【試合後コメント】名波 浩監督 第30節 今治戦 ※無料配信

――まずは試合の総括をお願いします。

総括の前にまず、2つ話させてください。1つはサッカー人、サッカー仲間として、同じカテゴリでプレーしているプレーヤーとして、A代表の後輩として、日本サッカーに多大な貢献をしてくれた工藤(壮人)選手が亡くなったこと。非常に残念に思いますし、ご冥福をお祈りしたいと思います。

それからもう1つ、これは2点目が入ったシーンなんですけれど、興奮しすぎて相手チームの選手の前で喜んでしまって、橋川(和晃)監督以下、FC今治の方にご迷惑をかけてしまったということを謝罪したいと思います。本当に申し訳ございませんでした。

ゲームはお互い上位で、昇格に懸けるサバイバルということで、非常に気持ちが入った90分だったと思います。立ち上がり千葉(寛汰)それから中川(風希)、インディオという前線の3枚が身長のわりに体が強いぞという中で、やっぱりインディオに弾かれて、インサイドを越された中での1失点目。あれは非常にダメージが大きかったんじゃないかなと思いますが、ウォーターブレイク前くらいから、徐々に守備がハマりだして、ラフなタイトなボール以外は自分たちの守備で主導権を握れたんじゃないかと思います。

後半、立ち上がりの田中パウロのミドルシュートが決まって、より自分たちが前がかりになったのと、後はメンタル的に強い自信を持てたことが、最終的に3ポイントにつながったと思いますし、特に縦ズレ、スライドの中ではウイングバックが積極的にスライドしてサイドバックを捕まえに行けたと思います。背後に残しているであろう2列目、立ち上がりで行くとインディオとか山田(貴文)のポジション。あそこの3バックがしっかりとズレてきて、大野以下ブラインドサイドでしっかりカバーリングが入っていたので、そこからの突破の形、そこからのワンツーコンビネーションの中でテンポよく崩された形がほとんどなかったです。

今治のやりたいサッカーはやっぱり後ろからのビルドアップの中で、どこかで縦パスのスイッチを入れてポイントを作って広いエリアに…というサッカーを徹底したと思うので、それを未然に防ぐことができた90分だったと思います。とにかく我々に必要なのはこの3ポイントだけ。番記者の皆さんはよくご存知だと思いますけど、前回の29節から64チームのトーナメントであると。前節に勝って今回は2回戦。非常に難敵ぞろいですけど2試合勝つことは喜ばしいことです。

喜ばしいかどうかで言ったら、逆転勝ちが喜ばしいかどうかは分からないですけれど、チームの雰囲気を盛り上げるという意味では交代した選手が点を取るというのも含めて、非常にいい空気感ではないかと思います。最後に課題となるのは、ここ5試合くらい先制できていないことです。先制したらやっぱり自信をさらに高められると思いますし、自分たちの前体重、前選択というのがより発揮できると思うので、どうにか前半のうちに先制をして主導権を握らなければいけない残りの試合だと思います。

――ウォーターブレイク前から守備がハマり始めたという話がありました。それにしても前半は点こそ取れませんでしたけれど、ハーフコートオフェンスができるくらいリズムを握りました。それができたのは守備面だけだったのか、サイドで優位性を作ってトライアングルを作ったというオフェンス面での良さも出たんじゃないかという印象があるんですが、その辺はいかがでしょうか?

両脇はもちろんそうですけれど、小松、佐藤あたりでボールの収まりがいい時は、特に両ワイドは出やすくて時間をかけて2対1を作りに行ったり、もしくは自分で仕掛けたりという形ができたのではないかと。それも「いい守備からいい攻撃に」というチームコンセプト通りの形ができたと思います。あとは2点目に象徴されるように、ああいう(ペナルティ)ボックス脇の崩し。もう3〜4週前から何回かやっている形で、(安東)輝と田中パウロというあまり組んだことないセッションだったかもしれないですけれど、トレーニングの中で意識付けされることによって生まれたゴールだと思います。

――後半頭から(田中)パウロ選手を入れて、アンカーシステムに変えました。パウロ選手を入れるタイミングやルカオ選手が一緒じゃなかったということ、ルカオ選手を入れて安東選手を入れて、その3人で結果的に2点につながりました。交代選手を選んだ意図、タイミング、システムを動かしたタイミングを、おっしゃられる範囲でお願いします。

攻撃ですごくどん詰まり感があったわけでもないし、決して2トップが躍動していないわけでもなかったと思うんですけれど、ボールサイドでもう少し2列目が絡むとウイングバックが出やすいよとか、ウイングバックがおとりの動きでスプリントできるよという形が何度かありました。その中で菊井がボールから離れていたり、(横山)歩夢が少し左サイドに張り気味だったり。そこを修正したかったので田中パウロを入れて、「高い位置に入りすぎるな、自分は2列目のシャドーだ」というのを意識しながら、ワイドに出たりインサイドに入ったりの連続性をもってやってほしいと。あとは(足を)振れるチャンスを逃さないというのもありますけど、いつも言っているし練習からいいものを出してくれていました。2試合連続途中からでも非常に気持ちいいゴールだと思うんですけれど、その後の守備の献身性も含めて今は確実にチームの歯車になっています。

――先制点が大事だという中で早々に失点してしまってダメージがかなりあっても不思議ではない中でも、前節と同様にそこから非常に落ち着いてゲーム運びをして、逆転につなげました。前節の成功体験が少なからず生きているとお考えですか?

かもしれないですね。あとは相手がYS(横浜)戦で先制されて、そこから突っ込んだ中で2点目を取られたときもあったので、多分自分たちが先制して少しいつものプレーリズムより遅くなったんじゃないかなと。もう少しテンポよくボールが動くのが、あるいは人が動くのが今治のいい時のサッカーですし、連勝時はゴールにどんどん向かっていくサッカーをやっていたと思います。それが、前半の早い時間帯に先制したことによってちょっと鳴りを潜めた感がありました。そこで我々の攻撃的な守備がちょうどハマったのも結果論としてあるのではないかと思います。

――前節もそうでしたが、ずっと課題になっていた奪った後のボールについて、きょうもすごくしっかり見れていてコントロールもできていて、それがどんどん自分たちでボールを持って前に進めるファクターになったんじゃないかと思います。やはりトレーニングの積み重ねが今になって成果になってきているのでしょうか?

これは気の持ちようだと思います。通常リラックスゲームでやっている4対2とか5対2のような気持ちで浮き球をコントロールすればいいです。きょうも3回くらい、フリーなのに敵にそのままドーンとやる必要はないのに…という場面がありました。常田がハーフラインの少し手前で胸コントロールして(外山)凌に出したけど(タッチラインに)出てしまったシーンがありました。あれがいつもリラックスゲームでやっていること。あれを繰り返しておけば受け手もしっかり準備すると思うし、自分にラフなボールが来たときもコントロールするかどうかの決断ももっと早くできると思うんです。「もう考えるのがめんどくさいからドカーン」みたいなのがちょっと多かったです。そういうサッカーをしていたら、自分たちの時間を自分たちでそぎ落としてしまうので、それはもったいないと思います。

――これで(2位)藤枝との勝ち点差が2になって、メンタル的にも元気が出てくるところもあると思いますがいかがでしょうか?

鹿児島も引き分けたので、やっとそういうところでまた上ってきたと思います。先ほど言いましたけど、次の3回戦は信州ダービー。非常に曲者のチームだと思いますし、自分たちが2連勝して、しかも逆転勝ちの2連勝の中で気分のよさが出始めたのを取り払って、信州ダービーに懸ける強い思いをもう1回選手たちに伝えながら、きょうのような激しいゲーム、実のあるゲームをしていきたいと思います。