【試合後コメント】名波 浩監督 第29節 岐阜戦 ※無料配信

――まずは試合の総括をお願いします。

ここからはトーナメント。64クラブが参加して、しかも1回戦から同レベルの対戦相手が続いていく。1回戦を突破してベスト32、16、8、4、決勝と勝ち続けようと。「意識の共有」というよりも、「切実な願望」というほうが強いと思います。その気持ちを選手たちはしっかりと、ひっくり返してくれるゲームを展開して応えてくれたと思います。2-1になってお互いバテた中で、カウンター合戦のようなラフなボールの応酬になったときに、「これぞ松本山雅」というように最後に体でしのぎ切ったり、(ペナルティ)ボックス中で人数をかけて守り切ったりということを体現してくれたゲームだったと思います。

前節までの3試合で勝てなくて、フラストレーションはもちろん溜まりました。じゃあ上位陣はどうかと言えば相変わらず勝ち続けていて、少し離れてしまった中で非常に難しいメンタルでした。しかし選手たちはしっかりと6連勝に向けて準備してくれたと思いますし、先に取られて難しいゲーム状況の中で後半頭に同点ゴールが決まったことも大きかったですし、ひっくり返した後の時間の使い方も非常に良かったのではないかと思います。

次の今治戦は移動が大変でまたリズムが変わる節になります。上位争いの中で今治はきょう負けましたが、勝ち続けてきたチームなので非常に難しいゲームになると思います。死にもの狂いで3ポイントを取って、信州ダービーへのボルテージを上げてまた松本に戻ってきたいです。

――田中パウロ選手がラッキーボーイや起爆剤としての役割を果たしました。彼を後半から投入した意図と、2得点に対する評価を教えてください。

入れた意図で言うと、通常はハーフタイムで交代を告げるときに、三浦(文丈)コーチにベンチからロッカーに帰るまでの道中で伝えています。バランス自体は決して悪くなかったですし、相手に十分な圧力をかけられた攻撃を連続して繰り広げられたわけでもなかったので、どういうタイミングでどういう交代が一番ベストかを2、3分考えていました。そこからルカオとともに投入することを決めました。ホワイトボードの一番上に「前選択の中で判断と決断力を大事にしよう」と書いていたので、自分で書いたものに対して自分も応えようと思って、思い切って使いました。

パウロに関しては、(チームとして)前半はミドルシュートが打てたエリアでも打たなかったシーンが何回かあったので、向かい風でしたがよく振ってくれたと思います。(2点目は)常田のクロスから難しい体勢でもしっかりと利き足の面を作るという意味では、練習でいろいろなパターンをやっていてそういうイメージはあったでしょうし、非常にいい活躍をしてくれました。前節は彼の中でおいしいシーンを外してしまって、その反省も十分にあったと思います。年間を通したらこれでチャラとは言えませんが、ここからまた残り5試合は十分に力を貸してくれると思います。

それから言わないといけないのは、篠原の18カ月ぶりのリーグ戦ということ。プラスアルファを十分にもたらしてくれたと思います。宮部の攻撃を促してくれ、同サイドでほとんど崩されることなく、十分に安定感をもってやってくれたのではないかと。起爆剤と言えばパウロよりも篠原のことを考えていて、後ろからのコーチング、それからチームを鼓舞する叱咤激励も含めて素晴らしい存在感だったと思います。

――得点シーンではボールホルダーに対してインナーラップやオーバーラップをする選手がいて、チームとしてやろうとしていることができたからこそ得点に繋がった印象があります。

私自身はこのチームのこのキャラクターたちが、シュート回数を増やして相手の嫌がるエリアにボールを運ぶためのサッカーを模索して今の形になってきたと思います。きょうはたまたまそこから2ゴールが生まれたかもしれないですが、愚直にそれを選手たちがやってくれていると思います。相手がもしそこをケアしたとしても、その中でも数字が出てくればもっと自信がもてると思います。残り5節という中で時間はかかったかもしれないですが、それも含めて「まだまだ我々は死んでいない」というのも数字として見せられたと思います。

あとは最後終わった後に、もっとボールワークを落ち着いてやれるという意味では、菊井がポカポカと蹴ってしまい自分たちのストロングが出せなかったと思います。へニキなき中盤のエリアはまあまあフリーエリアだったと思うので、落ち着いてボールワークをしてもらって、相手が30〜50メートル帰陣するような形を、ハイプレッシャーでルカオや(榎本)樹が奪った形でなくても生み出さなければいけないなと。そこはまた一つ課題になったのではないかと思います。

――まずは(冒頭で話されたトーナメントの)1回戦を突破して、残り5試合はどのように位置付けて臨んでいきますか?

もう全勝しかないですし、癖のあるクラブが多い中で、上位争いをしているクラブとも戦っていかないといけない難しさはあります。ましてや上位クラブが勝ってしまったら、我々が5連勝しようが無力になってしまいます。ただ勝ち点72というのは、具体的な数字として選手、サポーター、スポンサーの方々が目標にして良いと思います。本当に難しいゲーム、難しい時間があるかもしれないですが、しぶといゲームをして心を折れずに最後の11月20日まで戦いたいです。