コラソン試合レポート 第15節 FC東京戦

前々節の横浜Fマリノス戦、そして前節の鹿島アントラーズ戦と古豪クラブに連敗して迎える今節。相手は日本代表選手も抱え、なんと言っても時の人であるドイツ・マインツへの移籍を決めた武藤嘉紀選手を擁するFC東京との試合だ。
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東京とは今年の328日にもナビスコ杯の第2節で対戦をしている。その時の結果は1-1の引き分けだった。

しかし、その試合の結果は今節、全くと言っていいほど参考にはならないかも知れない。

と言うのも、その試合には日本代表でもある太田宏介選手が出場していなかったからだ。今年のFC東京の得点の多くは、彼の左足から生まれている。

左からのクロスはもちろん、セットプレーのキッカーも務め得点を生み出す太田選手の存在は大きい。松本山雅としては、いかにセットプレーを与えることなく彼の左足を封じるか、が大きなポイントだろう。

そしてもう一つ。言うまでもないことだが、武藤選手の突破力と決定力には気をつけなければならない。

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この試合、山雅は前節と同じスタメンで臨んだ。

なんとか連敗を阻止しようとサポーターの後押しもボルテージも最高の中、ホーム・アルウィンでの決戦が始まった。

立ち上がりから相手陣地で試合を進める山雅、前半8分の攻撃。大久保選手から右に展開すると、岩上選手のクロスに対して、前田選手が飛び込んだ!…が、これはわずかに届かず。

それからしばらく両チームともになかなかチャンスを作れない時間が続くが、体のぶつかり合い、そして球際の戦いも激しいお互いの『勝ちたい気持ち』が前面に感じられる見応えのある時間でもあった。

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しかし、27分。とうとうFC東京に先制点を許してしまう。

右サイドでボールを動かすと、左センターバックの丸山にボールが渡る。

すると左サイドバックの太田選手がスピードアップ。丸山選手の正確なロングボールから一気に裏を取り、これもまた正確なクロスボールから橋本選手に左足で合わされゴールネットを揺らされてしまう。

しかし、気落ちすることなく戦う山雅が迎えた40分。

喜山選手からハーフライン付近にいた岩上選手がボールを受けると、前田選手に正確な浮き球のスルーパスを通す。惜しくもトラップできなかったが、止められればビックチャンスという場面を作りだした。

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このまま0-1で前半終了か、と思われたロスタイム。

ラフなロングボールが山雅のディフェンスラインの裏に蹴られると大久保選手がカバーに入る。しかし、猛然とボールを追いかけてきた武藤選手にあたりボールを奪うと、そのままドリブルでペナルティエリア内へ。

そのまま対応した大久保選手の手にボールがあたりPKを取られてしまう。

これを冷静に武藤選手に決められてしまう。

そのまま前半終了。

後半、打開を図りたい山雅は55分に一枚目のカードを切る。「前への推進力を出したかった」と言う反町監督は、岩沼選手に替えて飯尾竜太朗選手を投入。

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この選手交代で流れは一気に山雅へと傾いた。

58分にはCKのこぼれ球を拾って岩間選手がミドルシュートでゴールを襲うと、63分。岩上選手からのロングスローをオビナが東京のGK権田相手選手に競り合うと、こぼれ球に反応した大久保選手が美しいオーバーヘッドキック。

ボールは東京ゴールに吸い込まれた。大久保選手の執念のゴールで1点差。

この1点で山雅サポーターのボルテージは一段と上がり、攻めたてる山雅。

68分にはCKをショートで始め飯尾からのクロスを大久保選手がボレーシュート。これをディフェンダーに防がれると、こぼれ球を岩上選手がヘディングでゴール前に入れる。そして、オビナ選手がヘディングシュート。惜しくもGK権田選手にキャッチされたが、波状攻撃で東京のゴールを脅かす。

更に81分には、田中選手のクロスのこぼれ球をオビナ選手が落とし、岩上選手がミドルシュート。GKが弾いた所を途中投入された阿部選手が詰める!…が、惜しくも届かず。85分にはDFの坂井選手を投入、飯田選手をFWにしパワープレーでゴールを狙わんと遮二無二突き進む。

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試合終了間際の88分、そしてロスタイムにもこぼれ球を飯尾選手がミドルシュートで決定機を作るが決められず無情のタイムアップを迎えた。

「最後まで良くやったが、一瞬のスキを突く力がわれわれには足りないという現実を見せられた試合」と反町監督が試合後に語ったが、逆にいえば東京が一瞬のスキを突く力を見せつけた試合でもある。もっと言えば、山雅が「一瞬のスキを見せてしまった」とも言えるだろう。

しかし、後半にはチャンスもかなりあったし、アルウィンに詰めかけたサポーターの皆さんの後押しするボルテージは凄まじいものがあった!

選手が挨拶する際も「松本山雅」コールが鳴り響いたアルウィン。

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これで3連敗となってしまった訳だが「こんな時こそ後押しするぞ!」と言うサポーターのアツい気持ちが、スタンドで観戦していた僕にも十分に伝わってきました。もちろん、選手にも伝わっていると思います。

苦しい時こそ『ONE SOUL』の旗のもと、共に戦い続けましょう!!

飯尾和也

文章:コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表