【一問一答】霜田正浩 新監督就任記者会見 ※無料配信
神田 文之社長 きょうは2023シーズン新監督の就任記者会見に、大勢のメディアの皆さまにお集まりいただきました。クラブの代表として改めて御礼を申し上げます。2022シーズンを終えてしばらく経ちましたが、まだまだその余韻がある中で、クラブとしても前に進まなければいけない。シーズンオフという意味では次への戦いが始まっています。その中でまずは新監督が霜田監督に決まったということをファン・サポーターの皆さんに伝えるためにも、多くのメディアの皆さまの力をお借りして、発信させていただければありがたいと思います。クラブが来シーズンに向けてどんなことを期待して監督の就任を要請したのか。下條も含めてお話させていただければと思います。再三メディアの皆様を通してお伝えさせていただいていますが、監督だけでチームを作るわけではなく、クラブ全体でできることがないかをしっかり考えて、また下條スポーツダイレクターの存在もチームの強化にさらに生かしながら現場を盛り立てていって、その上でフットボールのところで皆さまに「山雅が変わったな」「また変化、進化したな」と思っていただけるようなフットボールを展開できればと思います。改めて本日はよろしくお願いいたします。
下條 佳明スポーツダイレクター 私のほうからは霜田監督に決めるに至るまでのコンセプト、経緯を説明させていただきます。まずは今回、監督の選考にあたってクラブとして目指すサッカーという部分を私だけではなく、神田社長も含めて議論を重ねてきました。その中でより強いチームづくり、目的とする部分はやはりJ2昇格というところ。それから私としてももっと攻撃的な主体性のあるサッカーをやりたいということで話してきた結果、霜田監督とはそういった部分のところでほとんどイメージが合致しました。それが一番の大きな理由となっています。
霜田 正浩監督 まずはこういったチームの状況の中で、神田社長、下條スポーツダイレクターのほうから声をかけていただいたことに感謝しています。そして声をかけていただいてからいろいろな話を下條ダイレクター、神田社長としています。その中で本当にこのクラブを強くしたい、本当にこのクラブのために働きたいという気持ちを今は強く持っています。下條ダイレクターのほうからありましたように、クラブが目指すべきサッカーと私たちが現場でやらなければいけないサッカーが、現場もフロントも合致している状況でスタートできるというふうに思っています。やはりこれだけ多くのサポーターがホーム・アウェイに関わらず足を運んでいただいているクラブですから、そういう皆さまの情熱に見合うようなフットボールをしっかりやりたいと思います。本当に大きな覚悟をもって松本に来ました。皆さまと一緒に新しい物語を作っていければと思いますので、今後ともご支援、ご声援をよろしくお願いいたします。
――プロサッカークラブをマネジメントする上で核としているものがあれば教えてください。
霜田 いまW杯を見ていても、いろいろなフットボール、いろいろなサッカーがあると思います。どのサッカーが良いというよりも、監督、スタッフ、選手、クラブのみんなが「このサッカーで勝つんだ」という明確な意思統一をできるチームは結果が出ていたと思います。もちろん私には理想のサッカーがありますし、山口でも大宮でも理想を追求してやってきました。成功体験もありますし、失敗もしました。その中でサッカーは簡単に勝てるスポーツではないというのは実感としてありますが、やはり見ている方々がやっている選手が楽しそうだと感じ、選手が躍動していくこと。勝利の世界ですから勝ち負けは当然ありますが、サポーターの方々がこういうチーム、こういう選手だったら本当に応援をしたいと思えて、我々のチームから勇気や元気をもらえること。サッカーはエンターテインメントだと思っているので、お金や時間をかけて見にきていただいた方々に何を伝えられるかだと思っています。サッカーの中身はこれからトレーニングや試合でお伝えできると思いますが、まず我々はプロのサッカー選手あるいはスタッフとして、皆さまに対して良いものを提供しなければいけないという義務があると思っています。気持ちを込めた試合は当たり前ですが、チームとして明確な意思統一のもと、「こうやって勝つんだ」ということを伝えられるような試合をしたい。それを皆さんに応援していただきたいと思っています。
――今季はJ2復帰という目標がありましたが、来季もそれが大きな目標になると思います。クラブの方針として攻撃的、主体的にサッカーをやりたいというのがあって、今までの山雅からスタイルを大きく転換することだと思っています。時間はかかると思いますが、チームの土台を作っていくことと結果を出していくこと。その両立していくことについてはどのようにお考えでしょうか?
霜田 今年J2に上がった2チームを見ても、J1に上がった2チームを見ても、どのチームもたくさん点を取り、失点を減らし、得失点差が+20、30くらいの結果を出しているチームが昇格しています。僕らの目的は攻撃的なサッカーをやることではなくて、勝つことなので、勝つための手段としてどうしても守らなければいけないとなれば、今まで山雅が築いてきた堅守ということを試合の中でやりたいと思います。大きなスタイルを変えるというのは、スタイルを変えるというのが目的ではなくて、この山雅を本当に強くすることが目的です。じゃあどうやったら今まで失点を少なくしてきたチームが得失点差を+20、30と大きくできるような点を取れるか。そういうところが一番の鍵だと思っています。私はスタイルよりも結果を重視したい。まずはチームが勝つことを優先したい。ただ普通に「頑張れ」とやっているだけでは勝てない世界なので、じゃあどうやって勝つかというのをみんなで意思統一したいと思っています。
――先ほど魅力のあるサッカーや応援されるようなサッカーを掲げていましたが、J2昇格というのが最大の目標であることは変わらないでしょうか?
霜田 はい。もっと言うとJ2に上がるだけではなくて、上がって勝ちたいです。やはりエレベータークラブがたくさん存在します。上がることだけを目標にしてしまうと1年間だけで燃え尽きてしまったり、その後のビジョンがなかったり。もちろん選手が活躍するとすぐ外に獲られてしまうという問題は今まで山口でも大宮でも経験してきています。選手が上達する、上手くなる、成長する。その先にチームの勝利があって、それはもうJ2に上がれば終わりなのかというと、そういうわけではないです。やはりJ1にもともといたクラブとしては、J2に上がってJ2で勝てること。上がある以上は常に上を目指し続けることを最終的な目標にしたいと思います。
――まだ去就がはっきりしていない現有戦力の選手もいますが、今いる選手たちへの評価と、来季に向けてこういった選手がほしいというイメージはいかがですか?
霜田 編成に関しては下條スポーツダイレクターといろいろな話をしています。もちろん予算的な問題もありますし、選手の気持ちとすれば少しでも上のカテゴリーでやりたいという選手も多いです。今与えられた戦力をなんとかするのが僕らの仕事だと思っています。もちろん獲られた選手のところを補強するという努力はクラブとしてやらなければいけないですが、今いる選手たちが本当に力を発揮できて、イキイキとしたサッカーができるようになれば、勝ち点を取れると思っています。どうしてもこの選手がいないと戦えないというふうには思っていないです。
――クラブから就任が発表されたときに「新しい松本山雅のストーリーを皆さんと一緒に作っていきたい」というコメントを出されていました。そのストーリーというのはどのように描いていますか?
霜田 この間サポーターミーティングでもサポーターの方に少しお話ししましたが、今まで山雅は地域リーグから勝ち上がってきて、J2、J1と駆け上がってくるストーリーを見ながら、サポーターの皆さん、クラブの皆さん、スポンサーの皆さん、松本の人たち皆がその物語を通じて繋がっていたと思います。いまはJ2になってJ3になって、これからもう1回J1を目がけて駆け上がっていく、這い上がっていく。そういう新しい物語を皆さんと作りたいということがありました。もちろん目の前の試合で勝った負けたは大事ですが、もう一回松本山雅というクラブがここから這い上がっていくというのを、僕一人の力ではできないですが、クラブのスタッフ、ここにお集まりの皆さまと松本山雅に関わる全ての皆さまと、そういう物語が作れたらいいなという気持ちを込めてコメントにしました。
――先ほど「覚悟を持ってここにきた」と仰っていましたが、その覚悟をファン・サポーターの皆さまにもお伝えいただけますでしょうか。
霜田 Jリーグができて30年。僕もいろいろなところで、いろいろなチームで、いろいろな監督、いろいろな選手、いろいろなスタッフと仕事をしてきました。その中で得た経験、知見、自分の中の体験も含めて、そういうものをいま全てここに出すべきだろうと思っています。監督としてしっかりと結果、成績を出さなければいけないと自分自身は強く思っていますので、選手、スタッフの力を借りて、松本山雅というクラブが勝つことが一番のミッションだと思っています。勝つために何ができるかというところに、私の今までの全てを注ぎたい。そういう意味での覚悟です。
――下條スポーツダイレクターからは「攻撃的な」という言葉もありました。監督の口からも、どのようなチームを目指しているかをお聞かせいただけますでしょうか。
霜田 やはりサッカーの一番の醍醐味はゴール前だと思います。もちろん味方のゴール前でシュートブロックをして、体を張って、みんなが絶対に点を取られないという気持ち、気迫を見せることも必要だと思いますが、相手のゴール前でシュートチャンスをたくさん作りたいです。そこのサッカーの本当の醍醐味をサポーターの皆さまに届けたいとすると、やはり相手のゴール前でどれだけたくさんボールをゴールに向けてシュートが打てるか、というところを一番の目的にしたいですし、ということは点をたくさん取りたいと思います。点を取るための手段はいろいろとありますが、ゴールシーンをたくさん増やしてサポーターの皆さんが喜ぶシーンをたくさん作りたいと思います。
――監督としてのストロングポイントはご自身でどのように分析していますか?
霜田 監督を始める前の年数が長くあって、強化の仕事をしたり、コーチをしたり、いろいろな監督のもとで仕事をしてきて、「自分が監督になったらこういうふうにしたい」というのを溜めた後に監督になりました。監督を始めてからは選手事情などいろいろとありますが、こういうアプローチをして、こういう練習をすれば選手は伸びるんだという実感はあります。松本山雅の選手を育てる、成長させるということに関しては、ある程度自分の中でやってきた自負もあるので、成長させたいと思っています。その成長させた選手をうまく起用しながら、チームとしての結果を出していくということが私にとって一番必要だと思います。先ほどもお話ししましたように、自分の理想のサッカーをやることではなく、松本山雅がどうやって勝つかを一番の優先順位に挙げながら、なおかつ山雅がこれから目指していくフットボールと合わせていく。そういう作業が必要だと思っています。
――選手たちにはどのようなマインドや姿勢を求めていきたいですか?
霜田 プロのサッカー選手ですから、なんのためにサッカーをやっているのかを常に自問自答してほしいと思っています。ただ好きだからサッカーをやっていて、その好きなサッカーが仕事にできた喜びや感謝の気持ちはもちろん持っていると思いますが、やはりこれだけ応援をしてくれている人たちがいますので、そこにしっかりと答える責任、自覚、覚悟…。自分が成長することもそうですが、チームの勝利にどれだけ貢献できるか。自分は何で貢献できるのか。自分のストロングは何なのか。そういうことを選手たちには求めていきたいと思います。
――下條スポーツダイレクターから「サッカーのイメージが合致した」というお話がありましたが、ご自身は最初にオファーを受けたとき、どのように受け止めましたか?
霜田 今までやっていたサッカーがどういうサッカーなのかは、自分でもしっかりと見ます。その中で何ができて、何が足りないかというのはいろいろ方が分析していると思いますが、自分がやった時に何ができるのか、何をやらなければいけないのかというイメージはお話をいただいていろいろと考えました。過去は変えられないですし、未来しか変えられないので、どうやって山雅の未来を変えていくかという話を下條さんとたくさんしました。本当にやりがいを感じましたし、責任の重さも感じましたし、やはりこのクラブを強くしたいという気持ちが伝わってきたので、覚悟を持ってやらなければいけないと思いました。あまり時間はかけずに「やらせてください」という話はしました。
――「ゴールシーンを増やしていきたい」という話がありましたが、現時点で具体的な目標数値はありますか?
霜田 数字的な目標はまだ選手にも言っていませんので、これからいろいろと考えて勝ち点計算、戦略を立てたいと思います。ただアルウィンでああいう雰囲気の中でサッカーがやれる幸せがありますから、それに見合うようなアグレッシブなサッカーをやらなければいけないと思います。もちろん僕らの目標は「勝って上に上がる」。そういうことを常に念頭におきながら、良い試合をやって負けるんだったら試合内容がイマイチでも勝ったほうがいいです。そういう意味では勝つためには何でもしたいですが、しっかりとした意思統一がないと勝てないと思います。我々が求めているサッカー、プレーモデルを決めて、「これで僕らは勝ちに行くんだよ」というのをしっかりと作りたいと思います。それで結果が出てスタイルが固まってくれば、それが後々クラブのスタイルになってくれればいいと思います。先ほどもお話ししたようにスタイルを作ることよりもスタイルを作りながら勝つことに集中するのが目的なので、一試合一試合。「38試合全部勝つつもりです」と言うと嘘くさくなってしまうので、目の前の試合を全部勝ちにいきたいと思っています。
――就任にあたっては、クラブのベーシックになるもの、松本山雅として大切にしなければいけないものをしっかり共有されてこの場にいらっしゃると思います。そこに対してはどのように受け止めながら、ピッチの中でどう表現していきたいと考えていますか?
霜田 先ほども物語の話はしましたが、J1まで駆け上がっていたときは、やはりいろいろなことができていたからJ1まで駆け上がれたと思います。もちろんサッカーの内容、戦術、システムといろいろな要因はありますが、やはり駆け上がったときにできていたマインドみたいなものは、これからも絶対に大事にしなければいけないと思っています。そういうことをしっかりとやるチームが日本中増えてきているので、そこで差別化を図るのは非常に難しいですが、松本山雅が今まで培ってきたマインドはこれから先どんなサッカーをやろうが、どんなシステムをやろうが、絶対になくしてはいけないと思っています。神田社長、下條SDとお話をしたときも、そこの部分はもう一回特化して選手たちに求めていかなければいけないですし、そういうところがあったからこそ前の物語ができたのだと思いました。いろいろなサッカーの戦術論はありますが、それを語る前にまずそういうベーシックなマインドをクラブに徹底したいと思っています。
――山口と大宮を指揮されていたときは、どちらかといえば理想を追求しながら、それを表現することで勝ちがついてくるというようなお考えだと感じました。いま仰られた中ではまず勝利というのがあって、そこから逆算していく考えだと思いますが、ご自身の中でマインドの変化があったのでしょうか?
霜田 今まで率いたチームも必ず勝利から逆算はしていました。監督の自己満足になってはいけないので、「良いサッカーができていれば、理想のサッカーができていれば、結果がついてこなくても仕方ないよね」というマインドは一切なかったです。ただ簡単には勝てない世界なので、勝つために自分で確固たるものは持っていないといけないと思っているので、そこはぶらしたくないです。松本山雅だからというわけではないですが、クラブとしては結果を求められているシーズン。どのチームもそうですが、やはり勝つための方法論として自分のやり方にこだわっていく部分と、柔軟にいろいろなことを変えなければいけない部分というのは、過去の成功体験、失敗体験から自分自身も学んでいるところです。やはりいろいろなところから学ばなければいけないと思っていますし、学んだことを生かさなければいけないと思っているので、心境の変化はないですが、学んでバージョンアップしなければいけないという気持ちはあります。
――J3というリーグの難しさと、勝ち上がっていくために必要なことは何だと考えていますか?
霜田 日本全体のレベルが上がっているので、J2とJ3の差もなくなってきていると思います。J3から上がってきた熊本が、J2であんなに勝てるわけですし、各ディビジョンを勝ち抜くのも本当に難しくなってきています。過去にJ1にいたからといって、なかなか勝ち上がれないチームにもJ2にはたくさんいます。勝ち上がる条件としては、良い選手をたくさん抱えるだけではなくて、どれだけクラブが明確に意思統一できるかどうか。またリーグを勝ち抜くには運も勢いも大事ですが、それを手繰り寄せるには日々のハードワークしかないと思います。いろいろなチームがハードワークするようになってきましたが、いろいろなところで差別化をしなければいけない。他のところよりも上回らなければいけない。山雅は何で他のクラブを上回るのかというところを明確に出さなければいけないと思います。
――昨季率いていた名波前監督も含め、各監督がサッカーの理想は持っていると思いますが、理想と現実のすり合わせというのはどのように進めていくつもりでしょうか?
下條 監督と擦り合わせるという部分ではまだシーズン前ですが、いろいろな話をした中で現在があります。皆さん勝つために仕事は進めているわけですが、やはり勝ちが求められるので、勝つ確率を上げることが重要です。(それが)サッカーのトレンド=勝つ確率の高いものでなければいけないと思っています。今回のW杯を見ても、前回のW杯と中身が違っている部分がたくさんあります。世界ランキングが下のチームが上にかかっていくときに、受け身でやっているチームは一切ありませんでした。結果として勝った負けたで今回いろいろなことが起きましたが、今はそういう多様性の時代でもありますから、どういうサッカーをやったら勝つ確率が高まるかというところを考えながら進めているのが現在のサッカーだと思います。その中で手法、選択方法はいろいろとありますが、自分の理想と葛藤しながら最適解を選ぶこと。その最適解が結果として勝つ確率の高いサッカーであることを、それぞれの監督は求めているのだと思います。新しいシーズンではそういう部分を求めながら、時にはフレキシブルに相手チームも分析しながら合わせていくことも、勝つ確率を高めるための一つの手段だと思っています。そういったところをアップデートできれば良いと思っています。
――これまでの山雅に少なかったビルドアップにも着手もされると思います。具体的に「こういうことに着手する」というメッセージがあれば、ファン・サポーターの方々もポジティブな雰囲気で後押しできると思いますが、いかがでしょうか?
下條 ここは後ほど霜田監督にもお話を伺っていただければ良いと思いますが、攻撃的にやるという部分ではボールを握るということは非常に大事になってくると思います。やはり自分たちが主体的にボールを動かすということで、特に敵陣内でいろいろなアイデアのもとで我々がボールを主体的に動かすことでチャンスが広がります。ただボールを保持しているだけではなく、先ほど監督からもありましたように、いかにシュートを打つか、いかに相手を崩すかがターゲットになってくると思います。そこのところが昨シーズンはシンプルな形で、前に急いだサッカーになっていた部分があって、どちらかというとボールを失いやすいケースも多々あったと思います。ただ安全、安全でやるサッカーは私も監督も求めていないと思いますし、サッカーの醍醐味はボックス近辺だと思います。そのあたりで自分たちが中心となって相手をいろいろな意味で凌駕できれば、それが、=主体的なサッカー、攻撃的なサッカーになるのではないかと理解しています。
霜田 私はいろいろなクラブを見てきました。堅守速攻だったチームがポゼッションサッカーに切り替えることもありますが、まずポゼッションサッカーという言葉自体を私は使っていないです。ボールを保持するだけでは仕方がないですし、相手のゴールにボールを入れないと点は入らないスポーツです。パスを100本繋いだら1点が入るのであれば、ずっと後ろでボールを回しますが、そうではないです。ただロングボールばかり蹴ると五分五分のボールになりますし、下條SDもお話しされましたが、五分五分のボールをずっと蹴り続けていくと、半分はゴールになるかもしれませんが、半分は必ず相手ボールになってしまう。そういう意味ではやはり60%、70%ちゃんと味方に通るようなパスを繋ぎたいと思っています。GKからビルドアップするときもありますし、最前線の選手が裏を取ればそこに一本のパスでGKと1対1を作れれば、それもそれでゴールに向かっていることになりますので、そういう選択肢をたくさん持つサッカーをやりたいと思っています。でもやはり自分たちがボールを持たないと選択肢は増えないので、やはりボールを持っている時間は長くしたいと思っています。
――攻守一体という意味では、どう守備をするかも重要になってくるのではないでしょうか?
霜田 守備に関してはボールを奪うこととゴールを守ることの2つをやらなければいけないですが、どちらを先にやるかというとボールを奪いにいくこと。攻撃的という言葉をあえて使うのであれば、私は攻撃的な守備をしたいですし、相手の攻撃を攻撃したいと思っています。攻撃的にはやりたいというのは、ずっと今までいろいろなところで言ってきましたが、それはもう姿勢の問題です。相手のゴールに近いところでボールを奪ったらそのままチャンスになるというのは、いろいろなチームが証明してくれています。腰の引けた後ろに重心の低いサッカーはあまりやりたくないと思います。そういう意味ではボールを持っているときも持っていないときも攻撃的なマインドで、相手のボールに襲いかかって相手のゴールに向かっていくという姿勢でサッカーをやりたいと思います。
――松本山雅というクラブのこの地域における役割はどのようにイメージされていて、どんな存在になっていけばいいかと思っていますか?
霜田 僕も日本サッカー協会で働いていたことがあります。日本のサッカーのために何ができるかというのをずっと考えていた時期もあります。Jリーグができた一つの目的としては、百年構想もありますが、その地域にサッカー文化を根付かせる、その地域の人たちが誇れるようなクラブを作ること。そういう意味では松本山雅というクラブは、Jリーグにとってとても重要なクラブだと思っています。こういうクラブが成功しないと、これに続くクラブが出てこないと思います。観客動員数を見てもアルウィンの雰囲気を見ても、やはりこういうクラブが勝たなければいけないなと。そういうクラブが増えていかないと日本のサッカーがレベルアップしていかないと思います。ただお客さんが増えればいいというわけではなくて、この街に山雅が根付いているというのをここ何日間だけでも感じていますし、この記者会見を見てもそういう空気を感じています。なので、今まで以上に責任を感じてサッカーを根付かせなければいけない。アルウィンに一人でも多くの人に来ていただかなければいけない。それはJ2もJ3も関係なく、一つでも上の順位、一つでも上のディビジョンに上がるということを一緒になって体験できる場を作り続けなければいけないと思っています。勝ってもお客さんが減っていくのではまずいと思いますし、負けて増えるのも良くないと思います。皆さまは勝つところをは見に来てくれるので、もちろん負ける時もありますが、勝っても負けても応援はしていただけるようなクラブにならないといけないと思っていますし、それだけ僕らスタッフ、選手には責任があると思っています。
――これから新たな戦いが始まります。楽しみな部分が多いのか、責任や覚悟といったプレッシャーの部分が多いのか、今のお気持ちを教えてください。
霜田 プレッシャーは今までどのチームでも、どの仕事でもあったので、プレッシャーを楽しむことにしています。やっている選手たちに楽しくサッカーをやってほしい。勝つことに全力を尽くすことを楽しんでほしいと思っているので、私がしかめっ面をして楽しくなさそうに仕事をしていると、選手も楽しくサッカーができないです。厳しさは必要ですが、やはりサッカーを見ている方々に楽しんでもらうためには、我々も本当に楽しまなければいけないと思っています。来年1月にスタートしますが、皆さまに希望を持ってもらえるような年末年始にしたいと思っていますし、いま自分としてはすごくワクワクしています。