
【キャンプレポート】全ては昇格のために “オールアウト”の一日 ※一部無料
第1次串本キャンプ第6日は27日、和歌山県串本町の串本総合運動公園サン・ナンタンランドで午前と午後の2部練習を行った。午前練習の最後に厳しいタイム設定のシャトルランを入れるなど、タフに追い込んだ一日。午後の実戦形式では切り替えスピードの改善も見られた。


チーム始動当初から、早川監督が強調しているのは「攻守の切り替え」。短距離での急加速・急減速、方向転換などを0.1秒でも早く行い、その瞬間を制圧する。それを実現するには意識付けと仕組みの導入はもちろん、土台となるのは身体。スタミナとアジリティを鍛えるのが前提となる。


この日のシャトルランは、とりわけインターバルの設定が極めてタイト。20mを2往復し、これを3回繰り返す。ただし、その間のレストはわずか10秒。息つく間もなく飛び出し、ターンしてまた戻る。これを2セットやり切ると、力尽きてその場に倒れ込む選手たちが続出した。


声を出して励まし合いながら走破。指揮官はターンのポイントで目を光らせ、選手たちがコーンをタッチしているかどうかを厳密にチェックする。こうした細部も手を抜かず遂行できるかどうか――は、大きな判断基準の一つ。アラートな組織づくりを重んじる姿勢がにじんだ。


すると午後練習の最終セッションで、その成果の一端が垣間見えた。広めのフィールドで行った10対10。ランダムで振り分けたチームのどちらもボールロスト時の切り替えが早く、隙の少ない引き締まったトレーニングとなった。意識付け以外にも、「いつ」「どこで」といった要素の共有を仕組み化し、トランジションを制していきたい考え。


このほかのメニューもふんだんに盛り込まれた1日。ロンドに始まってラインブレイクをテーマとしたり、より実戦に近い6対6のスモールコートゲームを行ったり。頭も身体もきっちり追い込む、オールアウト(全て出し切ること)の一日となった。


早川監督と選手2人(松村、本間)のコメントをお届けする。

早川 知伸監督
――昨季に比べてもプレースピードが上がっている印象を受けます。
「常に切り替えろ」というところは、選手たちにもいろんなことをしながら伝えていました。意識だけでは成立しないけれど、まずは意識から。そこから無意識にできるくらいのところまで持っていきたいです。
――今日の最後のセッションでも、全体的に切り替えが早くなっているように見えました。
瞬間、瞬間でそれぞれのスピード感が出てきたと思います。じゃあこれがなぜ出てきたかというのは、自分の中ではある程度想定内です。ずっと言っていたことで、いつ、どこで起きているか。どうなっているか。具体的なものがはっきりしているからできていると思っています。
今日の練習もわかりやすくて、攻撃の押し込んでいる状況なので、自分たちはリスクがないんです。そういう場所が一番大事で、自分たちの場所から取られた瞬間の「いつ」を明確にできれば、ここは絶対に行ける、行くというところで共通認識になると思います。こちらの具体的な提示があって、それに対する選手の戦術行動が伴えば、自然と動くし自然と早くなる。無意識まで行けると思っています。
今日は特にわかりやすかったですが、それが場所によっても変わってくるし、攻撃でも同じように変わってくると思います。そんな提示をしていきたいと思っています。
――土台として走るということが必要になりますが、そこはやり込めたと感じますか?
ここまでやり込めたのは最低限です。正直もっとやりたいんですけど、選手たちは十分にやってくれています。それが素走りだけじゃなくて、その瞬間で、短い時間の中で強度をしっかり保って練習ができるのは狙いでもあるし、できていると思います。
――今日は厳しいシャトルランも含まれていました。
大事なところですね。一番キツい局面でどれくらいハイパワーを出せるか。國保さん(國保塁フィジカルコーチ)とも話をしている中で、あれを何回繰り返せるかも能力になってくるので、やっていければと思います。
そこに睨みを効かせるだけじゃなくて、自分も応援しているし、声をかけてやらせるのも大事だと思います。そういうところもできたらと思ってやっていました。
――シーズン中のメニューに盛り込めるかはさておき、鹿児島キャンプでももう少しやり込みたいところでしょうか?
もちろんです。あんなに極端なハイパワーではないですけど、あれに近づくくらい短い方向転換も含めて繰り返せるものを出していかないと、体に染みつかないと思います。
パワーを出すことは出しますけど、止まるのが少し少ないと思っています。行く、止まる、対応する、また出ていく。そこまで詰めてやらないといけないと思います。急加速、急減速はもっとやり込んで、体に馴染むまでやっていかないといけないです。
――選手同士で基準を明示し合える集団になれれば、より良い雰囲気になっていくのではないでしょうか?
現状は自分のほうから発信して、「これが基準だ」という基準づくりをしているところです。それを一貫して続けていくことで、選手たちからも「これが基準だ」となって、初めて声が出てくると思います。いまは探り状態で自分がしゃべっていますけど、あまり言わなくなります。
「じゃあ君たちはどうなの?」「基準は変わらないでしょ?」「なぜしゃべらないの?」と持っていくこともあると思います。逆にそんな声が出てくればより良いと思うし、いまは基準づくりも含めて明確に続けているところです。
――言わなくなったから正解ではなく、自分たちでやっていかないといけないというところですね。
そうですね。そこを見ているというのも、目も言葉も含めて見せていくのも必要だと思います。
もちろん僕だけの目ではなくて、武藤さん(武藤覚ヘッドコーチ)だったり一也(長山一也コーチ)も敏感に反応してくれているので、すごく助かっています。そこはこだわってやっていきたいところではあります。