
【特別企画】都丸 善隆SD一問一答 ※無料配信
2025年シーズンを終え、松本山雅FCは11勝10分17敗(勝点43)で15位に終わった。今季指揮を執った早川知伸監督の退任も発表され、クラブは新たなスタートを切ることとなった。今季の戦いをどのように整理し、来季以降につなげていくのか。都丸善隆スポーツダイレクター(SD)の囲み取材をインタビュー形式で再構成した。
――まず成績について伺います。「昇格がノルマ」と発言して出発しましたが、達成できませんでした。受け止めはいかがですか?
シーズン当初は昇格が「目標」ではなく「ノルマ」と私は表現していました。けれども昇格争いも全くシーズン通じてできず、なおかつ終盤には残留争いに入りそうな状況もありました。
そのノルマからほど遠い成績になってしまったこと。皆さんのご期待に「沿えなかった」ということだけではなく、期待を「裏切る」結果になってしまったと思っています。そこに関しては率直に申し訳ないと思っています。
――なぜそうなってしまったのか。まず概観としてはいかがですか?
前任の霜田監督から早川監督に引き継ぎまして、霜田監督が培ってくださった攻撃の良さを継承しながら、守備の再構築――というイメージで早川監督とスタートをしました。
結果的にデータを見ると、攻撃のデータが低下してしまい、守備のデータに関しては改善されなかったという現状があると思っていますし、強度を示すようなデータに関しても、下位になってしまっています。その現状が成績に繋がっていると思います。
攻撃に関しては、「ゴール期待値」というデータを見ると38. 6で、J3の中で17位。1試合平均の「チャンスクリエイト数」は8. 7で、こちらも17位。「シュート数」も10. 4で19位。攻撃のデータもこのように低迷をしてしまっています。
守備のデータを見ると、1試合平均の「被シュート数」が14. 1で悪い方から4番目。「被ゴール期待値」も50. 9で悪い方から4番目です。
強度を表すデータの1試合平均「こぼれ球奪取数」が32. 8で19位、「1対1勝利数」が14. 8で17位。このデータを踏まえると、このデータ通りの成績に甘んじてしまっている現状があると思います。
――そうなってしまった要因については、どのように分析していますか?
攻撃と守備のどちらにおいても、選手の距離感が整わなかった状況が多いと思っています。
攻撃に関してはボールを持っている選手たちに対するサポートに関わる選手の数が少なかった印象もあります。少し遠くなってしまっていて、サポートとして機能できていないような状況になってしまっているケースが多かったと思います。
ボールを持っている選手が困ってしまったり、苦しくなってしまってミスを誘発させられてしまったり、相手にボールを取られてしまう状況もあったと思います。
そういう中で意図的に前進したり、意図的に崩したりする状況を作る回数が少なかったと思っています。すごくテンポが良くパスが繋がるとか、リズムが出てコンビネーションが生まれるとか。そういうシーンが限定的だったと思います。
守備でもボールに近いところに人が少ないことによって、すぐに即時奪回ができず、囲い込んで奪い返すことができない。その中で攻撃と守備がなかなか繋がり切らず、ぶつ切れになってしまっていた部分もあると思います。
攻撃も守備も切り替えも、選手たちは意識してくれていたとは思いますが、切り替えた時にすぐに攻撃と守備が連続するような距離感にいられなかった。そこは問題としてあったのではないかと捉えています。
――指導陣から細かく落とし込んでオーガナイズしてすればよかったという考え方なのか、ピッチの中での現象を踏まえて選手たちが判断する、そこの判断力によるものなのか。どのように考えていますか?
どちらもあると思います。もしかしたら選手の中でどういうタイミングでどういうポジションにサポートに入るべきか。それが戦術的なものに基づいてポジションを取っていくこともあると思いますけど、選手自身の判断力とか関わる意識とか、そういう部分にも課題はあったとは思っています。
――「距離感の遠さ」という部分で、「助け合う」「繋がる」「一体感を持って戦う」というマインドの薄さが表れているようにも感じます。
そういうことは連鎖してしまうものです。例えば1人の選手が攻撃でサポートに入っているのに、周りの選手がいいタイミングでサポートに来てくれないと、受けた選手がまた苦しい状況に追い込まれてしまう状況があると思います。
それに対してみんなが勇気を持って助けようと思ってサポートにいいタイミングで効果的に入れるとそれがどんどん繋がっていくとは思います。誰か一人だけがアクションを起こしても、やはりそれだけでは不十分。そういう選手が逆に苦しい思いをしてしまう状況は、やはりチームとしては良くないと思います。
サッカーに限らず困っている人や苦しい状況になっている人がいたら、周りはどういうことができるのか、どういう振る舞いができるのか――。そういう部分はサッカー以前でもすごく大事なマインドだと思います。チームみんなでそうした意識を高め切れず、及び腰になってしまった選手も、もしかしたらいたかもしれないと思います。
――年齢層による「精神的な距離感」も感じましたが、その部分はいかがでしょうか。
選手の性質もあるとは思います。正しいかどうかはわからないですけど、「世代間ギャップ」も少しあるのではないかと思っています。
特に今のベテランの選手たちは若いときにもう先輩からガンガン怒られて、そんな中でも歯を食いしばって乗り切ってきた選手たちです。そうでないと残れないような状況を生き抜いてきた選手たちが、同じ感覚で今の若い選手たちにアプローチした時に、若い選手たちがそこに食らい付いていき切れないとか、心が折れてしまうとか、ちょっと距離を取ってしまうとか。そういう状況も実際あったと思いますし、選手からもそういう話も聞いてもいます。
それは世代間ギャップによる感覚の違いもあると思いますし、あとは選手のパーソナリティとかに起因して、一体感が生まれるような雰囲気が醸成されにくい状況はもしかしたらあったかもしれません。
もちろん誰がということではなくて、繋がり切れなかった、まとまり切れなかった。苦しい状況の時に踏ん張れず、中から崩れてしまった試合もありました。そういう苦しい時の振る舞いによって、良い方向にも悪い方向にも転がる可能性があります。そこでポジティブなムードや機運を生み出せるようなコミュニケーションの取り方、繋がり方ができなかった部分は実際にあったと思っています。
――それはマネジメントで解決する部分と、編成で解決する部分と、両方があるのではないかと思います。どのようにアプローチしていきますか。
どちらのサイドからもアプローチしなければいけないと思います。実際に僕も今シーズン中も何回か特定の選手たちにそういう話をしたことも、チームの前で話をしたこともありました。
それがもちろん僕だけじゃなくてコーチングスタッフもそういうアクションをしてくれていました。そういうことを続けていきながら、ポジティブでプラスのエネルギーを持っている選手たちを増やさなければいけないと思っています。
――サッカーの部分についても伺います。早川監督は「主体的」という言葉を使いながら、選手たちが判断するように水を向けていました。その中で、戦術的なフレームの強度はどのように評価していますか?
サッカーは戦術の縛りの中だけでプレーするものではないですが、もちろん自由にみんなが好き勝手なことをやったら総合力は高まらない。そういう中でどこにバランスを見出すか――だと思っています。そこは監督や選手によってアプローチの仕方が変わってくると思います。
もちろん世界のトッププレーヤーが11人集まればパッとできるかもしれないですが、現在はより戦術的に作り込んだり、約束事が増えてきたりしている流れもある中で、全く自由だとやはり太刀打ちできない。
でも戦術で縛りすぎると、今度は躍動感とか、選手たちの持ち味が生き生きと出てこない可能性もあると思います。そこに関しては本当にバランスだと思います。選手とか指導者の持ち味によって変わってくるバランスがあると思います。
去年の霜田監督がどういう戦術提示をしていたか私にはわからない部分もありますが、早川監督も大きな方向性や根本的な考えは明確に示していたと思います。ただそれが状況によって選手たちの判断がリンクしなかったり、迷いが生まれてしまったりした状況はあったかもしれません。
例えば失点の仕方を見ていると、同じようなパターンでやられてしまったとか。前の試合でやられたのと同じように失点してしまっているとか、そういう部分はありました。改善に繋がっていくような共通認識を高め切れなかったところは現実としてはあったとは思います。
――今の潮流の中ではどちらかというと、判断の数を可能な限り削るやり方もあるとは思います。都丸SD自身としては、この結果を踏まえて作り込んでいきたいサッカーのスタイルはあるのでしょうか。
まず今シーズンを振り返ると、松本山雅は技術的なクオリティ、あとは個人戦術のクオリティについて、持ち味のある選手たちがいるチームだと捉えています。
ただ、今はインテンシティやタフさがどんどん増している中で、技術的なクオリティや戦術的なクオリティを出すことができずに飲み込まれてしまった状況があると思っています。
特にJ3というリーグで上位にいるチームは、インテンシティや強度の高いチームが多い傾向はあると思っています。それはJ3に限らず他のJリーグもそうですし、海外のリーグを見ていても、その傾向は顕著に出ていると思っています。
強度、インテンシティ、走力。そういう部分に今は乗り遅れてしまっている現実があると思っていますので、来季に関してはそこを引き上げなければいけない。戦える水準に戻すところが最初に大事になってくると思っています。大きな改善ポイントです。
もちろん強度が上がることによって防げる失点もあると思いますし、あとは頭の中の整理は監督によって守り方の約束事などが変わってきます。そこの部分は監督の戦術プラス、強度とか「1対1に負けない」とか、そういう部分が確実に大事になってくると思います。
――大枠で言うと今話されたことは松本山雅に求められていることとリンクしそうですが、「戻す」だけではなく「上回って」ほしいところもあります。
かつて松本山雅が躍進していた時期は、そこがストロングポイントだったと思います。そのときにやはりチームと一緒に戦ってくださったサポーターの方たちは多いと思います。
もちろん今でもそのときの記憶とか、そのときの興奮とか、そういうものは皆さんの中にすごく強く刻まれていると思います。サポーターの皆さんとか、地域の皆さんが望んでいる松本山雅のスタイル、松本山雅のカラー…そういうものは本当に取り戻していかなければいけません。
山雅が大切にしているものがあると私は聞きました。「規律」「勝利への執念」「ハードワーク」。これらを今のチームが表現できていたか――というと、表現できていなかったと言わざるを得ないです。
まずそこを取り戻して、サポーターの皆さんが一緒に戦ってくれるようなチームにならないことには、スタートができないかなと思っています。
――その土台を実現したうえで、ではどのようなスタイルで戦っていくのか、どういう集団にしていきたいのか。その部分の青写真はいかがでしょうか?
走る、戦う、粘る――それはフィジカル的にもそうですが、メンタリティ的なところによる部分も多いと思っています。そういう部分ではハードなトレーニングを課していくことももちろんですし、厳しい状況でも踏ん張り切れて力を発揮できるメンタリティが必要です。
逆境でも踏ん張って粘り切れたり、苦しんでいる味方がいても助け合って、励まし合ってみんなで前を向いて戦うムードを作っていけたり。フィジカル的な要素はもちろん、内面的な性格の部分も含めたタフさを取り戻さないことには、技術や戦術を論じられないと思います。
――そういう意味では早川監督も当初はその部分を意識してアプローチしていました。ただ、現実問題として天候により練習や試合ができなかったことや、サンプロ アルウィンの使用停止など、難しい外的要因もいくつか重なりました。
外的な要因は影響ないと思っています。その環境でもできることがあるはずですし、知恵を絞ってやっていく――というのは、クラブもコーチングスタッフもそう。選手たちもそれを言い訳せずにやっていこうというのは、大前提として必要な考え方だと思います。
もちろん影響がゼロということはないかもしれないですが、その中でも走れるようになるトレーニングはできるはずですし、手段とか方法は他に必ずあると思っています。
――「規律」にも触れたいと思います。今季当初に早川監督と都丸SDも含めてチームのルールを設定しました。その狙いと効果を振り返るといかがですか?
グラウンドの中の規律に関しては早川監督に委ねて決めていただきました。グラウンドの外を取り巻く環境含めた部分の約束事は、クラブと強化部でルールを整備してきました。選手から不満が出たことも実際にありましたけれど、基本的にはそれを守っていく姿勢でスタートをして、基本的にはルールを変えることなく守り続けてきました。
私は今までの松本山雅のことを全てはわからないですけれども、「ポテンシャルがある」と言われながら成果を上げ切れなかったここ数年の中で、早川監督はコーチとして1年、ヘッドコーチとして1年間チームを見てきました。そういう中でどういう部分に弱点があって、そこが変わらないと成績も出ないのではないか――という考えのもと、早川監督はグラウンドの中に関するルールを整備しました。私もそこに関しては100%賛同して一緒に進んでいきました。
もちろん決めた約束事を守り切れずにペナルティを課された選手もいましたし、選手たちが「自分たちを律する」側面ももちろん必要な考え方だとは思います。けれども集団生活をして集団で戦う中で、必要な最低限のルールを決めて進んできたことに関してはプラスに働いていると思っています。
シーズン当初に規律違反で活動停止になった選手もいました。けれどもそれ以降に関しては、特別に大きなトラブルや問題が起こっていなかったと思っています。チーム力を自分たちで変に削いでしまうようなトラブルは、規律によってコントロールできた部分があったと思っています。
――それでもピッチの中の一体感は出ませんでした。すぐに成果があがるものではないという考え方でしょうか?
まだスタートして1年です。これを数年やっていく中で、選手たちにもっと浸透したりそういうことが当たり前の認識になっていったりした時に、もしかしたら本当に変わってくる可能性があり得るのではないかと思っています。そういう部分に関しては継続していけたらと思っています。
ピッチの中に関しては基本的に監督に委ねる形にはなりますけれども、クラブとして守ってほしい約束事に関しては今後も継続していきたいと思っています。
――そもそもですが、人間は規律がなければどんどん楽な方に流されて堕落するという考え方なのか、今この松本山雅の集団の特性を見たからこそ規律が必要だと考えたのか。どちらでしょうか。
後者だと思います。ピッチの中の約束事もそうですけど、全く約束事なく選手たちに委ねていて力が集約されるのかリンクするのか。それでいうと簡単じゃない部分もあると思います。
もちろん選手たちの自立に委ねるところもありますが、「最低限これはやってはダメ」というルールは必要だと思います。それによって問題が起こってチームの力が削がれてしまったり、集中できなかったり。そういう状況はやっぱり避けたいです。
ルールに関してもガチガチに縛っているわけではなく、サッカーに集中するために必要なルールだという認識です。ルールがあって選手の自立もあって…という2段構えでいけるのが一番いいバランスだと思っています。
――1年間やってこられた早川監督に対する評価を聞かせてください。
今のこの15位という成績は早川監督だけにとどまらず、もちろん私にも責任がありますし、選手にも責任があると思っています。
ただ早川監督が常に前を向いて身を粉にして働いてくださっていた姿を私は毎日見ています。早川監督の中でもいろんな葛藤とか苦悩とかもあったと思いますし、もちろん私が早川監督に求めたりコミュニケーションを取ったりする中で、早川監督がそれを取り入れてくださったりトライをしてくださったりした部分もあります。
そういう中ではチームが成績を上げるためにできることを、早川監督の基準とこちらが求めているものにも耳を傾けてくださった中で、チームが良くなるために常に前を向いて仕事をしてくださいました。そこに関してはとても感謝していますし、敬意を持っています。
それでも今回、交代に至った経緯については、シンプルに成績です。そこに尽きると思っています。
定点観測のようなイメージで、シーズンを4分割して定期的に勝点の積み上がりに関しては、状況を見ながら、常に支えながらも、どうするべきか考え続けてきました。
そういう形で勝点は追いかけてきましたが、夏ぐらいに少し持ち直しそうな気配を私自身も感じていたところもありますし、このままお任せするのがいいかなと思ってここまで一緒にやらせていただきました。
――今季限りでの契約満了が発表されましたが、後任についてはどのような考えをお持ちでしょうか?
立場的に強化は短期的な成果と、中期的な成果とどちらも考えていかなければならないと思っています。そういう中でどなたにやっていただくのが短期、中期でいいのか。そういうことは常に考えながら、強化部の中でも話をしながら検討しています。
――今シーズンも途中から成績の伸び悩む時期が続きました。その中で監督交代による変化を求めるような検討はなかったのでしょうか?
それは常にしています。 代えた方がいいのか、代えない方がいいのか、代えるとしたらどなたなのか。もちろん代えて好転するケースもありますし、暗転するケースもありますし、そういうことも全て想定してさまざまな材料を集めて判断した中で、決断をしてきました。
もちろん15位という成績に関しては「成績が出ている」とは言えないので、短期的なところで言うと、もしかしたら違う選択肢もあったかもしれません。ただ中期的な視点も持った中で考えた時に、私は早川監督に1年間最後までやっていただいたことに関しては正しかったと思っていますし、数年後に改めてそう思えるようにしなければいけないと思います。
――短期的な判断基準は目先の勝ち負けなので理解できますが、中期的に見た時の判断の根拠やポイントとなる部分はどんな部分に置いていますか?
来季のハーフシーズンが少し特殊なシーズンになります。それを踏まえた時にどうすべきなのかはずっと考えていて、ハーフシーズンの特別大会がある――というところが一つの判断の大きな要因にはなっています。
特別大会は昇降格がありませんが、次のシーズンに向けての大事なシーズン。そこをどう有効に使えるか。もちろん特別大会も成果をあげて賞金を獲得するために取り組むべき大会ではありますが、各クラブがさまざまな戦略を持って臨む大会になると思います。
それが一つのパターンだけじゃなく、各クラブが何を重視するかによって過ごし方は変わってくると思います。そこを効果的な期間にしなければいけないですし、今季昇格できなかったので、移行後のレギュラーシーズンに関しては、昇格をするための準備ができた状態で臨まなければいけないと思っています。そういうことが判断に影響しました。
――契約の関係も含めてということになりますか?
もちろん新たにお迎えする方が半年で引き受けてくれるのか、そうではないのか。そういうことももちろん絡んできます。そこは「総合的な判断」という言葉になってしまいますが、いろいろと考えなければいけない項目があったと思います。
――ハーフシーズンの使い方に関して、松本山雅としてはどういうスタンスで臨んでいくのか。そこについての発信をいただけるとありがたいです。
他のチームの話を聞くと、若手の選手とか、既存の選手に出場機会を与えてベースアップとか。そのようなことを主眼に置いて取り組むシーズンになるチームも多いようです。ただ私はこの冬のタイミングで、できるだけJ2に昇格するために必要な環境とか編成とか、そういうものを整えて戦っていきたいと思っています。
そういう中でもちろん、若手の選手にチャンスが来るようにあまり多くの選手をかかえすぎないことなども一つは大事だと思っています。
ただ次のレギュラーシーズンに向けて、しっかりとした戦力をチームに組み込めるような戦い方、準備期間みたいなことも主眼に置いて過ごした方が、レギュラーシーズンに繋がると思っています。
安直に若手の選手に経験積ませるだけではなくて、本当に昇格するためのピースをそろえて、その選手たちで準備をしていくシーズンだとイメージしています。
――先ほどまでの話と総合すると、「走る」「戦う」「規律を持つ」という集団になってレギュラーシーズンを迎えられるよう、ハーフシーズンでそういう選手をそろえて戦う土台を整えていくイメージで良いでしょうか?
まずはそこに着手しないことには再スタートは切れないと思っていますし、サポーターの方たちからも支持してもらえないと思っています。何より成果が上がらないと思いますので、まずその戦えるチームにまた戻るというか、かつて山雅がストロングポイントにしていたところを再認識して、またそこからスタートしていきたいと思っています。
もちろんさまざまな制約があって全てを100%完璧に揃えられるとは思っていないですが、与えられた資源を最大限に活用してそこに近付けたいと思っています。この冬のウインドーと、次の夏のウインドーの2段構えでよりチーム力を上げていきたいと考えています。
――あくまで冬の時点でもう土台は作ってしまいたいですか?
それをしないと、夏と2段構えにしても追いつかないと思っています。夏に選手の流動性がどこまであるかはわからないと思っていて、実際にこの冬で複数年契約をしてしまったら次の夏に移籍できる可能性がやっぱり狭まってしまうと思います。
そういう選手も結構多いと思うので、もちろんその選手の出番が限られていたら期限付き移籍は可能ですが、この冬に厚く作っておかないと、夏があっても補い切れない可能性があると思っています。
今シーズンはプロ契約選手が34名いましたが、少し多いと思っています。多少絞るイメージではいますが、今の段階で何人とは明言できない状況ではあります。
もちろん薄くなるポジションができてはいけないですが、薄くなったときにそこで出番が与えられた若手の選手がきっかけを掴んで伸びてくる可能性もあります。良い部分もありますが、厚くしすぎると余剰戦力が出てしまって、限りある予算が分散してしまうと思うので、少し絞って質を上げるイメージではいます。
――仕事が大変になりますね。
サッカーも本当に進歩が早いので、流行りのシステムみたいなものが1年経ったらすぐに変わっていってしまいます。戦い方も変わっていく中で、決めすぎてしまうリスクもあると思います。
もちろんそれがブレてしまうリスクもあると思いますが、そういう中で基本形はこれだけれど対応力みたいなのも必要だと思います。そうでないと閉塞感が出てしまって、ケガ人が出たりした時に全然機能しない…みたいなことになってもいけないので、一定の対応力は必要だと思います。
――選手の代謝みたいなものでいけば、大きな血の入れ替えをしなければいけないのか。そこら辺は自分たちだけの理屈だけでいかないところだとは思いますし当然マーケットの動向もあるので、難しいかもしれません。
ただ、変化が必要だと思います。その変化をするためのメンバーで戦っていかなければいけないと思います。
私がこだわりたいのは、たくましくて優しさを持った選手。苦しい時にも踏ん張れて、強い相手にも勇敢に向かっていけて、困っている人がいたら助けてあげられる。そんなパーソナリティを持った選手を増やさなければいけないと思っています。
――それはある意味フットボールの特徴と同列か、それ以上に優先されるべき事項になりますか?
もっと大切な前提になると思います。集団スポーツで社会性が求められる中で、そういう要素がやっぱり組織を向上させる、成果を上げるためにすごく必要な大前提だと思います。技術戦術とかそういう話よりも、もっと根本で大事な要素だと思っています。
――ゲームの中で単純なプレーに対するジャッジはわかりやすい部分ですが、パーソナリティーに関しては判断が難しい部分もあるのではないでしょうか。
偉大な先輩から教えてもらった教訓があります。「目に見えないものを見抜け」と。「速い」とか「強い」とか「大きい」とか、それらは誰が見てもパッとわかります。ただ目に見えない内面、どんなマインドでサッカーに向き合っているのか、どんな動機付けでサッカーをしているのか。
もちろんそれがプレーに表れるところもだいぶありますが、そういう内面をどれだけ見抜けるかどうか。それは「見る」だけではなくて「聞く」こと。普段一緒に過ごしている人から信頼できる情報を吸い上げられるかどうか。
それは今でも一緒だと思っています。選手・スタッフを獲得する時には、もちろん仕事ぶりを見るのも大事ですが、いろいろ信頼できる人に聞く作業とも合わせて煮詰めていかなければいけないと思います。それができれば、それなりに精度の高い人事ができると思います。
――ロッカールームでの振る舞いだとか、普段の生活態度だとかも含めての評価の対象になってきますか?
例えば練習に一番朝早く来る選手とかは、自然とやっぱりそこに意識が出ると思います。最後まで残って練習する選手、家でもサッカーの映像を見ている選手、サッカーのことを考えている選手。そういうところが根本としてすごく大事な要素だと思うので、そこは大事に見なければいけないと思います。
それがチームの根底に流れる意識とかマインドとか、サッカーに対する姿勢になります。そういうものが根底にないと、いくらいい監督や持ち味のある選手を連れてきても安定しないと思いますし、成果が上がらないと思います。
脈々とそういうものがリレーされていく部分は絶対あると思うので、そういう状況でなかったとしたのなら、きちんとそこに向き合わなければいけないと思います。
それに付随して一つお話したいことがあります。今シーズンはフェアプレーポイントが20チーム中17位でした。その中でも異議と遅延行為。それらが一つのくくりになっているのですが、そのイエローカード数がリーグでワースト2です。少し前までワースト1でした。
その状況は成果をあげるためにも、イエローの累積で試合に出られないとか積極的なチャレンジができなくなってしまうとか、そういうことにも繋がっていきます。
ただ何より、この松本の地域の方たちのマナーの良さとか、教育的な要素を大事にされている地域性がある中で、そこに関しては松本山雅が本来クリーンさやフェアさなどを象徴しなければいけない存在だと思っています。そこは来期以降、重点的に取り組まなければいけない大きな課題だと思っています。
そういう部分がクリアされないと地域の方にも応援してもらえないと思いますし、実際パートナーの方でもそういう視点を大事にして、スポンサードを決定する企業もあると聞いています。そこもすぐに取り組まなければいけない課題だと思っています。
――レフェリングを巡ってはスタジアムの雰囲気も左右することがあります。
これは選手やチームだけじゃなくて、サポーターの方たちも含めた共同作業だと思っています。サポーターの方たちがレフェリングに対して声をあげると、選手たちもそこに影響されてしまう側面もあると思います。
本当にファウルだったのかファウルではないのか。簡単に倒れてファウルをアピールするような選手やレフェリーに異議を唱えてカードをもらうような選手を許さないような雰囲気をサポーターの方と一緒につくっていきたい。改めて、この場を借りてサポーターの方々にもお願いできればと思います。
――接触などで転んでプレーを止めて、その隙にスペースを使われてやられた失点もありました。
おっしゃる通りだと思っています。もう技術戦術とか以前の話だと思います。実際、そこに強い違和感を感じているサポーターの方たちもいると思います。「そんなに痛がってないでプレーを続けろよ」「結局は立ってプレーできるじゃないか」みたいな。実際にそのような振る舞いが失点とか勝負に直結することが今シーズンもたくさんありました。そこもとても大きな問題だと思います。
――最後に伺います。松本に1シーズンいて、この地域の特性を踏まえた中で松本山雅に何が求められているのかを理解しているように感じました。それを踏まえてどんな表現をフットボールでしていきたいのか、道筋を改めて言語化していただいてよろしいですか?
私の捉え方が合っているかどうかがわかりませんが、すごくこれは大事なことで、サッカーチームは地域の風土とか県民性とか歴史とかカラーを象徴する存在でなくてはいけないと思います。
私が松本という地域で感じるのが、やはり街中で車を運転していても、横断歩道で人がいるときに皆さん止まって歩行者優先で道を譲る。そういう思いやりとかマナーとか、礼儀正しさとか、そういうものがすごく浸透しているし、意識の高い地域だと感じています。
それで言うと先ほどのフェアプレーポイントにも通じるものがありますが、まずクリーンさとか、フェアさとかすがすがしさとか、そういうものはやはり大事にしなければいけないと思っています。
少し話が取り留めなくなってしまうかもしれないですが、やはり松本の自然の豊かさにも通じるチームにしたいです。新緑の時期に山麓線から小坂田公園(サンコーグリーンフィールド)に行く道から見る松本平の美しさに、通るたびに感動します。
新緑の時期だけでなく冬の時期もすごく空気が透き通っていて、松本平が見渡せて、その先には雄大なアルプスが見える。この景色のような瑞々しさや清々しさ、雄大さをチームやサッカーで表現することができないかと模索しています。
また、サポーターの方たちのチームを支える温かさもすごく感じます。サポーターの方たちと選手の距離感もすごく近い。そういう中で相互作用が生まれる関係性も、この松本山雅の素晴らしさだと思います。
成績が出ていない今でも、勝てない時でもサポーターの方たちから「どんなときでも山雅応援しているからね」「頑張ってね」という声をよくかけてくださいます。どんなときでも支えてくれる、温かさとか山雅を愛する気持ちとか、そういうものがどの他のクラブよりも強く感じる状況があります。
また、松本の冬は忍耐強く過ごさなければいけない厳しさもあると思います。そういう中で選手たちも苦しい状況でも粘り強く我慢強く戦い続ける、挑み続けるような忍耐力。そういうものも示さなければいけないと思います。
そして、教育にもすごく力を入れている地域ですので本質を見抜く力が高いと、サポーターの方たちとお話をしていてすごく感じる部分もあります。だから選手たちも小手先のプレーではなくて、サッカーというスポーツを本当に深く理解して、どういうプレーが効果的なのか、どういうプレーをしなければいけないのか。スコア、時間帯、プレーエリア。そういう原則とか状況とか踏まえた中で、本質的なプレーでサポーターの方たちに応えていくこともすごく求められると思います。
フェアプレー、ハードにプレーする、あとは本質的にプレーする。そのあたりは、松本山雅が追求して示さなければいけない姿勢だと思います。
――いなくなってしまった人たちにまた振り向いてもらう意味でも、今おっしゃったようなところを体現し続けていくのは非常に大事になってくると思います。
スタジアムに来場いただける方がチームへの支持率の一つ指標だと思います。もちろんテレビ、パブリックビューイングなどで応援してくださる方ももちろんいます。そういう方たちが減ってきてしまっている現状があると思っています。
それはやはりチームが支持してもらえない、本気で感情移入して応援してもらえるような状況を作りきれてないという今のチームに対しての反応だと思っています。
サポーターの方々が一緒に戦ってくれるチームとはどんなチームなのか。そういうことを思い出しながら、そういう要素を大事にしながら、チームのベースを作っていかなければいけないと思っています。
来シーズン以降は特にそれが求められるシーズンだと思います。


