【試合後コメント】名波 浩監督 県選手権決勝 長野戦 ※無料配信

――まずは試合の総括を。

来週も同じ対戦相手なので、戦術的なことは省略したいと思います。僕自身はダービーへの想いが人一倍強くて、静岡ダービーや大阪ダービーを経験したのもそうですし、(信州ダービーは)日韓戦という位置付けのもと、「国と国との戦い」だということを口酸っぱく毎日のように伝えて送り出しました。試合前に選手たちに伝えたのは、34歳だろうが17歳だろうが、ピッチに立つ以上は物おじせずに言い合う権利があるし、勝つ努力をしなければいけないと。それから一体感を求めていく中では、リーダーシップを取れる選手がコミュニケーションを取って、チームを引っ張っていこうと。そういったものが徐々に見え始めたので、225分無失点が続いていたと思います。ゼロの時間を長くすればするほど、相手に隙とか穴が出てくると伝えて試合に入りました。

ゲーム自体はセカンドボールの拾い合いで、球際や対人のところで若干相手に分があって、こぼれ球を拾われて危険なエリアの周りまでボールを運ばれました。ただ、被シュートがいくつかと言えば、シュートシーンまでは行かれていなかったので、未然に防ぐ意識があったと思います。菊井と(田中)想来を入れるのは60分くらいからと決めていましたが、70分まで交代を我慢をしようと思って、アップさせていました。菊井は攻撃のクオリティーを変えてくれるだろうし、想来は(相手が)どんなタイプの選手かわかっていない中で、シュートエリアでどんどん決断していきなさいと伝えました。(得点シーンは)安東のハイプレスからボールを奪って、菊井のシンプルなプレー、安東のラストパスと良い突破ができたと思いますし、想来も落ち着いて決めてくれました。

長野県の決勝を勝ち上がって本大会に出場できるのというのは、個人的にももちろんですが、1試合でも多いほうがクラブ力は間違いなく上がります。それはまず一つ良かったですし、高校生のアカデミーの選手が点を決めて勝ち上がったということも素晴らしいです。それから信州ダービーが2週続くという中で、最初の試合を取れたというのはチームにとって自信になったと思います。選手に伝えたのは、勝って来週は気分よく長野に乗り込もうということ。そして最後に、横断幕にあるように「俺らは常に挑戦者」ということを忘れずに、上から目線にならずに謙虚さを持っていこうということで解散しました。

――田中想来選手をメンバーに入れた意図と狙いは。

去年の9月に練習試合に連れて行った時から、トップチームに少しずつ顔を出させるようにしていました。コロナがなければ和歌山や鹿児島のキャンプにも参加させる予定でした。プリンスリーグも何試合か観ましたが良かったですし、練習に合流しても物おじせずにやれていたと思います。彼は耳が良いので、こちらの言ったことに対して100%応えようとするメンタリティー。それから自分の良さを知ってくださいと、自分のクオリティーを出そうとするメンタリティー。本当にポジティブな選手だと感じていたので、チャンスがあればという中で、延長を含めて40分くらいは出れると思っていて、2、3回はチャンスが来るのではないかという逆算のもと73分に入れました。期待以上の結果を出してくれたと思います。

――後半は安東選手や住田選手のボールに関わる回数が増えたと思いますが。

ボールサイドにもっと顔を出せ、良い距離感を保ってお互いに出し入れできるようなところに立ちなさいという中では、前半はボールに触れていなくて右サイドに重かったと感じました。ただ、右サイドにボールが来た時は、安東と(吉田)将也とでダイナミックにクロスオーバーを何回も繰り返して、突破の形、厚みが出ていたと思います。それでも、中央でプレーするエリアはもう少し増やさないといけないです。佐藤、菊井、住田、(山本)龍平の4人には、一昨日のセレッソ対磐田の清武(弘嗣)だけを見ておくように言いました。その中できょうのゲームを迎えたので、少しはイメージがあったのではないかと。ただ、奪った後の質が悪かったり、選択が後ろで良いのに無理に前に運んだりスピードを上げすぎたりして、ロストしてしまったシーンがありました。もっとシンプルに、もっとボールをたくさん触るということ。周りのクオリティーは別として、そういう努力ができるのではないという中で、彼らに宿題を与えました。またそういう目標を持ってやってほしいです。

――ベテランの村山選手、橋内選手、安田選手が試合を引き締めていましたが。

球際の駆け引きは3人とも素晴らしかったと思います。村山、橋内がセンターラインにいるので、しっかりと選手たちに発信力を持って鼓舞してくれました。安田もボールワークのところではほぼミスがなくて、前半に少しラインのギャップができましたが、何度もピッチ脇から言ったことによって修正してくれました。チームに欠かせないキャラクターたちだと思うので、今後もプレーする機会がなかろうが、ベンチにいようが、100%以上のものを出してくれると思います。

――稲福選手も含めて、アカデミーで育った選手が信州ダービーで躍動しましたが。

個人的には静岡県で生まれて磐田に入ったので、地元意識というのは非常に強い部分がある選手でした。このチームにそういう一個の柱というか、アカデミーが柱にあったとしてもトップに繋がらない部分があったと思います。そこの筋を通したいという意味では、小松、稲福、神田にしても、本人たちもそういう責任感を持ってやってくれています。今日は想来がトップに絡みましたが、1カ月くらい前にお母さんとも話した時にも、すごくありがたいという会話をしてくれました。ただ、両親を喜ばせるために呼んでいるわけではなくて、アカデミーの中でトップに関われそうな能力のある選手は、積極的に呼ぶというのが僕の考え方でもあります。我々はそれが当たり前になっていかないといけないと常に感じていますし、危機感として持っています。あのように活躍すると、アカデミーのスカウトにまた火がついたりすると思いますし、信州エリアで山雅で活躍したいという選手が出てくるのではないかと。高校生でもチャンスがもらえるとなれば、中学生、小学生の鼻息も荒くなるかもしれないです。そういう流れが当たり前のように出来上がらなければいけないと思います。

――スタジアムの空気はどのように感じましたか?

8,000人以上が入ってくれて、そういう熱量を感じました。パルセイロもダービーという意識があったと思うので、球際が激しかったり、よりゴール前に飛び込んでいくパワーも持っていたりして、危険なシーンが何回かありました。お互いに信州のトップカテゴリーにいるチームなので、やはり火花は飛ぶなと十分に感じました。そういうダービーの意識を持たせる中で、225分という無失点にあと90分足されて、315分になりました。これこそが我々のチーム力だと思いますし、また続けていくことが新たな目標になります。それが宿敵パルセイロが相手ということで、よりモチベーションが高くなると思います。

――長野の脅威に感じた部分は?

パワー、球際のところは非常に強いですし、空中戦で(榎本)樹はJ2で7割くらい勝っていたところが、今日は2割5分から3割くらいだったと思います。ヘディングを中心としたエアバトルは相当強いと感じました。それは我々のセットプレーの守備でも脅威を感じると思うので、そういうシーンを与えないというのも来週の課題になると思います。