コラソン試合レポート 第16節 川崎フロンターレ戦

リーグ戦において、ここ3試合勝ちがない松本山雅FC。そんな状況で迎える今節、対戦相手は川崎フロンターレだ。
舞台はアウェイとなる等々力競技場での一戦。
等々力競技場といえば!僕がJリーグデビューした思い出深い記念のスタジアムである。今を遡ること17年前、ヴェルディ川崎のメンバーとして、奇しくも山雅と同じ緑色のユニフォームを着てピッチに立ったことを思い出した。
今回の試合観戦のため久しぶりに訪ねたが、メインスタンドは改装され更に素晴らしいスタジアムとなっていた。

それでは早速、この試合の見所を。
ズバリ、船山貴之。
皆さんもご存知の通り、正に松本山雅をJ1に導いた功労者の1人である。

01

船山選手が山雅に加入したのがJFLからJ2に上がる2011年の途中。僕も3年半一緒にプレーしていたが、去年山雅がJ1昇格するまで得点はともかくアシストも含めて何点絡んでいたのだろう。たくさんのゴールを山雅にもたらし、守備でも献身的によくやっていた。
その貢献度は計り知れない。
しかし今オフ、川崎フロンターレからオファーを受けた彼は相当悩んでいた。
山雅でその才能を開花させ、たくさんのサポーターからも愛されていた。当然、クラブの居心地も良かったと思う。しかし、彼は現状に満足せず、あえて層も厚くレベルの高いチームでやる事を決断した。
その理由の一つに大久保嘉人選手、中村憲剛選手と一緒にプレーしたいと言う気持ちもあったという。この2人は言わずと知れた元日本代表で攻撃センスは群を抜く。そんな彼らと一緒にプレーしてみたいと言う船山選手の気持ちもわかる。
彼くらいの才能があればその2人とも感覚が合うだろうし、楽しくサッカーができるだろう。
しかし、彼は未だ今季無得点。古巣との対戦で今シーズン初ゴールを狙ってくる気持ちは強いと思う。それに対して、山雅守備陣が粘り強く対応出来るか?そこは大きなポイントだろう。

僕は歩いて試合会場へと向かったのだが、まだスタジアムの姿も見えない場所から選手にむけてのチャントが鳴り響き、スタメンが分かってしまった(笑)。
凄いパワーだな、と改めて感じた。

山雅はスタメンに前節、後半から入って流れを変えた飯尾竜太朗選手を先発で起用。川崎の強力な攻撃陣に対抗する布陣で臨んだ。

02

16時。この日も4500人近く詰め掛けたという山雅サポーターの後押しを受け、いよいよ試合が始まった。
立ち上がりから、J1でも屈指のパス回しを誇るフロンターレに押し込まれる山雅。前半13分の大久保選手のミドルシュートを皮切りに31分にはボールを回され、縦パスが入ると森谷選手が大久保選手にフリック。そして、抜け出した大久保選手が右足でシュート。しかし、カバーに入った山雅の大久保選手が間一髪でシュートブロック、ピンチを免れた。

39分にはショートカウンターからドリブル、そして森谷選手がミドルシュートを放つ。これは、GK村山選手が安定したセービングで防ぐ。
山雅は、攻められはするものの守備陣の奮闘もあり、水際でフロンターレの攻撃を凌ぎ続ける。

前半もそろそろ終了かと思われた44分。凌ぎ続けた山雅の守備陣に、フロンターレの船山選手が襲いかかる。右サイドでパスを回すと武岡選手、船山選手、エウシーニョ選手とパスをつなぐ。そして、裏に走り込んだ船山選手に再びスルーパスが出ると、シュートを打つ!…と、見せかけてクロスボール。これに走り込んだレナト選手が頭で合わせ1-0。

03

船山選手は山雅時代、反町監督から裏を狙う意識を徹底に叩き込まれ得点を量産した。この試合でもあんな動きが普通に出来ることで、得点につなげられるようになった。山雅としても、船山選手の良さを十分に分かっていただけに悔しい失点だったが、分かっていてもそれを上回る力を持つスペシャルな選手だからこそ、現在、船山選手はフロンターレの選手としてピッチに立っていられるのだろう。

このまま0-1で前半を折り返し、試合は後半へ。

オビナ選手と前田選手を2トップにして「ギアチェンジした」という反町監督の采配が功奏し、山雅が立ち上がりから押し込む。

50分には岩上選手のミドルシュートが相手に当たりコーナーキックを得ると、岩上選手が蹴ったボールに飯尾竜太朗選手が合わせる。ボールはゴールへ!…しかし、ゴール前に立っていた前田選手の頭に当たり外れてしまう。山雅からすると何ともアンラッキー。しかし、このような不運にめげず山雅は反町監督が準備していたセットプレーで決定機を作る。

04

54分に田中選手が激しいプレスでフロンターレからボールを奪うと喜山選手にパス。受けた喜山選手がシュートを放ちこぼれ球がフロンターレに渡るが、そのボールをオビナ選手が奪い返しGKと一対一に。そして、左足でシュート!…しかし、これはGKに阻まれた。
このシーンも山雅の良さである前線のプレスから、ショートカウンターで決定機を作った。

勢いの止まらない山雅は56分にも前田選手のスルーパスに抜け出した田中選手が右足を強振。
これもGKのファインセーブにあって得点にはならなかったが、山雅の推進力がフロンターレを圧倒して行く。

しかし、61分。山雅はこぼれ球を拾われると車屋選手のクロスが田中選手の手に当たりPKを許してしまう。意図的ではないだけに不運だった。
PKを蹴るのは大久保嘉人選手。しかし、最後の最後まで跳ばずに我慢したGK村山選手がビッグセーブ。ナイス!村山!
山雅サポの誰もがそう思った!
しかし、それも束の間の65分。フロンターレのコーナーキックだ。
レナトのキックをクリアする山雅。しかし、こぼれ球はフロンターレ、エウシーニョの足元に。エウシーニョが1人かわして右足を振り抜くとこのボールが山雅ゴールにつきささってしまい、0-2。

05

村山選手のPKストップで繋ぎ留めただけに、この失点は残念だった。勢いを止められてしまった山雅は、この後も中々チャンスを作ることが出来ず試合終了。

反町監督は「持ち得る力は出しているが、相手がそれ以上のものを発揮している。それは当初から分かっていたことで、それを打ち破れなければトップ15には入れない。

勝ち点を取って前に進んでいかなければならない」と力強く語った。
後半、立ち上がりからフロンターレを圧倒する時間があった。

あれを見ていれば分かるが、山雅のやっていることは間違っていない。そして、出来る筈なんだ!
…しかし、今日でリーグ戦4連敗という現実を突きつけられた。
でも、今こそ僕は声を大にして言いたい。
いい時は誰でも出来る!大事なのは苦しい時ではないか!!苦しい時にこそ選手は必死にもがき!サポーターは…チームと共に闘って欲しい!選手の背中を、いつも以上に押してくれ!!one soul!!次こそ…絶対に勝つ!俺らは出来る!
…しつこいね(笑)。

06

飯尾和也

文章:コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表