【キャンプレポート】7-0大勝 中盤のクオリティがピッチに波及 ※一部無料

第1次串本キャンプ第10日の24日、桃山学院大とのトレーニングマッチ(45分×3本)が和歌山県串本町のサン・ナンタンランドで行われた。2-0、2-0、3-0の合計7-0で、大量得点かつ無失点での大勝だった。高いクオリティを発揮する選手が攻守に存在感を示してチームを牽引。伸びざかりの選手たちにも大きな刺激を与え、好パフォーマンスを波及させていた。

メンバーはシャッフルしたといい、フィールドプレーヤー1人あたりの出場時間は45〜70分。コンディション不良の4人を除く26人がピッチに立った。この日は本土最南端の地も寒気に包まれ、キックオフ時点での気温は4.0度、風速10m。輪をかけて相手の桃山学院大が前線から激しくプレスをかけてくるスタイルでもあり、前進に苦心した。

それでも1本目の9分に先制。菊井の右CKに野々村がヘッドで合わせてゴールを奪った。セットプレーはキャンプ初日から通算して5回もコマを費やしており、成果の一端が出た。CKに至るまでの流れも理想的。山本康裕の縦パスがスイッチとなり、山本龍平のクロスも含めて4本でテンポよく繫いで獲得した。

しかし20分過ぎからピンチの連続。最終ラインからのビルドアップをあっけなく奪われるシーンが2回発生し、ともにGK神田のビッグセーブなどで難を逃れた。22分にはサイドからカットインしてくる相手FWに逆を取られてシュート。結果的に枠を外れたものの、冷や汗をかかされた。

苦しい時間帯に存在感を示したのが菊井だった。今季から背番号10を背負うアタッカー。32分、高い位置でするりと奪ってショートカウンターを発動させる。左サイドで裏に抜けた高井がボールを引き出し、冷静にネットを揺らした。以降も40〜45分の間にショートカウンターから立て続けに好機を演出。欲を言えばもう1〜2点取れていても不思議ではなかった。

2本目は25分にゴールが生まれた。攻撃をやり直して高橋が住田へ預けてからスピードアップ。ワンタッチも含めてスピーディーに抜け出し、最後は浅川の左クロスに村越が合わせた。直後にメンバーをほとんど入れ替えて仕切り直し。35分には右サイドを抜け出した安藤がそのままゴールを陥れた。

ただ、特にメンバーが入れ替わって以降は課題も。守備はプレッシングのスイッチ共有ができず機能しなかったり、中に刺し込まれたクサビをつぶせなかったり。巻き戻すと11分にはビルドアップのミスから絶体絶命のピンチを迎えており、ゴールカバーで難を逃れたシーンもあった。

3本目は結果的に若手主体となる中、安永らが牽引した。19分に冷静にゴールへ流し込んでリードを広げると、28分にはドリブルで敵陣深くまで持ち込んで安藤に展開。折り返しに新井が詰めて6点目とした。さらに4分後は國分が高い位置から奪って新井に預け、最後は前田が仕上げた。

攻守に収穫と課題がそれぞれ出た中で、山本康裕や高橋ら新加入選手の存在感が際立った。山本は的確なサポートと高精度のワンタッチパスで攻撃にリズムを生み、時にはパスアンドゴーで潜り込む。安定したプレーに触発されたように、菊井や住田ら周囲の選手たちものびのびと躍動。ワンタッチを多用した崩しも何度となく繰り出した。

高橋は2本目に橋内とセンターバックを組んで出場した。未然にピンチを防いだほか、ビルドアップの起点としても機能。ビルドアップのミスからGK村山もかわされた11分のシーンは合計135分間で最大級に失点リスクの高い瞬間だったが、冷静なゴールカバーで跳ね返した。

このほか高井や馬渡など、各ポジションに手本となる選手が加わった今季。山本康裕が磐田時代に遠藤保仁氏(現G大阪コーチ)から多くを学んでサッカー観が変わったように、同じピッチに立って吸収すれば成長度も飛躍的に高まる。実際に菊井も「今年は生かされる選手にもなりたい。康裕くんがいるといつも以上に生かされやすい」と声を弾ませていた。

勝利と成長に飢えた伸びざかりの選手たちは、新たなベテラン勢から実際に何を学んでいるのか。
霜田監督と昨季の主力2人(常田、菊井)のコメントは以下の通り。


霜田 正浩監督

――今日のトレーニングマッチについて振り返ってください。

やろうとしたことへのチャレンジについては、そこでミスが起きてもあまり問題がありません。ただ、こういう試合でチャレンジしないのは一番良くありません。3本目はそういうところが多かったと思います。1本目は意思の疎通が合わなかったりパスが少しズレたりすることはありましたけど、全体的にはみんなが同じ絵を描いていました。誰が出ても同じ絵を描くのがこのキャンプの目的です。相手との力関係などはありますが、同じ絵を描きながら点を取りにいく。相手からボールを奪う。ゴールを守る。相手は関係なく、自分たちに矢印を向けてやってほしいです。

――結果的には無失点でしたが、危ないシーンもありました。

ビルドアップのミスとか、ディフェンスラインでボールを失ったところは、本人が一番わかっていると思います。そこはあえて言わないですけど、ミスが起きた後にゴール前でクリアをするとか、GKが防ぐとか。誰かのエラーを誰かがカバーすることで、無失点に抑えられたのは良かったです。実際の試合でもそういうシーンは出てくるし、ミスをしないことはないので、ミスをした後に誰がカバーするのか。それが今日はできていたので良かったと思います。

風の影響を受けないサッカーをやろうとずっと言っています。もちろんミスは起きますが、やってはいけないミスは個人が反省してくれればいいです。

――1本目は相手のプレッシングに対して、ビルドアップでハマるシーンもありました。

立ち位置、イメージのなさ、あるいは組み合わせ。特に右サイドはあまりうまくいきませんでした。ただ、今の段階ではそういうことが起きたほうがいいです。良い試合ばかりやっていると、うまくいかないときに解決策を見つけられなかったり、うまくいかないまま終わってしまうことがあります。今はうまくいかないことがたくさんあっていいと思っています。それを自分たちでどう解決していくか。ハーフタイムに選手同士でいろいろしゃべっていますが、高橋祥平しかり山本康裕しかり、僕らが言いたいことを伝えてくれています。そういう中で修正能力が高くなってくれるといいです。

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