コラソン試合レポート 第2節 サンフレッチェ広島戦
松本山雅FCのJ1第2戦は、サンフレッチェ広島をアルウィンに迎えてのホーム開幕戦となった。
山雅にとって、去年の最終戦以来となるアルウィンでの試合。僕の選手生活最後となったあの最終戦からもう4か月が経ったのか、と思うと感慨深い。今日も会場は沢山の山雅サポーターの皆さんで埋め尽くされていた。この場内の雰囲気に触れていると、再びピッチに立ちたい、という想いが僕の中にこみあげて来た。引退以来、こんな気持ちになったのは初めてだ。アルウィンというのは、そのくらい魅力がある場所だと思う。僕にとっては無論、サポーターの皆さんにとってもそれは同じだろう。J1のステージでも、今までと変わらない熱い試合を…そんな皆の期待が会場全体から伝わってきた。
今回、対戦するサンフレッチェ広島のキーマンは、シャドウのポジションにいる7番森﨑浩司選手と29番浅野拓磨選手。広島は、この二人にボールを回して入れてこようとするだろう。ここにボールが入ってしまうと、サンフレッチェ広島の攻撃が動き出してしまう。山雅としては、この二人に如何にボールを入れさせないか、がテーマになると思う。そこで重要となるのが前からのプレッシャーだ。ボランチの二人、喜山選手と岩間選手に焦点を当てて試合を見ていきたいと思う。
それと、3-6-1というシステムがマッチアップする山雅と広島の主導権争いにも注目したい。山雅が守備でしっかりと守り切れるのか?田中隼磨選手と岩沼俊介選手の二人が、J1でも屈指のサイドアタッカーである広島の14番ミキッチ選手と18番柏選手をどう抑え、そしてどのように攻撃に出ていくか。この部分も個人的には興味深い。
午後7時。1万7千人を超えるファンの歓声に包まれたアルウィンで、いよいよキックオフの時を迎えた。先ずは立ち上がり、山雅はホームの利を生かし前からプレッシャーをかけようとするが、高い技術を有する広島がパス回しで山雅のプレスをかいくぐる場面が何度かあった。
そして6分、僕が注目ポイントにも挙げていた広島の29番・シャドウストライカーの浅野選手にボールが入る。そのままドリブルで運ばれシュートを打たれるが、ここは飯田選手がブロック。しかし、相手にボールが渡りサイドに流されスピードのある広島の18番・柏選手に切り込まれるとそのままゴールを許してしまう。
この後すぐの7分にも、同じような位置で浅野選手にシュートを打たれているように、立ち上がり10分までは広島に上手くバイタルエリア付近を使われていた。
前半10分、喜山選手から裏へのロングパスがクリアされたが、そのセカンドボールを山雅が拾い抜け出したオビナ選手がクロスを上げる。このクロスはクリアされたが、岩沼選手がいち早く反応し、ドリブルで切り込みPKを得る。
サイドでマッチアップし合うミキッチ選手より、いち早く反応した岩沼選手。山雅のサッカーは、(ラフなボールが多く)セカンドボールをいかに拾うかが勝負の鍵となる。この場面でも、2回のセカンドボールを拾うことで得点に結びつくPKを獲得した。そのPKをオビナ選手が落ち着いて右隅に流し込み、試合は振り出しに戻り1対1。
同点に追いつき落ち着きを取り戻した山雅は、同じように広島にボールを支配される時間が続くものの、ボランチが上手くスライドし対応する。立ち上がり、危険な場面を作られていた相手のシャドウストライカーにボールを入れられる回数を減らすことが出来た。また、そこにボールが入ったとしても2人3人で囲い込み、ボールを奪えていた。しかし前半終了間近に広島の11番佐藤寿人選手を倒し、ゴール前の良い位置でフリーキックを与えてしまう。1回は壁がブロックし防いだかに思われたが、蹴り直しとなった2度目のキックを直接決められてしまう。
山雅も岩上選手が駆け引きをするなど対策をしていたが、それを上回るフリーキックの技術だった。
こうして1点をリードされてしまい、1対2で前半を終了。
後半も立ち上がりから広島にボールを支配される時間が続くが、粘り強い守備で対応をする山雅。なかなか攻めに持っていけない山雅は、60分に前田選手を投入、攻撃の糸口を見つけに掛かる。するとこの交代が功を奏し、前田選手は64分と67分、立て続けにチャンスを作った。35分にはカウンターでオビナ選手を起点に飛び出し、クロス。それを後藤選手がヘディングでマウスを捕えるが、ここは広島のキーパー・林選手がファインセーブ。場内には山雅サポーターの溜息が漏れた。
また、81分からは新加入した20番石原崇兆選手を投入。両ワイドやシャドウストライカーもでき、スピードと技術を持つ石原選手は、前田選手同様個の力で局面を変えられる貴重な存在となっていくだろう。彼らには得点なりアシストをして、目に見える形で結果を出して欲しいと思う。
試合も残り10分となり、山雅はセットプレーやロングスローから広島のゴールを脅かす攻撃が続くが、相手の固い守備を崩せずゴールラインを割ることが出来ずにタイムアップ。
チームが最後に見せたサポーターの後押しを受けた波状攻撃は、去年までいたJ2の舞台だったならあるいは同点ゴールを決めることが出来たかも知れない。しかし、キーパーも含めたディフェンスのクオリティも今まで戦っていたステージとは違うんだ、ということを感じた一戦だった。
そして、2012年~2013年と二連覇を達成したサンフレッチェ広島の老獪な試合運びも目についた。特にリードしてからの後半に見せた時間の使い方やボール回しは、勝ち方を知っているチームだと感じさせた。
開幕戦同様、J1というステージはやはり簡単に勝ち点を取らせてはくれない。でも、サポーターと共に攻め続けた山雅の最後の猛攻は、今後のこのステージでの戦いに希望を感じさせてくれるものだったと思う。
松本山雅がJ1で勝ち点3を上げる日もそう遠くはない、と確信出来た試合内容。応援に駆け付けた熱いサポーターのためにも、その日が早く訪れることを僕も心から願っている。
文章:コラソン 飯尾 和也
元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表