に入社し、08年からスポーツ専属担当。松本山雅FCの取材を09年から継続的に行ってきたほか、並行して県内アマチュアスポーツも幅広くカバーしてきた。15年6月に退職してフリーランスのスポーツライターに。以降は中信地方に拠点を置き、松本山雅FCを中心に取材活動を続けている。