【コラソン解説】第15節 湘南戦 ※無料配信
勝ち点を取ることはできなかったが、厳しい条件の中で「意地」を見せてくれた。2度目の3連戦の最終戦、しかも気温は30度超まで上がって暑い中でのゲーム。さらに相手の湘南は運動量豊富で非常にタフなチームだ。しかしそうした難敵に対してひるむことなく、最後までタフに戦う姿が見られた。
悔しい敗戦も 「山雅のスタイル」随所に
そして試合前にサポーターの皆さんが横断幕にも掲げた「松本のスタイル」を出せた場面もあった。47分に先制を許し、このままズルズル行くのではないか…という不安が脳裏をよぎった直後。石原が湘南の一瞬の隙を突いてみせた。
安川のスローインに対して石原がいち早く反応しボールを受けに行ったため、湘南の選手は出足が一歩遅れて後手に回る。鋭い反転から前を向いてドリブルでカットインすると、右脚を振り抜いて見事にゴールネットを揺らした。安川のスローインも素早かったし、前を向いて仕掛けられる石原の良さをゴールの近くで生かした素晴らしいゴールだった。今季全試合とも左ウイングバックで先発起用されていた石原をシャドーで先発させた反町監督は「推進力があり、ドリブルで突破する力もスペースを見る力もある」と意図を説明。その狙いもピタリとはまった。
しかし、その9分後。セットプレー崩れの2次攻撃でクロスから湘南FW山田直輝にヘディングシュートを決められてしまった。今回はあえて図表では振り返らないが、反町監督は常々試合に勝つために「隙を与えず、隙を突く」と言っている。実際に石原の得点がそうであるように「隙を突く」ことは出来たが、「隙を与えてしまう」ことがあるのもチームの現状。クロスに対して上げさせないために一歩でも寄せること、シューターに対しても相手より先に触ること、体をぶつけることなどはもっと突き詰めていかないといけない。いつも主張していることだが、1歩、1センチの小さな差が集積されて試合の勝敗という大きな結果を決めていく。その細部を突き詰めてきたのが、反町監督の率いる山雅であり、ひいては「山雅スタイル」の1つの側面だと僕は思っている。
これを克服していくための方法として飯田は「ハードワークと球際の争いを練習から出してチームのカラーをもう一度取り戻さないといけない」と話した。「練習は嘘をつかない」「我々には練習しかない」。こうした言葉の数々も、反町監督が就任1年目の2012年から折に触れて発信してきたことだ。その通り、日々の練習からチーム内で厳しく突き詰めていくことが重要だろう。
その一方、見ていて単純に気持ちを熱くさせられたプレーもあった。69分、岩間のプレーだ。カバーに入った後藤のGK村山へのバックパスが短くなって相手にカットされ、村山も交わされ絶体絶命のピンチ。しかしゴールカバーに入った岩間のとっさのシュートブロックで難を逃れた。一見すると後藤のミスに焦点が当たりそうな場面だし、確かに本人も「二度とやってはいけないこと」と強く反省していた。だが味方がミスをしても最後まで諦めないこと、カバーすること、助け合うこと。岩間のプレーには、「全員で戦う」という山雅のスタイルに必須な要素が凝縮されていた。そして付け加えるなら、岩間の後ろでは田中も体を投げ出してゴールカバーをしていた。たとえ負けたとしてもこのようなプレーは見ている人を熱くする。それを実感したプレーだった。
がむしゃらに戦う姿勢 勝ち点3へのカギ
これで5試合勝ちなし、J2では2014年第6節以来となる連敗。試合後の記者会見でも反町監督に対し、こうした状況を打破するための質問が飛んでいた。僕個人としてはここで取り上げた岩間のような味方のため、チームのため、サポーターのためにがむしゃらに戦う姿を試合の中で多く見せることが1つのカギではないかと思っている。こうしたプレーが頻繁に見られるようになれば、自然と勝ち点3は近付いて来るのではないだろうか。
冒頭でも書いたように、そうした意味では「現状を何とかしなければならない」と言う選手の意地や必死さは垣間見えたこの試合。敗れはしたが今後に繋がる要素はたくさんあったし、これを続けていくことでおのずと勝利もついてくると信じている。シーズンを通して苦しい時期は必ず来るもので、山雅にとってはそれがまさに今。ここで膝を折らず、ファイティングポーズを取って戦い続けることでしか道は開けない。この日のピッチに見られた「明るい材料」のカケラは、今後を期待する材料に十分なりえるもの。それを信じて最後に笑えるよう、さらなるサポートをお願いしたい。
構成/大枝 令
文章:コラソン 飯尾 和也
元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表