取材日：2015年6月5日

和也　僕の選手対談も3回目。今回は鐡戸選手をお招きしました！テッちゃん、宜しくお願いします！

鐡戸　あらたまってそんな風に言われると何か照れるね（笑）。

和也　いや、いつもの感じでリラックスしてお願いします（笑）。どうですか、念願のＪ１のステージは？「俺はＪ１のピッチに立つ！」というテッちゃんの言葉を、俺は去年の暮れからずっと聞かされ続けてきたからね（笑）。並々ならぬ決意で迎えた今シーズン、感慨深いものがあったんじゃない？

鐡戸　まあ、それはね。ずっと目指して来たものだし、期するものはありました。でも、初戦の名古屋戦の時にベンチに入れてもらえたんだけれど、いざＪ１だからといって今までとガラッと変わるかというと、そんなこともないんですよね。やっていることは同じサッカーなんで。

和也　第８節のガンバ大阪戦でリーグ戦初出場を果たしたけれど、どんな思いで臨んだの？

鐡戸　大事な試合だったし、もう、自分がどうこうというのはなくて純粋に『チームの力になりたい』という気持ちの方が強かったですね。それまでの試合、ほとんど同じメンバーで戦ってきていたのに、あの試合は喜山選手が出場停止で出られなかったんです。そんな中に自分が入ることによって流れを崩したくはなかった。むしろ僕が入ることで新たな力になれれば、と思って臨んだかな。『念願のＪ１のピッチに立つ』という個人的な思いよりも、『チームのために今の自分に何が出来るか』ということだけを考えていました。それと、ガンバ大阪とはＪ２時代に対戦したことがあったのもそれほど気負わずに済んだ要因かも知れませんね。対戦相手が名古屋グランパスとか横浜Ｆマリノスで、しかもアウェイ戦だったりしたら違ったんでしょうね、きっと。

和也　ガンバ大阪戦の時、ポジションはシャドー？

鐡戸　シャドーボランチですね。試合内容に関しては…やっぱりもっと攻撃にも参加したかったし、ディフェンス面でも足りない部分を感じました。Ｊ２時代に対戦した時も感じましたが、こっちがプレッシャーをかけに行っているつもりでも、向こうはそれほど感じていないな、という場面が多くて…そこをもっと何とかしたかったですね。もっとガンバ大阪にとって脅威となるようなプレッシャーを与えられれば良かったと思います。それと、セットプレーでキーポイントとなる部分を２つ、僕が任されていたのですが、それが出せなくて…非常に悔しい思いがあります。

和也　ガンバ大阪戦以外で印象に残っている試合というと？

鐡戸　ナビスコ杯の第１節となるサガン鳥栖戦ですね。僕にはサッカー選手をしていく上で目標が２つあったんです。一つは和也　君にもいつも言ってきたように「Ｊ１のピッチに立つ」ということ。そして、もう一つがサガン鳥栖のホームスタジアムである「ベアスタで試合をする」でした。あの鳥栖戦は、僕にとってＪ１昇格後、初めて先発出場した公式戦でもありましたから。リーグ戦ではなかったけれど、そんな試合をベアスタでやれたのは僕にとって忘れられない一戦です。

和也　サガン鳥栖のサポーターはどうだったの？

鐡戸　ええ、温かく迎えてくれて。メンバー発表の時にも僕の名前がコールされた時に凄い拍手をくれたんですよ。嬉しかったですね。…まあ、鳥栖のレジェンド・和也　先輩にはとても敵わないッスけどね（爆笑）。

和也　俺もベアスタでおじいちゃんたちと試合やったけどね（笑）。（※5月4日に開催されたレジェンドマッチ2015　vsユベントスレジェンズ戦に九州レジェンズのメンバーとして参加しました）

鳥栖戦の話が出たから聞くけど、今季の出場はヤマザキナビスコカップが中心だね。その辺はどうとらえていますか？ナビスコカップは先日（6月3日の対新潟戦）最終節を迎えたことも踏まえて思うところがあったら教えてもらえる？

鐡戸　リーグ戦とヤマザキナビスコカップが平行して開催される日程上、どうしても2チームみたいな体制にならざるを得ないじゃないですか。変な言い方だけど、『リーグ戦のメンバー』と『ナビスコ杯のメンバー』という２つのチームが、山雅という一つの大きな括（くく）りの中に存在しているわけで、そこに何というかな…少し温度差があるような感じはしていたんですよ。だから今回、新潟戦に臨む前の紅白戦をやった時には皆で集まって話し合う機会を設けてました。「今度はこうしよう」という話もして。…意図的にそういう場を作った甲斐もあってか、前の試合に比べれば形になったところもあったな、とは思います。ちゃんとピリピリ感もありましたし。…ただ、やっぱりそういった部分を結果として出したかったですね。そうでないとアピールにもならないし。

和也　テッちゃんはナビスコ杯第5節・湘南ベルマーレ戦の後に『こんなのじゃ駄目だ』って言ってたよね。新潟戦にも思うところがあったからそういった行動につながっているんだろうな、と思う。でも、あの新潟戦はたとえ勝ったとしても決勝トーナメントには進めない消化試合だったじゃない？にも関わらず、平日の夜の試合に沢山のファンがアルウィンに集まってくれたよね。

鐡戸　ええ、8500人近くの人が観戦に来てくれました。あれだけのサポーターの皆さんが集まってくれた、というのは力になりますよね。だから何としても勝ちたかったのですが…。勝ったとしても上にはいけない、という試合を戦う上で必要なのはやっぱりメンタルでしょうね。普段から試合に向けてのコンディションを整えるとか、そういった部分にどれだけ熱意を持って取り組めるかが大事なんだと思います。去年までのJ2だったら誤魔化せたことも、J1では通用しない。日ごろから真剣に練習を行い、いつでも試合に招集されてもOKという意識を、僕も含めたリーグ戦レギュラー以外のメンバーも常に持たないと。

和也　練習中や紅白戦で怒鳴ったりはしないの？

鐡戸　うーん、「怒鳴る」まではいかないかなあ。でも、紅白戦の時とかにあえて言うよう心掛けてはいます。やっぱり、切り替えとかまだ遅いですしね。キャンプの時は監督やコーチ陣も言ってくれるんです。でも、シーズンが始まれば、言われなくなる。上からすると「出来て当たり前」だと思っているから。そこで、「言われなくなったから、もうイイや」じゃあなくて、言われなくなっても続けなければいけないですよね。その辺を僕が言っていかなくちゃならないかな、って思ってます。

和也　飯ちゃん（飯田真輝選手）の時にもそんな話が出たけれど、その辺は難しいところだよね。プロなんだからそんなの自分で気付いて当たり前、そこまで言う必要があるのか、という意見も当然、あるし。

鐡戸　そうなんですよね。本音を言えば僕もあまり言いたくはない。やっぱり、言葉にするとどうしても感情的になってしまうし。どちらかと言うと、「こうして欲しい」と言葉にするよりも、「こうすれば良いんじゃない？」ということを自分が率先してやることで皆に気付いて欲しいタイプなんです。でも、僕の年齢的にもそれじゃあいけないな、と思うようになってきたっていうのかな…。例えば、リーグ戦に出場するメンバーがアウェイに行っている間、居残り組は松本で練習しているじゃないですか。そうなると、練習にしっかり取り組む選手とそうでない選手が出てくることもあるんです。一人か二人、そういったモチベーションの低い人間がいると、周囲に伝染してしまうんですよ。サッカーは個人競技じゃないので、同じチームにそんな人間がいると皆がそっちに引っ張られ兼ねないし、そうなったら取り返しがつきません。自分にも返ってくることだから、「あ、これは言わなきゃ駄目だな」と強く感じたんです。それと、そっちに引っ張られそうな選手のフォローもしなければいけないな、と思いました。レギュラーになろうと頑張っている、だけど、なかなか結果が出せずメンバーに入れない…そんなもどかしいところにいる人間に対して「でも続けるしかないんだよ」と声を掛ける。そういったこともやっていかなければと思っています。

和也　…なんか、ちゃんと考えてるんだね。感心しちゃったなあ。

鐡戸　俺のこと何だと思ってたんですか（笑）。ちゃんと考えてますよ！

和也　でも、テッちゃんが試合に出ることで、「ああ、あんな練習を積み重ねてきた選手だから試合に出られるんだな」と気付かせてあげることが出来るよね。

鐡戸　そうなんです。だからこそ、試合に出場した時には結果を残したい、と常に思っています。その意味でもガンバ大阪戦でのセットプレーは成功させたかったし、先日のナビスコ杯の新潟戦もどうしても勝ちたかったですね。

和也　さて、リーグ戦もいよいよ第２ステージを迎えるけれど、後半に向けての抱負も聞かせてもらおうかな。ポジションの希望はあるの？

鐡戸　今の希望はボランチですね。結構、楽しいですよ。攻撃にもいけるし、ディフェンスもやらないといけない。

和也　難しいよね。

鐡戸　はい、難しいです。でも、難しいからこそやりがいを感じますね。自分の仕事はちゃんとこなしながら、前も動かすという部分をしっかりとやりたい。いろいろ考える必要があって大変は大変なんですけれど…もっとボランチを極めたい、という欲を持っています。和也　さんも俺のこと、解説席から客観的に見てるんだから、いろいろ教えてくださいよ（笑）。もっとアドバイスとかくれるのかな、と思っていたら全然じゃないですか！

和也　俺も必死なんだよ（笑）。でも、でも、これからは気付いたことは伝えるようにしたいと思います。話は変わるけど、子供はどう？

鐡戸　バカ可愛いです！今の自分、息子の成長に負けてると思いますからね。負けないように頑張らないと。つい先日、ハイハイしたと思ったら、もうつかまり立ちしてるんですよ。いやー、成長するのが早いですね、子供は。

和也　子供がいると励みにもなるでしょ。

鐡戸　そりゃもう！それに、責任感も出てきますしね。何より癒されます。家に帰った時、僕に気付いた息子が声を上げながら駆け寄ってくるんですけれど…それがもうバカ可愛い（笑）。もうヤバイですよ。和也　さんも早く結婚した方が良いですよ（笑）。

和也　俺のことはいいから（苦笑）。じゃあ最後にサポーターにメッセージを。

鐡戸　そうですね…僕は今のところリーグ戦にはあまり関われていません。でも、自分の出場に関係なくチームが一丸となって戦えなければJ1で結果を残すことは難しいと思っています。ベンチに入れなかった時には、全力でメンバーをバックアップしていきます。サポーターの皆さんもJ1の厳しさというものを分かってくれているんだと感じます。毎試合、たくさんのサポーターが観客席を埋めてくれて、声を枯らし応援してくれる…たとえ負けてもブーイングすることなく山雅コールで励ましてくれて「次は勝とう」と声を掛けてくれる…これがどれだけ僕たちの力になってくれていることか。そんな応援に応えるために僕たちもやっていかなければいけないと思っています。リーグ戦も後半を迎え、これからも厳しい戦いが続きますが、変わらない応援をお願いします！僕らもブレることなく、サポーターの皆さんと一丸となってやっていきたいと思います。

和也　あとね、俺としてはテッちゃんの得点シーンが見たいな。

鐡戸　取りたいですね～、点。

和也　得点、アシスト、足跡を残して欲しい。「これが松本山雅だ！」っていう試合を見せてくださいよ。鐡戸さんが歩んできた山雅での…7年間？

鐡戸　えーと、8年、かな？いや、もう何年でもいいや（笑）。もう1年1年が勝負ですから。

和也　頼むよ。俺は自分の想いをここに置いて来ているからね（と、鐡戸選手の胸を叩く）。

鐡戸　戦いますよ！やりますよ！で、いつメシ連れていってくれるんですか？（笑）

和也　いや、いつだって良いけどさ、テッちゃんが今は子供にベッタリで誘っても来ないじゃん（笑）。