【試合後コメント】名波 浩監督 第16節 富山戦 ※無料配信

――まずは試合の総括をお願いします。

ゲームの入りで相手の背後を狙うというところを突き詰めた中では、2トップが背後に動き出していたと思いますし、突破のシーンが非常に多く生まれたと思います。特に(横山)歩夢は前後半を通してボールの収まりが良くて、仕掛けのタイミング、駆け引きといったところで完全に相手を上回って、アタッキングサードで主導権を握れていました。

ゲーム全体を通すと3バックでスタートして、18分くらいにパウリーニョが「4バックはどうか」と言いに来て、もう少し我慢しようという中で我々が先制しました。アルトゥールシルバと川西(翔太)が落ちたときに、誰が捕まえるかというところで両ボランチが「行かない」という選択をしました。それが結果的には3バック、落ちたシャドーもしくはトップエリアにいる選手に対して誰も行かないという選択肢。中央エリアは3バックとダブルボランチの5枚に対して1枚というようなシチュエーションが少し生まれてきていて、だいぶ重くなったと思ったので4バックに早めに切り替えました。

今まで4バックにしたときは80%以上が攻撃的な意味合いだったと思いますが、きょうは守備のハマりというところでやりました。(前)貴之と下川のところでシャドーがサイドに張って、相手のウイングバックが出てくると2対1というシチュエーションを作られがちでしたが、そこも遅らせながらサイドに出させるようなシチュエーションをたくさん作れたので、大きく破綻はしなかったです。深いエリアまで入られてマイナスのクロスが少し怖かったですが、そこは前半の左サイドに深く入られたところの1本くらいだったので、ゲームを通して十分にケアできたと思います。

このゲームのターニングポイントは小松のボレーだと思うので、あれが決まっていればもう少し楽なゲームになったと思います。練習でいつもやっている形で「上は(可能性が)ゼロだよ」というコーチングスタッフの掛け声、仲間の掛け声がある中で、上に外したのは非常に残念だったと思います。最後は橋内を中心に、しんどいセットプレーを何回かしのぎ切ってくれたと思いますし、1-0で勝ち続けてきたチームに1-0で勝つというのは痛快です。自分が監督に就任したとき(2014年)のJ1昇格プレーオフ(磐田-山形)で、山形のGKのヘディングシュートが生まれて敗れたゲーム。あの石さん(石﨑信弘監督)にリベンジできたのも個人的には良かったです。

――先制点はデザインされたセットプレーからでした。ここ最近はセットプレーでの得点がなく、守備が堅い相手に対して一発でチャンスを生かした意味合いについては。

セットプレーの守備は私が4割くらい請け負っていますが、攻撃はコーチングスタッフが9割やっています。手を替え品を替えという意味では、いろいろとアイデアを駆使してやってくれていると思います。いろいろなリーグ、選手、海外も含めて特徴を見て、対戦相手の守備の立ち位置を見ていろいろとデザインしてくれています。実れば素晴らしいですし、実らなければスタッフの責任みたいなところもあると思うので、みんなギリギリの世界で戦っていると思います。

――後半は富山が選手交代をして流れを変えようとしている中でも、ビルドアップゾーンからしっかりと前進していく姿が見られました。練習の成果がピッチの中でも出てきているのではないでしょうか?

相手が1-0のゲームは、だいたい先攻するのが後半の15分くらいまで。それがまったりとした時間を作ってゲームをコントロールしている感じでした。0-0だろうが我々が先制しようが、テンポを早くボールを動かして休むというのは徹底しようとフリーズゲームでやりましたし、紅白戦でも中に立った私も選手自身もそういう声かけがありました。特に(浜崎)拓磨のところで良いリズムができましたし、出し入れの回数が多かったと思います。ボランチが45分で40回以上触ったのも久しぶりだったので、ゲームを作る、相手をはぐらかすかのようなボールの距離を変えるプレーは、疲れが出てくるまでは非常に良かったと思います。

――相手が飛び出してくるのに対して、大野選手のトラック&リリースがほぼ完璧だったように思います。それによって裏への怖いボールの配球がほとんどなかったですが、その点についてはいかがですか?

きょうのリリースはほとんど声をかけることもなく、橋内が入ってからラインコントロールをしようという中でも橋内が私より先に声をかけてくれていたので、大きな破綻はなかったです。相手がゴールに直結するような直線的な動きが多かったので、(大野)佑哉としてもリリースのタイミングはそんなに難しくなかったのではないかと。少し膨らんだり、自分の視野から消えたような動きをされたときに、周りの選手を抱き込まないといけないようなシーンが増えたと思いますが、そこが少なかったのは救いでした。

ただ失点数が減ってきている中で、最終ラインが我慢をしないといけない時間とか、1点を取った後に相手がパワーを持って出てくる時間とか、後ろの責任が大きくなるものが増えてくると思います。先ほど橋内とも話しましたが、昇格うんぬんが決まるようなゲームになってくると、ワンミスが命取りというのは「十分に理解しています」と橋内が言ってくれていました。一つのゲームの中で時間とともにそういうワンシーン、ワンプレーが増えてきてしまうのではないかと。なぜなら自分たちが後ろに重くなって、相手がパワーを持つというシーンがリードしていると出てくるので、そこのケアは今後も選手・スタッフ一同で徹底してやりたいと思います。

――初めての3連勝を達成して、前半戦は残り1試合となりました。次節の福島戦に向けてはいかがですか?

8戦ホームで8戦アウェイという中で、2桁勝てたのはチームとして自信になると思います。ただ、今季の上位のレベルはきょうの藤枝も含めて非常に高いのではないかと思っています。10勝に満足せずに、勝てるときに勝っておこうと。4連勝、5連勝を目指したいですし、他のクラブにできていることが我々にできないわけがないという根拠のない自信を持って、選手を前向きにさせたいと思います。