【試合レポート】第1節 横浜FC戦 ※無料配信
取材日:2018年2月25日
横浜FC 0−0 松本
ニッパツ三ツ沢球技場/10,779人
警告【横】イバ、渡邉将【松】前田直、パウリーニョ
難敵にゴール許さず 開幕戦はドロー発進
【評】2年連続で同一カードとなった開幕戦。アウェイに乗り込んだ山雅は難敵と真っ向からぶつかり、スコアレスドロー発進となった。立ち上がりは山雅のペースで、6分にFKから浦田がシュートを放ったのを皮切りに攻勢を強める。だがペナルティーエリア内にきっちり人数を割いて守る相手のディフェンスを破れずにいると、徐々に主導権は横浜FCへ。昨季J2得点王のイバを起点とするシンプルながらも強力な攻撃に手を焼いて冷や汗をかかされた。それでもGK守田が再三のビッグセーブで窮地を救うなどしてゴールは割らせず、0−0のまま試合終了。2014年以来となる開幕戦白星はならなかったものの、貴重な勝ち点1を持ち帰った。
昨季J2得点王を封じ 守備面には手応え
新生・山雅の初陣は収穫と課題が相半ばした。先発のうち新加入選手が6人と半数以上を占めただけでなく、フォーメーションも含めて装いを変えた緑の戦士たち。2トップに組み替えるなどバージョンアップを図った攻撃が十分には機能しなかった半面、昨季J2得点王のFWイバに決定的な仕事をさせないディフェンスは健在だった。反町監督も「開幕戦としては上々だと思っている。どの試合も難しいゲームだが、勝ち点1をポジティブに捉えたい」と振り返った。
約5,000人のサポーターに後押しされ、いよいよ始まったシーズン。ゴール裏からは開幕を喜ぶかのように大きな声援が押し寄せ、曇天の肌寒さを感じさせない。その熱気はピッチにも乗り移ったのだろう。序盤の山雅は優位に試合を進め、永井-前田直のコンビネーションなどでチャンスを演出。セットプレーも工夫を凝らして揺さぶり、高さで不利な相手からゴールを奪おうと試みた。
だが、30分ごろからピッチ内の表情が変わる。原因はイバ。ボールを収めて起点となるだけでなく、自ら運んだりパスを出したりと自在の働きぶりを見せてペースを握られた。指揮官もこれには「いいリズムのときでも、全部向こうの『左利きの10番』に壊されてしまう」と困り顔。山雅はボールを奪う位置が低くなったほか、カウンターの初手でロストする場面が目立って自陣でのプレー時間が増えていく。前田直もピッチコンディションが影響してか、ボールが足につかないシーンが多かった。
こうなると頼りにしたいのが高崎-永井の2トップだが、なかなかボールキープできずに苦しんだ。永井が「FWが収めないことには始まらない。孤立している面はあったが、あと2秒くらい収められていれば、ワイドは走れる選手ばかりなので出てきてくれたはず」と悔やめば、高崎も「自分のところでボールロストが多かったのは明らか。繋げればもっと違うチャンスができたと思う」と険しい表情を浮かべる。
ただ、苦戦の中にも光明はあった。決定的な仕事をさせなかった守備だ。中盤の底を任されたアンカー藤田が持ち前のボール奪取能力を存分に発揮すれば、浦田と橋内の小柄な左右ストッパーは粘り強く対応した。試合前ミーティングでキャプテンマークを任された2年目の橋内は「与えられたタスクをゲームの中で発揮するのは同じだが、味方を鼓舞したり声を掛け合ったりというのは大事なのでそこは少し意識した」。守田もビッグセーブを連発した。
見せ場をつくれず0−1で敗れた昨季に比べればスコアも内容も確かな進歩は感じられた。ピッチ上の選手も同様の感触を得ており、「去年とは明らかに違って、ディフェンス陣はいいパフォーマンスを出せていた」と高崎。パウリーニョも「去年(の開幕戦)よりいいゲームができたと思う」と同調する。残った宿題は、どのようにゴールへの道筋を描いていくのか。J1降格組の新潟に挑む次節こそ、ネットを揺らして勝ち点3を持ち帰りたい。
GK守田ここにあり 獅子奮迅の活躍
いったい何度、絶体絶命のピンチを救っただろうか。この日の主役とも言える活躍ぶりを見せたのは、新潟から新加入した191センチのGK守田。前後半とも安定したプレーを見せただけでなく、決定機をことごとく防いで横浜FCの前に立ちはだかった。「全部が全部良かったわけではないが、去年の得点王がいるチームに対してゼロで抑えられたというのは自信になる」と汗をぬぐった。
圧巻は89分。DF陣が置き去りにされて1対1となったものの、至近距離からのシュートを瞬時の反応で弾き出した。それ以外でもセットプレー時には広いエリアをカバー。「相手のFWに対してうちのDFはほとんど身長が下なので、積極的に出て行って防ぐことを意識した」と頼もしい。
「このゼロ(無失点)を続けて勝ち点を拾い続けるのがベース。たとえ点を取れなくても後ろの選手は焦れないことがすごく大事」と守田。古巣の新潟戦へ話が及ぶと「絶対に負けたくない相手。しっかり準備して臨みたい」と語気を強めていた。
編集長 大枝 令 (フリーライター)
1978年、東京都出身。早大卒後の2005年に長野日報社に入社し、08年からスポーツ専属担当。松本山雅FCの取材を09年から継続的に行ってきたほか、並行して県内アマチュアスポーツも幅広くカバーしてきた。15年6月に退職してフリーランスのスポーツライターに。以降は中信地方に拠点を置き、松本山雅FCを中心に取材活動を続けている。