山雅戦士×飯尾和也 対談 #11 喜山 康平

取材日:2015年7月2日

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和也 念願だったJ1の舞台!キーヤンは、これがJ1デビュー、になるのかな?

喜山 そうですね。ようやく、って感じです!

和也 じゃあ、開幕前の準備から振り返ってもらおうかな。キャンプはどうだった?

喜山 例年通り、追い込むところはしっかり追い込む、という感じで良いキャンプでしたね。

和也 しっかりと追い込んで、走り込んで(笑)。俺も3回経験してるけど、毎年「走り」を中心にしたメニューをこなしていると、その年によって手応えが変わるでしょ?「今年は走れてるな」とか。

喜山 それはありますね。走れてると、『去年より調子がいいな』とか…そういう実感はあります。

和也 J1を意識して、準備を変えたりしたの?何か特別なやり方とか。

喜山 いや、特にはないですね。僕は八丈島で自主トレを行っているんですけれど、そこで新しく教えてもらったもので「いいな」と思ったら取り入れるくらいで。体幹を鍛えたり、腰周りの強化を図ったりだとか…。キャンプに関しては、大きな怪我もなく終えることが出来たのですが、開幕直前の合宿で、ヒザの上を打撲してしまったんですよ。当たりどころが悪かったみたいで力が入らなくなってしまい、直前まで練習出来なくて…。ちょっと不安もありましたね。

和也 打撲かぁ。そういう怪我は軽く見ないで慎重にやらないとね。他の部位にまで飛び火すると大変だから。

喜山 そうなんですよね、その辺は和兄も詳しいでしょうけど。…あれはちょっと困りました。

和也 そんな準備を経て迎えた名古屋グランパス相手の開幕戦。どうだった?あの試合は。

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喜山 雰囲気も良くて感じるものがありました。スタジアムも立派でしたしね。開幕戦ってやはり特別なものじゃないですか。それぞれの選手がそこを目指して、キャンプから個々の能力を積み上げてきて…でも試合に出られるのは11人。やっぱり特別な試合だと思いますし、内心、燃えるものがありましたよ。

和也 俺もスタジアムで観たけど、燃えたもんね(笑)。サポーターも沢山いたし。

喜山 はい。もちろん名古屋のサポーターも凄かったですけど、松本からもムチャクチャ沢山のサポーターが来てくれて。あれは新体制発表会の時かな?僕、呼びかけたんですよ。「1万人以上来てください」みたいに。そしたら本当に来てくれたんで嬉しかったです。

和也 すごいじゃん!キーヤン、力あるなあ(笑)。

喜山 まあ、僕が声を掛けた効果が少しはあったのかな、なんて(笑)。

和也 山雅サポーターの来場者数、1万人超えてたもんね。1万2千人くらいいたのかな。そんな最高の雰囲気の中で得点を決めたシーン、どうだった?

喜山 あれは、『オフサイドかな』と思ったんですよ。フリー過ぎたんで。

和也 落ち着いてたよね。

喜山 なんか…ゾーンに入ってました。

和也 「ゾーンに入ってた」って…誰だっけ、それ言ったの。パクリだろ(笑)。でもその後だよね、J1の厳しい洗礼を浴びたのは。

喜山 ええ。完全に飲まれてしまって。スタジアムの雰囲気もどんどん相手(名古屋グランパス)に持っていかれて…。まあ、簡単じゃないな、というのは分かっていたし、試合巧者にならないといけないな、というのを思い知らされました。…でも、その辺が足りないまま1stステージが終わってしまったのかな、と。

和也 最近の展開にもつながるんだけれど、その辺詳しく聞かせてもらえるかな。開幕でああなったら(得点直後の失点)選手としては当然、そこは気をつけていると思うんだけれど…何が原因だと思う?

喜山 まあ…分かってたら…(こうはならない)っていうのはあるんですけど…。

和也 難しいよね。ひと言で言えば『J1とのレベルの違い』ということになるのかも知れないけれど…。

喜山 危ない時間帯として、『得点した直後』とか『開始からの10分』とよく言われますけど、そういう部分で隙があるのかも知れません。それと、自陣ゴール前でのファウルが…。開幕の名古屋戦の時もそうですし、1stステージ最終節のベルマーレ戦の時もそうでした。セットプレーからやられてしまうんですよね。

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和也 そうだね。以前に比べると、ファウルの数は圧倒的に増えた感じがする。たとえファウルを取られる危険を冒してでも、止めなければならない、という場面も勿論あるんだろうけどれどね。

喜山 でも、そこはやっぱりチームとしてファウルにならないような止め方や、身体の入れ方が必要なのかな、とは思いますね。相手選手が強いから、より激しくいかないと…という部分でのファウルだったりもするんですけれど。逆にファウルをもらうのが上手い選手もいますし。そういう部分をチーム全員が意識して立ち向かわないといけないな、と感じています。

和也 でも、失点後も(田中)隼磨とかキーヤンが中心となって、チームの仲間を鼓舞していくじゃない?あの辺は自覚を持ってやってるの?

喜山 本当は失点することなく全て抑えられればそれが一番だし、そうしたいと思ってそこにこだわりを持ってプレーをしてはいるのですが、やっぱり相手選手のスーパーシュートが決まってしまうこともあるし、湘南戦の時のようにオウンゴールが入ってしまうことだってあります。そんな時に必要なのが「まだ勝敗は決してない、まだいける!」というメンタルじゃないかな、と。考え方を変えればチームの雰囲気も変えられると思う。だから、失点といった場面も想定して、そういった時にも後ろからポジション出しなどの声を積極的に皆に対して掛ける、ということを徹底してやっていくよう心掛けています。

和也 それは大事だし、必要なことだよね。

喜山 まあ、和兄のマネです(苦笑)。

和也 アルウィンだと、歓声が凄くて選手間で声が届かないこともあるし、キーヤンや隼磨が意識してそうやっていることは大事だと思う。

喜山 本当、その辺は和兄と同じピッチに立つことで勉強出来たと思います。どんな展開になろうと最後まであきらめない。それは、勝っていても負けていても一緒。あきらめたらそこで終わり、ですしね。その辺はこれからもやり切っていきたいですし、ピッチに立つ選手の心構えとして絶対に必要なものだと思っています。

和也 そんな風に言ってもらえると俺も嬉しいよ(笑)。1stステージも終えて、キーヤンが『さすがJ1、この選手はスゲエな!』と思う選手、印象に残っている相手はいた?

喜山 よく聞かれるんですけど…横浜Fマリノスのアデミウソン選手とか。あの試合はウチとしては完敗でしたし、僕自身も何も出来なかったんですけれど、アデミウソン選手は『モノが違う』と思わされましたね。

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和也 ぶつかったりしたのかな?

喜山 いや、ぶつかりはしなかった…というか、いけなかったんですよ、速くて(苦笑)。ドリブルのコース取りも速いし、ドリブルした後の逆足(ぎゃくあし)の入れ方とかも上手かったです。…これはもう、ちょっとレベルが違うな、と。
あと、あまり目立たないですけれど、柏レイソルの大谷秀和選手はいい選手だな、と思いました。気が利いてるというのかな…。結構前から「なぜネルシーニョ監督は、大谷選手をずっと使っているんだろう?」という疑問を持っていたのですが、実際にピッチ上で対峙してみて、その理由が分かった気がします。その辺はテレビを観ているだけでは分からない部分ですね。相手からすると「あ、この選手イヤだな」と思わせる上手さというか…それはアプローチの速さだったり、こちらからするといやらしいポジショニングだったり…当然、それは技術の確かさに裏打ちされた上手さなんですけれど。攻撃や守備の時、要となる場所にいる…そんな選手ってチームにとって絶対、必要じゃないですか。

和也 そうだよね。

喜山 これはJ1に上がって本当、感じてることなんですけれど…それぞれのチームにいるいろんな選手の良い部分を取り入れながら、自分も成長していきたいな、と。そういう意味ではJ1で戦えるのは楽しいですよね。…本音を言うと、それで勝てれば最高なんですけど(苦笑)。

和也 試合を観ていて、俺は個人的に(岩間)雄大とキーヤンはかなり効いてると思っているんだけれど、これから2ndステージに向けて新戦力も加わっていく中で山雅というチームはどういう方向に向かっていけば良いと思う?

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喜山 新戦力も入ることでチーム内でのポジション争いもまた始まるでしょうね。うーん、ボランチや中盤が攻守に機能しているのがチームの良い時なんで、ウチとしてはそういう時間を増やしていきたいです。ウチの良さが出せている時は、どのチームと対戦しても互角以上の勝負が出来ると思っているので、攻守ともにパフォーマンスを上げていきたいですね。

和也 やれる、っていう手ごたえはあるんだね。

喜山 ええ、手ごたえはあります。あるんですけれど、ちょっとしたところでやられて…というのが残念だし悔しいのですが。でも、「完全に無理」とかでは決してないです。その時間(攻守ともに良い時間)をいかに長くするか、あと、如何に悪い時間帯を耐え抜くか、だと思います。

和也 まだ全然あきらめるような順位じゃないしね。

喜山 そうですね、捉え方次第というか…。

和也 メンタルッ!(笑)

喜山 本当、そうですね(笑)。

和也 楽しみだね。

喜山 ウチの良さはあきらめないこと。そこがなくなってしまうと、ウチが積み上げてきたものもなくなってしまうと思うので。

和也 心強いね!じゃあ、ここらでちょっとキーヤンのプライベート関係の話も聞いておこうかな。

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喜山 え、そーゆーのもあるんですか?(苦笑)

和也 謎に包まれた喜山選手のプライベートを伝えるのも俺の役目だから(笑)。もう、何でもいいよ、「彼女、出来ました!」とか「結婚します!」でもいいからさ(笑)。

喜山 勘弁してくださいよ(笑)。

和也 休みはどうしてるの?

喜山 実家に帰ることが多いですね。年々、注目を浴びるようになって、松本にいると街中でも気が休まらないというか…。本当、嬉しいことだしありがたいんですけれど。オフは地元の友達とメシを食って、買い物して、なんて感じで過ごすのが多いです。

和也 チーム内だと、遊んでいるのは誰あたり?

喜山 今年は…ムラ(村山智彦選手)が多いですね。去年は5人くらい一緒に遊ぶチームメイトがいたんですけれど、ムラだけになっちゃって(苦笑)。あとは、そこに(岩沼)俊介がいたり、石原(崇兆)や(飯尾)竜太朗が加わったり…。独身は独身同士で仲良く、って感じですかね。

和也 俺も独身だから仲間に入れてよ(笑)。最近、チームの雰囲気はどう?

喜山 そんなに悪くないですよ。去年とかもそうですけど、いい時も悪い時もそんなに変わらないですね。いじりいじられ、といった感じで。前向きな雰囲気があります。厳しい状況はそれとして受け止めながら、でも反町監督の言葉通り『下を向いていても何も落ちてない』ってことを肝に銘じて、前向きにやっていくしかないと思っています!

和也 本当、雰囲気は変わってないよね。俺もさっき練習見ていてそれは感じたな。

喜山 練習が終わった後の、ロッカーの雰囲気とかもいいですし。

和也 こんな時だからこそ、サポーターと一緒に闘っていくのが大事だと思う。最後、キーヤンにこれからの抱負をサボーターの皆さんに、一つぶちカマしてもらおうかな。

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喜山 いつも応援ありがとうございます。これからの後半戦、一緒に喜べる試合を増やし、皆で楽しい時間をスタジアムで共有したいと思っているので、どうぞ宜しくお願いします!

和也 サポーターの後押しは感じている?

喜山 それはもう、感じていますね!最近はアップの時の盛り上げ方とかも変えてくれているのが分かるし、『ああ、チームの状況まで考えてくれているんだな』と思っています。最後まで一緒に闘ってくれるのが山雅のサポーター。選手とサポーターが一丸となって闘うのがウチのスタイル。苦しい時こそ、共に闘ってもらえたら嬉しいです。2ndステージも熱烈な応援を宜しくお願いします!

和也 キーヤンの奮闘、期待してます!頑張って!

喜山 ありがとうございます!

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飯尾和也

Interviewer  コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表