コラソン試合レポート 第5節 柏レイソル戦

この試合の4日前(4月8日)に行われたナビスコカップ第3節となる対甲府戦、大幅にメンバーを入れ替えて臨んだ山雅は見事に逆転勝ちを収めた、山雅にとっては待望のナビスコカップ初勝利。この勢いに乗って挑む柏レイソル戦、ここでホーム初勝利も勝ち取りたいところだ。

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さて、この試合の見どころを…。山雅は前述の通り8日に隣県となる山梨での甲府戦、対戦相手の柏レイソルは同じく8日に中国において山東魯能との試合を経て臨むリーグ戦第5節となる。どちらのチームにとっても中3日での試合となるが、山雅の遠征先である甲府は、皆さんもご存じのようにそれほど遠くはない距離。それに比べて柏レイソルの試合が行われたのは、同じアジアとはいえ遠距離となる中国。先ず、この移動距離の差がある。更に試合前のメンバー表を見ると、前試合からメンバー11人全員を変えてきた山雅に対し、柏レイソルのスタメン変更は僅かに1人。さ~ら~に!山雅にとってはホームスタジアムであるアルウィンでの試合となる本戦。当然のことながら場内は緑色の大観衆で埋め尽くされる。山雅のリーグ戦ホーム初勝利を待ちわびる期待感に、スタジアム全体が包まれていた。

以上に挙げた点を見ても、条件的に山雅が有利なのは言うまでもない。しかし、優勝経験もあり、今年もアジアチャンピオンズリーグという大きな大会に出場中の、言わば日本を代表するフットボールチームといっても過言ではない柏レイソルが相手だ。これだけの条件が揃っていても、勝つことは容易ではないだろう。これらグラウンドに立つまでの様々な要因が、目に見えない勝敗を分けるポイントとなるかも知れない。だが、柏の選手にとってはスタジアムの一角を占めるありがたい自分たちのサポーターの存在が大きな力を与えてくれる筈だ。いざ実際に試合に臨むにあたり、遠距離移動を言い訳にすることなく力を出し切ってくることだろう。

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両チームサポーターの期待をそれぞれの選手が背負い、いよいよ試合が始まった。

立ち上がりはホーム初勝利を目指す山雅の勢いなのか、レイソルが週中の試合を中国で戦ってきた疲れが残っていたからなのか…明らかに体が動いていたのは山雅だろう。

いきなりの開始2分、池元がファウルを受けて得たフリーキック。岩上の蹴ったボールを後藤がヘデイングシュートを放つ。このボールをレイソルのGK菅野に惜しくもはじかれる、という惜しい場面を作ると、これを皮切りに山雅が猛攻を仕掛けた。

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6分、9分と立て続けにチャンスを作ると、13分には岩上からのクロスに喜山が頭で合わせポスト直撃という決定機を作る。

しかし、これでレイソルは目を覚ましたのか。18分、左サイドの輪湖のクロスからFW工藤のスーパーボレーが山雅ゴールを狙う。だが、このシュートはGK村山もビックセーブで凌いだ。

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この後は、レイソルがテンポのいいパス回しでリズムを取り戻す。そして20分、レイソルの右サイドバック、キム・チャンスからの正確なクロスを走りこんできた大谷に決められ先制されてしまう。

去年の話になるが、クロスからの失点を減らせたことが山雅がJ1に昇格するための原動力となったことは間違いないだろう。今回のこの失点のように、クロスからきれいに得点されたシーンは去年はほぼなかったように思う。

しかし、この場面。後ろに下げられたボールをダイレクトで上げられたクロスは、コース、ボールスピードとも非常に精度の高いものだった。

またまた、J1選手のキックの精度クオリティを見せつけられた。このクロスの質があっても守って行ける守備、これが今後の試合における山雅の生命線かもしれない。

点は取られたものの、25分には岩沼があわやPK!?という場面をつくるなど山雅も一歩も引くことなく前半を終了。

後半、山雅はホームでの同点ゴールを待ちわびるサポーターと共に一気呵成に点を取りに行きたいところだ。

しかし、そこに大きな問題、そして課題が立ちふさがる。

試合後何人かの選手に話を聞いたが、ほとんどの選手がこう語っていた。

「前の選手と、後ろの選手の意思疎通ができていなかった」と。

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これはどういう事かと言うと…当然、負けているのだから選手は皆、点を取りに行きたい。しかしサッカーとは難しいもので、「点が取りたい」「ボールが取りたい」という気持ちだけで闇雲にボールを取りに行っても、逆に取れず体力を消耗してしまう。

前の選手は全部ボールを取りに行こうとプレスをかける。でも、後ろのDFの選手はこれ以上失点をするとより苦しい試合展開となるため少しでもリスクがあると思った時には前のプレスについていけないこともある。

前は「取りに行く」が、後ろは「行けない」。

こうなるとどうなるか?

一番危険なDFラインの前のスペースが空いてしまうことになる。

これが僕が先ほど挙げた大きな問題であり課題だ。

この現象は、僕が現役の時にもリードされた場面では必ずと言ってもいいほど起こっていた。更に反町監督も「レイソルのカウンターはJ1で1番かもしれない」と語っていた通り、工藤、レアンドロ、クリスティアーノを中心とした柏のカウンターも山雅にとっては脅威となり続けていた。そのために、前がかりになりたい山雅をそうさせてはくれなかった部分もあったと思う。

そんな展開の中で62分と66分と追加点を許してしまう。これも言うまでもないことだが、レイソルの技術は素晴らしかった。

このままでは負けられない山雅も前田、阿部、ドリバと攻撃的な選手を投入し得点を取りにかかる。

そして迎えたロスタイム。岩上のパスを上がっていた後藤が胸で落とし、飯田がシュート。これはポストに弾かれるが、そこに飛び込んだのが阿部だ。魂のダイビングヘッドで1点を返した。しかし、3対1のままタイムアップの笛が鳴る。

最後に得点を決めた阿部。余談となるが僕と同い年である。今まで一緒にプレーしたことはないが、この試合の得点シーンのように怖がらず飛び込んで行く彼のプレースタイルは個人的に大好きだし応援したい。

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そして、この試合を観戦するためアルウインに詰めかけたサポーターは18514人。最多入場者数を更新した。選手もそうだが、サポーターの皆さんも最後まで諦めずに戦う姿は素晴らしかったと思う。そんな一体感がある戦いを継続していくことができればホーム初勝利もそう遠くはない…そう感じさせてくれる試合だった。

飯尾和也

文章:コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表