【イベントレポート】布啓一郎監督 就任会見(抜粋)※無料配信

――反町監督が8年間築いてきたものを受け継ぐのは、ご自身にとっても大きなチャレンジではないでしょうか?

我々の世界ではオファーをいただけることは大変幸せなことで、反町監督という偉大な監督の後を山雅さんが私に任せようとオファーをしてくれたことに感謝しています。反町監督はよく知っている親しい監督さんなんですが、その監督さんの後に私を指名していただいて「反町監督の後だからこそやらせていただきたい」と思ったのも事実です。

山雅さんはこれだけ大きくなって、J1まで行ったクラブです。私も37、8年間のコーチ経験がありますので、ステップアップに少しでも貢献できるように自分の全力を尽くし、今までの経験の全てを懸けてしっかりやっていきたいと思います。私にとっても一つのチャレンジの機会で、山雅さんには非常に感謝しています。

――反町監督とも親しいということですが、今回の件で話はされましたか?

何日か前に1回「後を引き継がせてもらいます」という電話をさせてもらって、その中で10分ほどいろいろと話をしました。私の方からは「ぜひいろんな多くのアドバイスをもらいたい」という話をさせてもらって、反町監督は、彼は遠慮深いというか、「俺なんかが出たらかえって面倒くさくなるでしょ」と言っていましたが(笑)、逆に「またいろいろ話をしましょう」と言ってくれたので、そういう機会もあればありがたいと思っています。

――育成で実績がおありになるという中で、「育成」とは何でしょうか?

育成とは…非常に難しい質問ですね。育成というのは簡単に言えば「どう伸ばしていくか」ということです。伸ばし方について魔法の練習や魔法の言葉というものはなくて、その選手に合ったトレーニングや声かけ、目標設定をしてあげること。選手も千差万別ですから、同じ言葉をかけても響く選手もいれば響かない選手もいるわけです。

そういう部分を私の経験値の中で、37、8年、当時の日本リーグには行かないですぐ教員になったので、いわゆる当時の同級生がみんな日本リーグで活躍していて非常に羨ましいなと思った部分はあったんですが、逆に自分の同期生よりも早くコーチになってそういう経験をたくさん積んだというのが私のストロングだと思っています。自分で言うのもなんですが人よりも引き出しが多いかもしれないので、特に若い選手たちにはいろんなアプローチをして、その選手たちを少しでも高いグレードまで引っ張り上げることができればと思っています。

――選手のポテンシャルを引き出す上で大切にしていることは何ですか?

これも非常に難しい質問です。やっぱり私は、その選手に対する声かけやトレーニングの目標設定について、どういうふうにやることで選手が食い付いてくれるかどうかです。そこの道について、うまく指針を示してあげることが大切なのかなと思っています。例えばAという方法が全ての選手に当てはまることはないので、選手の資質やメンタル、性格も含めてアプローチを多少変えていきながら、その選手の最大限の力を出させてあげることが我々の仕事だと思っています。なかなか「こうだ」と言えないのが申し訳ないのですが、そういうことではないかなと思っています。

――結果と育成の両立をするに当たり、若手の選手起用についてはどう判断しますか?

総合的にチームの状況だとか選手の状況だとかを踏まえて決断していくところだと考えています。J2は42節のほかにカップ戦もあり、なかなかこれらの全部に出る選手はいないと思います。その中で必ず例えばコアで出ていた選手がケガか何かで出られなくなったときに、次に出る選手がどういう活躍をするのかはチーム、クラブの総合力です。そこを高められるかという部分では、日頃出ていない選手にも十分にチャンスはたくさん出てきます。そのチャンスをものにするために日々のところをどうやっていくかです。

ただ、「日常でやらずに試合だけ僕はやります」というのは、多分あまりうまくいきません。日常から選手をしっかり見させてもらって評価をして、例えばちょっと悔しい思いをしてエネルギーを溜め込んでいる選手だったら思い切って若さをぶつけて出すことも出てくるでしょう。そういうことを見極めさせていただきながら、その都度そのゲームごとに一番いい状態をチームとして作っていきたいと思っています。

――山雅だけに限らず、育成の課題について考えていることはありますか?

日本の育成に関わる指導者の方々が非常に努力していい指導をして、選手層が厚くなってきたことは事実だと思います。じゃあヨーロッパや南米と完全に差がなくなったかというとそうじゃないのもまた事実で、そこのところは何なのかと言ったとき、簡単に言えば「止める、蹴る、運ぶ」の技術を上げなければいけないとか、ボールを蹴る前の準備を含めた判断の質を上げていかなければいけないとか…いわゆる個人戦術の部分はさらにもっと上げなければいけないというのはあります。

それプラス、やっぱりサッカー…というか僕は「フットボール」という言い方が好きなんですけれども、フットボールは最終的に選手がピッチの中で判断して決断するスポーツです。そういう中ではもちろんベンチの指示もありますが、一人ひとりが自立した選手になること。これはプロになってから「自立しなさい」と言ってもムリなことです。やっぱり育成年代から自分で考えて自分のプレーに責任を負えるような選手を育成していくことが大事だと思います。そういう部分では日本のサッカーに限らず教育的なところかもしれませんが、「言われたところを守っていればいいんだ」という部分がありますので、そうじゃなくて、それを打ち破ってくるような選手が多くなってくればさらに日本のフットボールは発展するのではないかと思っています。

――J2で監督は初めてですが、そこに向かう気持ちはいかがでしょうか?

今おっしゃられたように監督としては初めての経験になります。コーチとしては岡山で3年間やらせてもらって、このカテゴリの難しさは正直、痛感しています。ただ、このカテゴリに限らずJ1〜J3全てのカテゴリに言えることですが、これは喜ぶことなんですが日本サッカー全体の層が厚くなったということです。まさに育成の話から入っていますけど、育成に関わる指導者の方たちの努力の中から、非常に若くてレベルのある選手の数が多くなっています。それによって各カテゴリでリーグが拮抗しているのが現実だと思います。

J2はチーム数が多いし長丁場であり、連戦もあるとか、いろんなことを考えたときに非常に難しいリーグです。そこを勝ち抜いていくには技術、戦術はもちろん、それにプラスアルファするフィジカル、メンタル。それらを総合的に兼ね備えたチームでないと勝ち抜けないだろうと認識しています。そういう部分で全てのところにアプローチしてレベルアップを図っていく、1試合1試合に全力で戦う、それを繰り返すということを頑張ってやっていかなければいけないと思っています。

――今季は得点力が課題でしたが、その解消についてはどう考えていますか?

結果的に山雅さんの得点が少なかったのは事実だと思いますが、守備も攻撃もそうですが攻撃だから攻撃陣だけ替えればいいというわけではなくて、フットボールは全て全員なんですよね。攻守に関わり続けることを全員のタスクとして、反町監督も全く同じことをやっていたと思いますが、それをやっぱり継続してやっていきたいし、その中で技術と判断の質をいかに高めていけるか。チャンスでゴール前にどれだけパワーを持って入っていけるか、その人数をどれだけ増やしていけるか。そういうところになってくると思います。来年、チームが始動してから選手に要求して高めていく作業をしたいと思っています。

――攻守にアグレッシブなサッカーを目指す中で、新たに加えたいご自身の色はありますか?

反町監督も要求はしていたと思いますが、やっぱり頭も体も休めないことです。頭が休んでしまうと多分体も止まってしまいます。あと、サッカーはボールのないところの準備が結構な比重を占めます。どうしてもオンザボールのところをいろんな方は見ますが、ボールがないところ(オフザボール)で何をしているかが非常に重要な競技なので、そういうところを選手たちに高めていけるようにアプローチしていきたいと思っています。

――松本という街についての印象はいかがですか?

松本にしょっちゅう来ていたわけではないですけど、やっぱり山と景色がきれいで空気が澄んでいますね。いわゆるきれいな街だというのが一番の印象です。

――松本で暮らすにあたり、楽しみにしていることはありますか?

私もそこそこな歳になっているので、温泉に入るのがすごく好きです。近くに温泉がたくさんあるので行ってみたいです。あと、私は蕎麦が好きなんですね。信州は本当に蕎麦の美味しいところなので、美味しいお蕎麦を食べたいなと思っています(笑)。

構成/大枝 令