【かりがね通信】SORA, fly high in Singapore ※無料配信

去就未発表だったFW田中想来が、シンガポールのゲイラン・インターナショナルFCに期限付き移籍することが26日に発表された。2016年に業務提携協定を結んで以降、指導者派遣や遠征、U-15選手の受け入れなどさまざまな交流を続けてきたクラブ。高卒2年目となるアカデミー出身のストライカーは、新たな環境で成長して帰ってくる決意だ。本人の一問一答などをお届けする。

田中 想来

――オファーを受けて決断するに至った経緯などを詳しく聞かせてください。

言語が通じず文化が違う海外に行くことで、人間としても大きく成長できるのではないかと思いました。サッカー選手としてというのが一番大きい部分ではあります。2つを追うには日本のチームでやるよりも、海外だと得るものが大きいと思って決断させてもらいました。

いろんな人に相談させてもらいました。その中で、高校1年生のときの監督でシンガポール代表監督を務めていた西ヶ谷(隆之)さんに「結局はどこにいても自分次第だ」という言葉をもらいました。「シンガポールに来い」というアプローチではなかったんですけど、言葉に重みを感じて吹っ切れて、自分の中で気持ちの整理がつきました。一旦ゼロから海外で新しい生活を始めてみようと思いました。

――サッカーの部分ではどんなところを伸ばして帰ってきたいでしょうか?

FWとしての能力はもっともっと磨かなければいけないと思います。去年は練習試合も含めてなかなか足を振れる場面は多くなかったと思うので、シンガポールに行ってゴール前で足を振って得点能力も高めて、より怖いFWになれるように頑張っていきたいと思っています。

僕はゴールへ向かう動き出しが一番の特徴だと思っていて、それは誰にも負けちゃいけない部分だと思います。そこを出しながらさらに磨いて、たくさん点を取って帰ってきたいです。得点王を目指していきます。他にも狭いスペースでボールを受けたりするのはまだまだ足りない面だと思うので、ビルドアップに関わったりゴール前で受けてシュートを打ったり、細かいスペースで何ができるかをもっと突き詰めてやっていきたいです。

――シンガポールリーグに対する印象はありますか?

まず気候が日本と違って蒸し暑い環境です。その中でいろんな国籍の選手がいて、球際だったりフィジカルだったりという面は日本にも見劣りしないと感じました。強度の高いサッカーに早く慣れられるように頑張りたいと思っています。提携しているクラブに行かせてもらうということで、(ゲイランは)日本のサッカーをかなり意識しているチームだという情報を聞いています。

――トップチームの選手が提携クラブに期限付き移籍をするのは初めての事例になります。その意味で感じる部分はありますか?

まず一番最初に行かせていただけるというのはすごくうれしいことです。僕が行くことで、今後の山雅に新たな発展が生まれるのであれば、僕もその一つの恩返しになるのかなとも思います。でもやっぱり一番は一緒に山雅とともにありたいということ。一つのパイプになれるということは僕自身すごくうれしいことだと思っています。

――シンガポールで成長した先に、どんな自分の姿を見据えていますか?

やっぱり一番は山雅で活躍すること、山雅とともにJ1に行くという気持ちが一番大きいです。帰ってきてから数字の上で山雅の力になれるように点を取って、山雅を助けられるようなFWにこの1年で近付きたいです。

下條 佳明SD

――期限付き移籍が内定するまでの経緯などを聞かせてください。

年齢的にも出場機会を増やすことを考えていたのがスタートです。提携クラブができるとまずはアカデミー交流というスタンダードの付き合いが始まって、いろんな形態があります。東南アジアということもあって、せっかく日本の若い選手が活躍の場を目指すのであれば最有力候補になるというところから始まりました。

FWは国が変わってもチームが変わっても戦術が変わったとしても、やっぱり点取ることが一番重要なポイントとなるポジション。もちろんアカデミー出身だというベースはありますが、彼の特徴が生かせるのでふさわしい選手だという部分もありました。

想来はハードワークをしてくれる選手で、動き出しも特徴。普段から見ていてもほとんどオフサイドにならない動き出しをする選手で、これはなかなか珍しいです。動き出しが早くてオフサイドにならないのは、海外に行っても通用するところだと思います。あとはアタッカーとしての守備。足を止めず、ボール奪取率が高い選手です。そういう部分は国が変わっても通用するところだと僕はずっと思っています。

――どんな部分での成長を期待していますか?

こういう機会を生かして、シュートのクオリティと、(メンタルなどの)強さを身に付けてほしいと思っています。さまざまな国から選手が来ている中でも強く、そしてスピーディーな判断ができるようになることが、これからの成長に一番繋がると思っています。

その他・補足トピックス

・ゲイランを率いているのはノア・アリ監督。2018年に松本山雅FC U-18にコーチとして派遣された経験がある。田中は今オフから現地渡航までの期間、U-18のトレーニングに参加してコンディションを維持していた。ゲイランには田中を含めて6人の日本人選手が在籍する。

・フィリピン・セブ島の語学学校と提携している「松本山雅FCオンライン英会話」を通じて予習した。本人は「(英語に)自信はないけど、そこも含めての挑戦。帰ってきたときに少しでも英語をしゃべれるようになってればいい」と語っており、ピッチ内外で積極的にコミュニケーションを取りながら体得していきたい考えだ。

・シンガポール・プレミアリーグの2024-25シーズンは、5月に開幕予定。来年の5月末まで9〜10チームによる3回戦総当たりを行う。田中の契約期限は2024年12月31日までとなっており、そのままであればシーズン中に松本山雅に戻ってくることになる。ただ、これは両チームと本人の状況などによって延長される可能性もあり、流動的だ。