コラソン試合レポート 第14節 鹿島アントラーズ戦

今節はJリーグきっての名門クラブ・鹿島アントラーズ戦。山雅サポーターの皆さんにとっても、鹿島スタジアムでのアントラーズ戦は楽しみな試合の一つではないだろうか。

しかし、名門と言えども前節終了時点での勝ち点は15。この数字、消化試合数こそ一つ少ないが、山雅と同じで順位は山雅の一つ上。

名門と言われ、常に優勝を求められるアントラーズからすればもの足りない順位であろう。アントラーズは3冠を達成するなど黄金期を支えてきたメンバーから、若い選手への世代交代の途中と言える。

当時からピッチに立ち続けるのは小笠原と曽ヶ端くらいで、ほとんどのメンバーが入れ替わってはいる。

がしかし、キャプテンマークを巻く柴崎を始め日本代表にも選出される昌子選手など若くてもクオリティが高い選手が多く、これからの日本を背負って行く期待を担う若い有望な才能(タレント)が並び立つ。

前節、ホームアルウィンで同じく名門と言われる横浜Fマリノスに完敗した山雅にとっては、まさに正念場と言えるゲームかもしれない。

前節終了後、反町監督は「過信があったかもしれない」と言うコメントを残したが、今週の練習ではその反省も活かし、よりピリッとしたいい準備をして鹿島スタジアムへと乗り込んだ事は間違いない。

そして、去年からそうだったがリバウンドメンタリティーで結果を出してきた松本山雅だ。

今節も、そんな期待を抱かずにはいられない。

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この試合、山雅は前節と同じスタメンで臨んだ。

これも反町監督がくれた何らかのメッセージなのかもしれない。

「前節の悔しさをぶつけて来い!」と…。

アウェイの鹿島スタジアムは2002年のW杯の会場でもあり、リーグでも屈指のスタジアムの雰囲気を誇る。

そんなスタジアムに2000~3000人と言われる山雅サポーターが詰めかけ、素晴らしい後押しに押されて試合はスタートした。

立ち上がりから山雅がリバウンドメンタリティーを全面に出して行く。

前半5分、自陣右サイドでのフリーキックから岩上選手がゴール前にボールを放り込む。ファーサイドにいた大久保選手が折り返し、酒井選手が左足でGKのいわゆる『ニア上』をブチ抜き先制。

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まさに電光石火!気持ちのこもった得点!

単純に放り込んだボールを折り返して得点、と思えるが、実はこのゴール、反町監督からすればしてやったりの得点だったのだ。

どういうことか…を本当はもっと詳しく解説したいのはやまやまなのだがごめんなさい、企業秘密なので()
ただ、もう一度繰り返すが反町監督からしたら「してやったり」のゴールだった、とだけ言っておこう。

 

しかし、その得点の喜びも束の間の7分、鹿島に同点にされてしまう。

左サイドでボールを持った柴崎からファーサイドの右サイドバック西にクロス。これを折り返し、ニアに走り込んだ赤崎選手に決められてしまう。

ファーサイドで折り返された西のマークについていた前田選手が「自分の守備の甘さが出た。しっかりついていれば失点はなかった」と言う通り、ほんの一歩のポジショニングが得点につながり、勝敗を分けてしまう…それがJ1

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この『ほんの一歩』を90分間休むことなくやり続けないと見逃してもらえない、さすがは鹿島である。

しかし山雅も19分。ロングスローを警戒した鹿島に対して、普通にスローインをして揺さぶると右サイドの田中選手からフリーのオビナにクロス。これは惜しくもゴール右に外れるが、少しでも鹿島のスキ、マークのズレを生み出そうとする山雅のアイディアは健在、と言うプレーだった。

しかし、次第に鹿島にボールを支配されると30分には小笠原選手から土居選手に縦パス。人が寄せられるとヒールパス、ボールは遠藤選手に渡る。そしてラストパスが遠藤選手からフリーになった柴崎選手へ。これは村山選手がビックセーブで防ぐが、さらにこぼれ球を拾い柴崎から土居選手へクロス。これは間一髪ゴールの上に外れる。

更に34分。小笠原選手のスルーパスに抜け出した遠藤選手が、角度のないところから左足を振り抜く。これも村山選手が何とか足先に当て防いだが、鹿島が技術の高さで圧倒し始めると、前半終了間際の45分。左サイドで岩間選手が土居選手を倒すと鹿島のFK。遠藤がそのFKをゴール前に送ると、クリアーしきれなかったこぼれ球が赤崎選手の足元にこぼれた。そして、その右足がゴールネットを揺らす。

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1-2と逆転され試合は後半へ。サポーターの声援に応えたい山雅は50分。再び目先をそらした岩上のスローインから、田中選手のクロスにオビナ選手がヘディングでゴールを狙う。

62分には、岩上選手のロングスローからこぼれ球が前田選手の前に。押し込めこそしないが、確実に決定機を作り出す。

更に65分に阿部選手、76分には石原選手、84分には池元選手を投入し得点を奪いにかかるが、前節のマリノス同様、鹿島はうまく時間を使いながら質の高いカウンターを仕掛けてくる。67分には土居選手が作った決定機を田中選手がゴールギリギリでクリア。続く87分には小笠原選手が左足のミドルシュートを放つ!…しかし、これも村山選手が何とか水際で凌いだ。

すると90分、FKで攻撃を仕掛けて行った山雅。しかしクリアされるとカイオが自陣から独走し、岩上選手をかわすと右足でシュート。これを決められてしまい1-3で試合終了。

試合後、敵将トニーニョセレーゾ監督は「持っている武器を考えて徹底してくることが見受けられ、興味深く面白いチーム」と山雅を評した。

一方の反町監督は「最後までよく頑張った。鹿島が優勝カップを掲げている時、我々は地域リーグでやっていた。歴史の差があるのは承知の上で挑んだ」

そして「W杯を行った場所で正々堂々と戦い、悔しいが清々しい気持ち。下を向いても何も生まれない」と、言葉をつなぎ前を向いた。前節のマリノス戦の敗戦と違い、全てを出して戦った。

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そんなチームに対し、試合が終わっても山雅サポーターのチャントは終わることなく、歴史ある鹿島スタジアムに鳴り響いた。

選手はそれを背中で十分に感じているだろう。いや、絶対に感じている!

反町監督の言う通り!下を向いても何も生まれない!前を向き、戦い続けるのみだぞ!

飯尾和也

文章:コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表