コラソン試合レポート 第17節 湘南ベルマーレ戦

今節の相手は湘南ベルマーレ。
去年も昇格争いのライバルとして対戦した相手を1stステージの最終戦でアルウィンに迎える。湘南ベルマーレのここまでの戦績は、5勝4分7敗。勝ち点は19で第10位につける。
山雅との勝ち点差は4。これ以上離されたくない山雅としては、ここで勝って少しでも勝ち点を縮めておきたい…そんな試合である。
今期の湘南ベルマーレは、去年昇格に貢献したウェリントン選手が移籍した。去年の対戦時にも、反町監督が「ウェリントン選手がいるといないのとでは、大きく違う」と言うくらい大きな存在だった同選手が抜けた湘南。確かに大きな影響はあるし、山雅にとってはチャンス…と思うところだ。が、しかし。去年から脅威であった躍動感あるアグレッシブなプレーは健在で、山雅にとっては相も変わらず難しい相手なのも事実。
システム的にもマッチアップする。となると、勝負は『ガチンコのぶつかり合い』必至。球際や、ちょっとしたスキ…そんな小さなことが勝敗を分ける試合となるだろう。

リーグ戦4連敗中だが、山雅を後押しするアルウィンのサポーターは試合前から苦しいチームを何としても勝たせようと、共に闘う姿勢を前面に押し出す。そんなサポーターの姿に僕は鳥肌が立った。それくらい「勝ちたい!」というサポーターの気持ちが痛いほど感じられる最高の雰囲気の中、いよいよ試合が始まった。

01

風の影響もありエンドを替えてきた湘南。
しかし、向かい風にも関わらず連敗脱出を目指し、立ち上がりからホームの大サポーターに向けて攻め立てる山雅。

6分。湘南のコーナーキックのこぼれ球を拾うと、岩上選手が自陣のペナルティエリアからドリブル開始。これに対し右から田中選手、前田選手、左からオビナ選手、大久保選手が岩上選手を全力で追い越し、迫力のあるカウンター。すると岩上選手は右を走っていた田中選手を選択、田中選手からクロスボールを上げるとボールは大久保選手に渡る。そして大久保選手が左足でクロス。これは合わなかったが、迫力あるカウンターを見せ、この日の山雅の意気込みを示すには十分のプレーだった。11分にはオビナ選手がヘディングで落とし前を向いた喜山選手のミドル。

20分には左サイドでオビナ選手と喜山選手がパス交換し、飯尾選手にパス。切り替えして、右足で上げたクロスボールに飛び込んだ田中選手があわやと言う場面を作ると、27分には左サイドの喜山選手からのクロスにオビナが迫力あるヘッドを見せた。

02前半は山雅の積極性、勝ちたい気持ちが感じられた。
チームの良さであるカウンター、両ワイドの攻撃への加担、点取り屋・オビナ選手の迫力のあるプレー…あらゆる良さが出た、気持ちの伝わる前半だったと思う。

後半に入っても攻める山雅。46分には喜山選手、50分には岩上がミドルシュートで湘南ゴールを襲うと、続く51分に歓喜の瞬間が訪れる。

左サイドで喜山から先日、オリンピック代表候補に名を連ねた前田選手にボールが渡るとトリッキーなドリブルで湘南ディフェンダーを手玉に取り、逆サイドから相手を振り切ると、猛然と走ってきた田中選手にスルーパスを通す。対応した湘南ディフェンダーが、田中選手に対し思わずファールを犯してPKを獲得。これをオビナが落ち着いて決め先制。
PKを取ったシーン。前田選手がディフェンダーを抜いた後、パスの選択肢は2つあった。湘南のディフェンスラインの前で待つオビナ選手か岩上選手、もう一つは裏を狙い全力で走っていた田中選手。通る可能性としては低いと思われるが、得点の可能性が高かったのは、田中選手の方であった。前田選手は迷いなく、田中選手にスルーパスを出した。安全な方を選択せず難易度の高いパスを選択し、それをしっかりと通す…オリンピック代表候補に名を連ねた前田選手の技術が生んだゴールである。

03

それも束の間の55分、湘南は永木選手がフリーキックを山雅のディフェンスラインとキーパーの間に入れる。このボールが、戻りながらクリアしようとした岩間選手の頭に当たりオウンゴール。
(岩間)雄大に同情するわけではないが、戻りながらの対応というのは難しい。僕も一昨年のガンバ戦でオウンゴールをしてしまった。
難しいとは言え、僕らの仕事はそれを守れるかどうかなので残念な失点だった。

04

ここから、両チームの意地がぶつかり合う!
71分、湘南の古林選手が右サイドでボールを持つ。1人をかわし中にカットインして入って行くと、カバーにきた酒井選手もかわし、左足でシュートを打ち山雅のゴールネットを揺らす。
しかし、ホームで是が非でも勝ち点3の欲しい山雅も迫力のある攻めを続ける押し込む。87分にクリアボールのこぼれ球を大久保選手が拾うと、ゴール前にロビングボールを上げる。そこに待っていたオビナ選手がヘディングで落とすと、「ゴールしか考えていなかった」と言う阿部選手が走り込んできて右足で押し込み同点。

05

しかし、その得点の直後に投入された湘南の藤田選手が、左サイドの三竿選手のクロスに頭で合わせると再び勝ち越しを許してしまう。

あきらめない山雅も、ロスタイムに阿部選手が2度の決定機を掴むが決められず。
終盤の嵐のような展開も僅かに及ばず、2-3で試合終了。

06

激戦を振り返り反町監督は言った。「現実をしっかり受け入れてやらなければいけない。サッカーの常識で、点を取った後の何分は注意すると言われているが、それを2つもやられているようでは」と悔しさを露わにした。田中選手も「同じ事の繰り返し。そういう意味では成長していない」とバッサリ。
田中選手は失点するたびに大きなジェスチャーで、「まだまだ大丈夫だ!顔を上げろ!」と鼓舞していた場面を僕は見ていた。
得点した時にも、もっとみんなでピッチで声を掛け合いこの痛い経験を次に生かして行くべきだろう!
でも、この日の山雅は球際、走力、勝ちたい気持ち!…がよく出ていたと思う。
しかし、結果を出すのがプロ。松本山雅は結果を出し続けなければいけない!
こんな時こそ、うつむいてなんかいられない!いや、こんな時だからこそ、顔を上げて前を向き、サポーターも一丸となり闘っていくのだ!

07

飯尾和也

文章:コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表