コラソン試合レポート 第10節 ヴァンフォーレ甲府戦

52日の新潟戦から中3日で迎えたJ1リーグ戦ファーストステージ第10節。

418日のモンテディオ山形戦から、ナビスコ杯も含め連戦に入っている山雅。

対戦するのは山形や仙台、新潟といった本リーグ戦において順位が近く、残留を争う上で負けられないチームばかり。また、15位以上を狙うためにも負けてはいられない相手との連戦が続いている。今節の対戦相手であるヴァンフォーレ甲府も、正しく「ライバル」と言ってもいい相手だろう。

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ここで甲府の事についての話を。

僕が仙台でプレーをしていた15年くらい前、甲府はJ2でも常に最下位。来場観客者数も、少ない時には2000人台の時があったのを覚えている。

そんな時代もあったクラブが、今やJ1の舞台 でも堂々と戦っている。

仙台や新潟の時にも話したが、地方クラブであり資金力の面でもJ1の中で劣る甲府は、現実的に残留を目指しているクラブである。

昨年は城福監督のもと、同クラブ史上最高位のJ113位と言う成績を残した。

新たに樋口監督を迎え更なる躍進を期した今年だが、第2節こそ名古屋に勝ったもののリーグ戦では6連敗。しかし前節、アウェイの鹿島戦で314日以来の勝利を収め山雅のホーム・アルウィンへと乗り込んでくる。

山形戦で話した内容とも少し被るが山雅と甲府、この両チームは実力的にはさほど変わらないと僕は思う。

当たり前のことを当たり前に出来るチームが試合が終わった後、笑っているだろう…それがこの試合の見どころ。

『当たり前の事』とは、まずは球際。そしてボールを取られた時の守備への切り替えや、ちょっとしたポジショニング、セットプレーのマークなど、様々な事があるが、勝敗を分けるポイントとなるのはそのような部分だろう。

山雅は負傷した後藤に代わり、出場停止の明けた酒井がディフェンスラインに復帰。そして、中央には前節に続いての先発となる大久保。

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消耗の激しいワイドのポジションには、左にリーグ戦初先発の那須川を起用した。

午後2時。絶対に勝ちたい相手、絶対に負けられない戦いが始まった。

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試合開始から、ホームで甲府をねじ伏せたい山雅の気持ちが相手を圧倒して行く!

まずは2分。右サイドの田中からクロス。そのボールに合わせた初先発の那須川がヘディングシュート。那須川の意気込みが感じられるシーンだった。

そのシュートから束の間の3分、ハーフライン付近で岩上からの縦パスを受けたオビナがミドルシュート。この強烈なシュートはGK荻もキャッチ出来ず、弾き出すしか出来なかった。

11分には岩間が前から強烈なプレスでボールを奪うと、前節J1初ゴールを決めた前田の足元に。左足を振り抜く…が、これはミート出来ず。しかし、立ち上がりから積極性や球際といった部分で、少しずつ相手を上回った山雅がゲームを掌握する。

31分、上がって来た酒井からのクロスをワントラップで抜け出したオビナが左足でシュート。これは甲府の津田の好守に阻まれる。

44分には岩上のフリーキックが壁に当たりこぼれ球を自ら拾い左足のミドル。このシュートは惜しくもポストを叩き、更に詰めていた飯田が左足でシュートを放つが甲府の渡邊 にブロックされてしまう。

攻めたてたが得点を奪えずに前半は終了。

笛が鳴って間もなくの4分、自陣でのミスから甲府の山本にあわやと言うミドルシュートを打たれ後半戦は幕を明けた。

しかし、このシュートを境に試合は膠着状態に入る。どちらも「勝たなければいけない。しかし、負けて相手に勝ち点を与えたくない」という思いが強く、お互いの良さが出せない…そんな固い後半だった。

その膠着状態を破ろうと65分、山雅は前田に代えて石原を投入。そして歓喜の瞬間が訪れる。

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78分。右サイドで相手のクリアボールを拾った喜山がタッチライン際にいたオビナにパス。

オビナがクロスボールを上げると、左サイドから飛び込んだ岩沼が潰れボールが後ろにこぼれた。

そこに走り込んでいたのがパスを出した喜山。ワントラップするとGKの脇に冷静に蹴り込み先制。

このプレー、見逃せないのが左ワイドの岩沼が走り込んで来たこと。このプレーがなければこの得点はなかったし、右サイドでパスを出したのに何故ゴール前に喜山が!?

時計は80分を指していたが、この時間帯はサッカーでは1番きつい時間。そんな時間帯に、全力でゴール前に走りこんだ喜山の走力、そして勝ちたい気持ちが甲府に「差」をつけた素晴らしい得点だった。

その後もやるべき事をしっかりやり続ける山雅。

迎えたロスタイム。右サイドをオビナが抜け出すと、中に走り込んだ石原が倒されPKを獲得。

これをオビナが冷静に右隅に決めて2-0

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エースのゴールで歓喜に包まれそのまま試合終了。

試合後、田中がこんなことを明かしてくれた。

試合前の円陣で「もっと危機感を持ってやらないと、このままズルズルいってしまうぞ!もっとやらないといけない!」と選手を鼓舞したそうだ。さすが準磨!

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確かにこの試合、全く山雅が隙を見せる事はなかった。ミスが出てもみんながカバーしたり、それぞれが危機感を持ってプレーしていたのは明らかだった。

そんなエピソードも頷ける試合内容だったと思う。

このような試合展開は、アウェイで戦った山形戦の時にもあった。あの時はゴールを決められずに0-0のスコアレスドローに終わったが、相手こそ違えど今節はしっかりとチャンスを決めて勝ち切った。

短期間だがチームの成長というものを感じずにはいられない素晴らしい試合だった。

そして試合後、「連戦で疲れているでしょう?」と聞く僕に対し岩上の口から放たれた言葉が全てであろう。

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「あれだけサポーターに後押しされたら、足止まらないよね」

まだ連戦は続く。今度はアウェイでの鳥栖戦だ。

・・・後押しするしかないよね!!

飯尾和也

文章:コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表