【試合解説】第1節 磐田戦 ※無料配信

いよいよ山雅のJ1での戦いが開幕した。今年もコラソン解説では技術、戦術、メンタルを中心に選手目線で試合を振り返り、よりサッカーを知り、山雅を応援して頂けるようさまざまな角度から分析していきたいと思う。

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さて、皆さんはどんな気持ちで開幕を迎えただろうか?J1を初めて戦った2015年は何もわからずワクワク感がほとんどを占めていたと思うが、J1のレベルを見せつけられて降格を味わい、2度目となる今回のチャレンジ。ワクワク感の半面、「この3年で山雅は強くなっているのか」「J1で戦えるのか?」という不安や恐怖感を持って迎えた人もいたのではないだろうか。

岩上のFK 計算し尽くされた一撃

だがいざ試合が始まると、そんな不安は吹き飛んだのではないだろうか。ピッチに立った11人はとても落ち着いて試合に入れていたし、堂々とチャレンジする振る舞いは頼もしさすら覚えた。そして何と言っても選手とサポーターを勇気づけたのが、8分の岩上のFKだった。

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8分、岩上が意表を突くFKで先制

永井がファウルを受けて獲得した、ペナルティーエリア近く右からのFK。岩上は日頃からFKではGKと駆け引きを大事にしていると語っているため、岩上がFKを蹴るときに僕は相手GKの目線に立って岩上と駆け引きをする。この場面であればまず、クロスなのか、シュートなのか?シュートならば右か左か?壁の上か下か?迷う要素はいくらでもある。

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角度的にはクロスを合わせることも十分考えられたが、試合も始まった立ち上がりというのもあり景気づけに直接ゴールを狙う可能性は高い。そして蹴る前に中の選手に目線を送って指示も出す振る舞いからクロスを出す「フリ」をしていると感じて「これは狙うぞ!」と思っていた。

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しかし、僕の予想が当たったのはここまで。左右どちらの上も蹴りやすい角度だなぁ…と思っていたが、岩上が選択したのはまさかの速いグラウンダーのボールだった。しかもボールとキーパーの延長線上の壁の中に服部と藤田が入って磐田GKカミンスキーの視界を邪魔していたため、反応が遅れる状態をつくり出していた。

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そして、試合前に水を大量に撒いていたピッチコンディションも頭の中にあったと思う。バウンドさせることでさらにボールが滑ってスピードが増す。計算し尽くされた軌道のボールに、カミンスキーはわずかに間に合わなかった。J1では「スーパー」なキッカーが居並ぶ中でも特に「超スーパー」な磐田の中村俊輔の前で見せた岩上の駆け引きと、「キック技術は今年も山雅の武器となること間違いなし!」と証明してくれたゴールに大興奮だった。

先制後の試合運び 3年間の成果見せる

先制した事でジュビロは目の色を変え「本気」で得点を奪いに来る。ここで目についたのが取ったボールを大事にする意識だ。2015年は取ったボールを相手に渡してしまい防戦一方になり攻められる回数も多く、粘って守備をしていても最後に決壊してしまうことが多かった。取ったボールを動かしてなおかつ相手ゴールを奪いに行くという、この3年間地道に取り組んできた成果は開幕戦で多く見ることができた。

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14分、エドゥアルドを起点にシュートまで持ち込む

その1つが14分。GK守田からエドゥアルドにボールが出ると、セルジーニョ、パウリーニョのパス交換から背後を取った前田にスルーパス。完全に抜け出し、サポートに入った高橋がフリーでシュートを放ち決定機をつくり出した。この場面以外にもボールを動かしながら縦パスを入れて背後を取る形からチャンスを演出。失点場面ではJ1のクオリティを見せつけられた形にはなったが、自分たちがボールを動かせる時間帯もあったため、試合終盤でも山雅の選手には良い意味での体力的な「余力」も感じることができた。

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もちろん勝ち点3を奪えず悔しい思いもあるし、冒頭でも書いたように選手にも多少なりともJ1で自分のプレーが通用するのか不安もあったと思うが、新戦力も含めて自信をつけるには十分とも言える内容だった。3バックで先発した服部とエドゥアルドは全体的にはとても冷静に対応していたし、橋内が常に試合中声をかけてリードし連係面の不安を見せず安定感があった。

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失点場面はクロス対応の課題は残したが、個人として修正できる部分だろう。左ウイングバックの高橋は躍動感があり、ドリブルでも仕掛けられるし際どいクロスも上げていた。今後が期待できるプレーを見せてくれた。そしてJ1初挑戦の前田は自慢のスピードで何度も好機をつくり出していた。ほとんどの選手が手応えと自信をつかむ内容と結果だったと思う。

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もちろん1試合で全てを語ることはできないし、コンスタントに続けていくことはとても難しい。ただ「同点にされてからもブレずに自分たちのサッカーをやり続けてチャンスも多かった。全体的に向こうよりも決定機は多く、いい光というか兆しが見えている。修正すべき点を修正すれば十分に生き残っていける」というエドゥアルドの言葉通り、次節以降もこの戦いを続けていくことで自信を確信に変えて行くことができるだろう。

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構成/大枝 令

飯尾和也

文章:コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表