コラソン試合レポート 第8節 ガンバ大阪戦

3日で迎える第8節。相手は、言わずと知れたチャンピオンチーム・ガンバ大阪だ。

しかし、山雅は一昨年のJ2時代にガンバとは2回対戦している。その時はアウェイで01、ホームでは22の引き分けだった。

当時、アウェイの万博記念競技場で行われた試合は僕もピッチに立っていた。平日の試合だったにも関わらず相手がガンバだったこともあり、松本からも沢山のサポーターが来場、チームを後押ししてくれたのを憶えている。

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そんな試合だったのだが、開始早々に僕のオウンゴールで失点。その1点を返せずに敗戦した。この日も先発したガンバの左サイドバック藤春選手がドリブルで仕掛けながら上げたクロスボールに対し、ゴールに戻りながら対応した僕がオウンゴールをしてしまったのだ。僕としては精一杯の対応。でも、藤春選手のクロスを上げてくるタイミングや精度は、僕の長いサッカー人生の中でも初めてではないか、と思えるほどの感覚だった。

ちょっと言い方が大げさになってしまったかも知れないが、レベルの高い選手というのは予測を超えるプレーをしてくる。このプレーの他にも、あらゆるところでプレーの質に驚かされた試合だったのを憶えている。

長々と昔の話をしてしまったが、試合のポイントはまさにここである。当時のメンバーも多く残り、チームの成熟度も増し、前線に宇佐美とパトリックという強力な得点源を加え、より想像以上のプレーをしてくる可能性がある攻撃に対して、山雅がどれだけ粘り強い守備を見せられるかが勝利へのポイントだろう。

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さらに今節の山雅は喜山が出場停止。その代わりにJ1リーグ戦初出場の鐵戸を入れ、岩間をワンボランチ気味に置き、中盤をダイヤモンド型にし、トップ下にはリーグ戦初先発の石原を入れ、システムを少し変えて試合に臨んだ。

山雅にとってはアウェイの雰囲気に包まれる万博記念競技場。しかし松本から訪れた1500人を超えるサポーターが後押しする中、王者との戦いが始まった。

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立ち上がりは、ガンバの攻撃に対して下がりすぎないようにしようという意識が強かった山雅。良い立ち上がりだったが徐々にガンバの「質」の高さが表れ始める。

7分には遠藤からのロングボールをパトリックが右足でトラップ。そのまま右足を振りぬき決定的な場面をつくられるが、GK村山が間一髪右足ではじき出す。

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すると15分、ハーフウェイライン付近で石原が出した横パスが宇佐美の足元に渡ってしまう。試合後に反町監督が語った「ガンバはカウンターが一番の脅威」そのカウンターが発動。前を向いた宇佐美がドリブルで仕掛け、右に並走してきたパトリックにスルーパス。GK村山が出てきたのを確認すると、宇佐美に丁寧なクロスボール。待ち構えていた宇佐美が右足で落ち着いてゴールに流し込む。ガンバ大阪が先制。山雅のゲームプランとしては、0-0でゲームを進めていきたかっただけに、残念な失点だった。

その後も日本代表経験もあるMF遠藤を起点に、26分、29分とあわやの場面をガンバに作られる山雅。さらに36分には遠藤自らがクロスボールに走り込み、シュート。先制点を奪ったガンバは老獪なパスワークで主導権を握るが、山雅もそれ以上の失点は許さず前半終了。

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後半に入ると、ガンバ大阪は中二日ということもあり、運動量で上回る山雅が積極的に圧力をかけていく。

すると、前半抑え込まれていたオビナがガンバに脅威を与え始める。51分、田中からのクロスに対して飛び込んだが、これは惜しくも合わなかった。しかし、57分には岩上からの縦パスを石原が落としミドルシュートを放つ。

さらに得点を奪いたい山雅は、61分、アタッカー前田と阿部を同時投入。65分にはその阿部が前線で溜をつくり、オビナにボールを預けると、裏に走りこんだ岩上に浮き球のスルーパス。これをヘディングシュートするが、ガンバのGK東口のビッグセーブに阻まれる。75分には、右サイドからの後藤のクロスを阿部がつなぎ、前田が左足でシュート。これもカバーに入っていたガンバのDFにクリアされる。

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さらに80分には池元を投入し、前田を左ワイドに出し、超攻撃的布陣で得点を奪いにかかるが、得点を奪えず0-1のまま試合は終了。

スコアこそ2年前と同じ0-1で破れはしたものの、「2年前とは全然違う。2年前は好き勝手にボールを回され前にも行けなかった。しかし、今日の試合はボールに対しても行けていた」という反町監督のこの言葉が表すように、2年前に僕が感じたガンバとの実力差よりも、今日ピッチに立った選手達の多くが手ごたえを感じていたに違いない。

この試合、僕も早い時間に得点された時には正直、ここまでガンバと戦えるとは思わなかった。しかし、これが山雅が積み上げてきた「力」なのだと実感出来た試合だった。

最後に1つ。今日先発出場を果たした鐵戸選手。ついにJ1デビューを飾った。

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彼はやっとJ1のピッチに足を踏み入れた。やっと。やっと、である。

僕がサガン鳥栖に所属していた当時、今からは10年近くも前のことである。サガン鳥栖の練習生として練習に参加し、1年以上練習生としてテストを受けているような状態から、契約を決めプロになった。

そのときは、計り知れない苦しさだったと思う。今では、当時の苦しかったエピソードを僕に笑って話すのだが、僕は笑えない(笑)。

そんな彼は「俺は絶対にJ1のピッチに立ちたい」と常に語っていた。そして、山雅を地域リーグから押し上げた彼が、J1のピッチに足を踏み入れた時はさすがにこみあげるものがあったね。

しかし、まだまだスタートでもあるのだから、彼には50歳までは頑張って欲しい(笑)。頑張れてっちゃん!

連戦真っ最中。次戦はホーム・アルウインに帰ってくる山雅が、一丸となってきっと勝ち点3を取るでしょう!

飯尾和也

文章:コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表