【一問一答】神田 文之社長(2020.9.25)※無料配信

――布監督が解任された理由と経緯は?

シーズン当初から「強化と育成」という難しい2軸を追いかけての人選だったということはファン・サポーターも含めて皆さんにお伝えしていました。結果のところでいうと、5連敗したあたりから厳しい状況だなと見ていましたが、若い力が出てきたり、育成のところで引き続き期待もあって見極める必要がありました。1試合1試合、トレーニングも含めて見定めてきたつもりです。その中で先日のホーム琉球戦で、応援するみなさんの期待に添えない試合を改めてしてしまったこと、若い選手があの試合で何ができたかというのを一つの判断材料とし、強化と育成の両方とも難しい状況に来たという中で今回の決断になりました。

――(1−6で敗れた)琉球戦が最終的な判断だった?

最終的にはそうなります。ただ、そこまでには1試合1試合シーズンが始まってからキャンプも含めて強化の責任者を含めて現場で見てきたつもり。1試合だけとは言えないが、最終的にはそうです。

――シーズン途中の監督交代はJ参入後初めてだが、フロント全体の責任も含めどのように考えているか?

Jリーグに上がってから初めてのことで、非常に苦しい決断でした。山雅を応援する全ての方と、私たち会社としてやっている人間、このクラブの想いも含めてつくってきました。フロント、会社ができることの山雅としての最善策を常に考えるしかないと思っています。仕事に置き換えれば私も含めいろいろな責任があると思いますが、「今の山雅としてできること」というのは、いろんな決断を下して少しでも明るい未来を切り開いていくという精神でジャッジすることが今できることだと考えました。それぞれの立場の中でできることを尽くすということを考えながら、今回の決断に至りました。

――後任に柴田(峡)新監督を選んだ一番の理由は?

JFL時代(の2011年)から山雅に携わっている人間で、コーチを経て今は編成部長としてクラブに貢献してくれていました。布監督のそばで一番現場を見てきた強化の人間だと思っています。クラブとしては布さんにここに来ていただいて良い影響も及ぼしていただいたことが多々ありました。その辺はしっかり、そばで見ていた柴田が引き継いでいく必要性があります。また、今後は次の監督の人選もセットで検討していくつもり。この期間は公式戦が続くのでしっかり勝負にこだわりながら、「柴田監督・西ヶ谷コーチ」という体制を決断させていただきました。

――柴田監督が暫定的に指揮を執り、その後の新監督はどういった方にアプローチしているのですか?

できれば早い段階で次の監督の人選を進めたいし、早ければ早いほど良いと思っています。柴田も山雅を大事にする気持ち、山雅愛があふれている人間で、その中で今やるべきことがわかっていて現場に立ってどんな形でも全力を尽くしてくれると思っています。その中で結果を追求してほしいです。柴田も含めて「今後の山雅がどうあるべきか」というチームづくりを踏まえた上での繋ぎ役になるので、それにかなう人選をしっかり一つひとつ検討していくことを私も含めて会社として早めにやっていきたいと思っています。

――今の山雅にはどのような監督が必要か?

今シーズンは主に(サンプロ)アルウィンを中心にサポーターやメディアの方に見ていただくことが、山雅を直接感じられる機会だと思います。(新型コロナウイルスの影響でサポーターとの接点が少ないため)難しいシーズンだからこそ、クラブや山雅のメッセージとして見ている方に伝わる試合をしないといけないというのが、今後この地域で山雅が存続する上で重要な要素。極端に言えば勝ち負けにかかわらず、ファン・サポーターの方に山雅のメッセージが伝わる、そういう試合ができるチームづくりができる監督を見つけてやっていくしかないと思っています。

――新監督の就任のめどは?

今年は特に連戦が続くし、中断も基本的にはないのでタイミング的に仕切り直せることがありません。シーズンオフが短いことも踏まえると、来年に含めてのチームづくりもセットになってきます。その点では急ぐ気持ちもありながら、チームのあるべき姿、先ほど言った点を踏まえてしっかり人選することが必要。布監督を呼んできたときも当然そうでしたが、「強化と育成」をブレさせずに人選していきます。早ければ10月にでも決めたいが、期限を設けてやるよりはしっかりと人選することの方が重要だと思っています。

――昨日(9月24日)は布監督が練習後の取材に応じていた。その後に決断した?

琉球戦を終えた瞬間から翌日の早い時間にかけて、クラブ内で方向性を固めました。そして昨日の午後、本人に私から伝えました。

――編成部長、U-18監督のポストの後任は?

編成部長は正直、空席になってしまいます。今年の新体制発表会でも鐡戸が強化の責任者としてファン・サポーターの皆さんに説明させていただきました。若い世代も含めて、責任を持ってやっていく機会にしたいと考えています。

ユース監督はアカデミーの編成に少し余裕を持った形にしているので、今残っているユースのスタッフ3名プラス、昨年トップのコーチだった増本(浩平)もS級指導者ライセンスを取得しているところなので、クラブで控えています。育成は引き続き重要だと思っているので、パワーを落とすことなくしっかりやっていきたいと考えています。(西ヶ谷監督の後任の)監督が誰になるのかは、まだ決まっていません。

――柴田新監督が編成部長に戻る前提で空席にしている?

まだ決まっていません。柴田しかできない役割で繋ぎに入ってもらいました。同時に鐡戸が責任を持ってやるというのも見据えて今年は体制をつくっていました。柴田が現場に近いところの仕事をしてもらうのは、山雅にとって非常に重要な役割。元の役割か違う形かはわからないが、(監督の任を終えた後も)現場に近いところを引き続き見てもらえたらと思っています。

――柴田新監督の来季以降の継続の可能性は?

強化と育成が一番大事。明日(9月26日)のゲームがどんな試合内容か未知な部分ですが、今までの流れを押さえてくれている柴田しかできない繋ぎであるということで、あえてこのタイミングで「暫定的」と表現しているのは、長い目でチームづくりを考えてのことです。極端に言えば今シーズンに移行するタイミングで柴田という選択肢はあったが、そうしなかったのは柴田の適材適所はトップに近いところで外から見てほしいというのがあったからです。しっかり現場を任せられる監督を人選するのがベストだと考えています。

――布監督のもたらした良い影響というのは?

「One Soul」というスローガンを、いろんな意味で体現してくれました。ファン・サポーターと交流できない苦しいシーズンで、コロナ禍で非常に難しい練習形態も余儀なくされました。組織やチーム内部を一つにマネジメントしていく中で、オープンな形でチームづくりをしてくれました。本当にありがたいことだったと思います。

また、選手もほとんどの選手がチャンスをもらえました。そういう意味では、この責任を選手も一緒に受け止めることが必要だと思っています。山雅の未来のために、さまざまなチャレンジをしてくれました。クラブは継続性や積み上げを意識した中で規模も大きくなり、それだけ布さんにもプレッシャーがありました。布さんなりにこだわってやることが難しかったのかなとも感じます。最後まで選手を守って、山雅のために表現してくれたのはありがたかったと思います。

――西ヶ谷新コーチは次の監督が来られたときにどうするのか?

次の監督の人選が固まると、その監督によってコーチの編成も変わると思います。次の人選によって配置を見直し、いろんな要素を持っている監督のフォローをできるコーチが必要なので、次の人選も含めてセットで見極めて考えることが必要です。西ヶ谷コーチがトップのコーチに就任したことでユースの子どもたちに心配をかけてしまうのは本意ではありませんが、トップを身近に感じてもらうという要素はあると思います。そういう意味でクラブは育成を大事にしていき、トップと育成が繋がっていけたら良いと感じています。

――羽田コーチも一緒に解任となった理由は?

一つの要素というのは言い切れません。若い選手を育てる中での人選ということは間違いなくあり、その中で羽田コーチは指導者経験もあって(鹿島)アントラーズという素晴らしいクラブにもいて、山雅の期待もコーチから監督へ上がっていくようチームづくりという理想もありました。ただ、なかなかそれがかなわないというのが現状です。

特に若いディフェンスラインのフォローをしてくれました。現場でも私も見ていましたが、しっかりやってくれている半面、布さんを(市立船橋高時代の恩師として)知る側近のコーチとしてもっと結果にこだわってサポートしてほしかった…という期待がありました。その中で布さんだけに背負わせるというより、羽田コーチには期待していた分、今回のタイミングで未来に繋ぐチェンジとして、コーチの枠も1つ空けて次の監督がやりやすい環境づくりも含めて解任を決めました。

ディフェンスラインのところの安定感をもたらしてほしかったというのもあります。プロのコーチとして、しかも選手としてディフェンダーもやっていたので、そこは大きかったと思います。

――柴田監督の後任の監督に対して、シーズン残り半分のタスクは?

「強化と育成」は変わらないところ。シーズンオフがコロナウイルスの影響によって短く来シーズンがすぐ始まるので、来年を見据えて今シーズンの早い段階から準備していかないと遅くなってしまいます。その中で、順位も厳しい状況下で、諦めないということも含めて山雅スタイルを表現し、勝負にこだわるところは捨ててほしくないです。若い力が出てくることもこれからも期待したいし、そういう監督を見つけたいです。山雅の監督の人選の中で(順位や勝ち点などの)明確なミッションを伝えるというよりも、「一緒にクラブを育ててほしい」というのが一番大事な関係性。このクラブで勝負してくれる監督に来ていただきたいです。

――若手が何かできるようになるには時間が必要で、布監督の9カ月という期間は判断するのに適切な時間だったか。もう少し長い目で見られなかったのは20位という成績が重かったのか?

結果だけという意味では5連敗のタイミングで何かしら考える必要があったと思います。ただ若い力が伸びてきているというのも、負けが減ってきた中で期待もありました。当然育成には時間がかかりますが、一方で選手たちの問題でもあるけれどもピッチで結果を出すというのはある意味1年、1試合の勝負。この前の琉球戦でああいった試合をしたというのは、ファン・サポーターあっての山雅としては非常に見せてはいけない試合でした。若手が少しでも躍動する姿が伝えられていれば、また違った答えもあったのかなと思います。結果が伴わない中で若手がパフォーマンスを上げられなかったのは、判断材料として大きかったです。

――外部の声も判断材料だったのか?

少なからず私もファンやサポーター、外部との接点があります。関係する外の声を聞くなかで、判断材料としてファン・サポーターの声を聞くことはずっとやり続けることだと思っているので、その声も聞きながらというのもありました。ただ、これは仕方ないことですが、中から見えることと外から見えることの誤差が出るのは事実で、その中でしっかり見極めて判断することが一番伝わるメッセージ。この前の試合の様子はファン・サポーターにある種のメッセージになってしまったので、それに対してクラブのあり方や判断をこの人事によって伝えなければいけないということになりました。

――後任人事の候補は何人か決まっている?

もちろん候補は挙がっています。早い段階でオファーにいきたいが、この松本山雅の状況で勝負に来てくれるかというのは簡単な話ではないと思うので、まずはそこに向けて動きたいと思います。