【一問一答】名波 浩監督(2021.6.22)※無料配信
みなさんこんにちは。お忙しい中集まっていただき本当にありがとうございます。監督に就任するにあたりネガティブな要素も何個かあるとは思いますが、前所属クラブでも途中就任ということで、その改善方法や、チームを勝利に導くような流れづくりはわかっているつもりで就任しました。自分のストロングポイントであるコミュニケーション能力、それからトレーニング、ゲームの中で何か新しいものを発見する目を存分に発揮しながら、選手とともにチームを強化していきたいですし、地元の方々、山雅サポーターの皆さんにより愛されるチームにしていきたいと思っています。よろしくお願いします。
――就任の経緯と決め手は。
前所属クラブを退団してから丸2年が経って、やっぱり現場で指揮を執るという目標のもとでライセンスを取ったので、3年も経ったら自分が監督だったことも忘れられてしまうという危機感のもと、いろんな道を模索していました。そのタイミングで本クラブからお話をいただき、もちろん熟考しなければいけない部分はたくさんありますが、性格的にもどんどん前に進みたいタイプなので、このチャレンジをしっかり自分の中で受け入れながらやっていこうと決めました。
――ビッグクラブではなく松本山雅で戦うという決断をした理由は。
クラブ規模とかステージはあまり気にはしていなくて、本質的にはクラブがどういう方向に向かいたいか、自分が指揮を執ることでクラブがどう変化していくかということをしっかりストーリーの中で組み立てて私の中にちゃんとレクチャーしていただきました。そういう意味では思惑と合致していますし、クラブ側が思うこと以上に自分がクラブを羽ばたかせることができればいいという気持ちを強く感じました。
――意気込みは。
まず直近の大宮戦もそうですし、長崎戦以下、試合を見ていけばいくほど不安要素が溜まったので、いろいろ改善するところはあります。意気込みとしては1つずつ課題をつぶしていくこと。自分たちが本当にピッチの上で出せるストロングポイントは何かということを選手に明確に発信していくこと。勝ち点を積み重ねることによってチームにもう一度大きな自信を植え付けさせたいと思っています。
――ストロングポイントと改善すべき点について、具体的には?
ここでは言えません(笑)。
――選手に対面する前の心境は。
訓示として何を言おうかはまだ決めていないが、パンチのあることを言ったり威厳のあるような立ち居振る舞いにしようとは思っていません。選手には「監督」と呼んでほしくもないですし、「名波さん」「ナナさん」とか、そういうフランクな間柄でシーズンを過ごしたいし、選手と共に成長という意味では常に寄り添っていたいと思います。
――サポーターへメッセージは。
「過度な期待は禁物ですよ」ということをまずは伝えたいです(笑)。ただ、僕の中に持っているもの、このクラブを支えてくれる人たち、全ての力を結集して今よりも上に必ず上り詰められるように頑張っていきたいと思っています。
――目指すところは。
現役時代からリアリストなので、まずは上と下のどっちが近いのかという話になります。そこをクリアしてから目標を上方修正すればいいと思います。
――松本で楽しみにすることは。
まず山雅サポーターの熱というのはアウェイで来たとき以外感じたことがありません。ホームの人間になった暁に、山雅サポーターの絶大で熱烈なサポートを聞けるというのはこの上ない喜びになると思うので、それを早く体感したいです。
――山雅の印象は?
チーム戦術や個人戦術に関してはここではお答えできませんが、まず一つ感じたのはリーダーがいないということ。もしかしたらJ1、J2、J3も含めた50クラブ以上の中で、ゲーム中のコミュニケーションが一番少ないのかな?くらいの印象を受けながらゲームを拝見していました。そういう意味では試合の中でのしっかりした指示、チームを鼓舞する声、激励的な声がたくさん出てくるようなチームに変貌させたいなとは思っています。
――オファーがあって迷うところもあったと思うが、決断するまで誰かに相談したか。
相談した人は身内以外だと長谷川健太さん、山口素弘さんとか、何人か自分より年上の元監督や現役監督の方に話をさせてもらって、現状自分に引っかかっているつっかえ棒がどれくらいの大きさなのか、みたいなことを確認しました。その上で、結局決めるのは自分。皆さんこぞって言うのが「やるしかないだろ」「このタイミングを逃したら次はいつ来るかわからないぞ」というのが多かったので、そういう気持ちにさせてくれた方々だと思います。前所属クラブで一緒にやった大井健太郎とか、高校の後輩の小野伸二とかはオフィシャルで発表する前にどこからか聞きつけたようですぐ連絡してきて、彼らも「やりますよね」と背中を押してくれました。相談とか期待も含めて、非常に自分の中では力強かったかなと思っています。
――次の琉球戦が迫っている中で、どのような部分から着手したいか。
今日、明日、明後日のトレーニングを見てもらえればわかると思います。チーム全体の方向性をしっかり示すことと、僕自身は全選手が競争のスタートラインに立って振り出しに戻っているよということを、暗黙でも公言しながらでもやりたいと思っています。競争意識のなかでピリピリしたものを、監督が替わったからではなくて、シーズン終盤まで続けていければいいし、その温度を初日から出したいと思っています。
――山雅のチームカラーやスタイルをある程度踏襲するのか、それともご自身のスタイルを全面に押し出していきたいのか。
ご質問はすごくわかりますが、何せ生で見てみないとわからないので、今日、明日、明後日の3日間がキーになると思っています。
――神田社長からは中長期的にクラブ作りに関わってほしいという話もあった。それについては。
Jリーグの監督や、強化に携わっていたりフロントに入っている人間にとっては、マーケティングやブランディングにも100%協力しなければいけない立場。ファーストチョイスはオンザピッチですが、オフザピッチも時間とともに、体も心も余裕が持てるようであれば積極的に参加したいと思います。コロナ禍が解消されれば選手も積極的に協力すべきだと僕自身は思っています。
――コーチに高校の先輩でもある三浦文丈氏の就任が発表された。コーチに期待することは。
まずは監督経験、ヘッドコーチ経験が圧倒的に僕よりもあります。場数をチームに還元してくれると思っています。あと高校の先輩とはいえ同級生のような感じで接しているので上下関係もないですし、僕自身の性格も「◯か×か」という感じなので、それも把握してくれています。そういう部分では仲違いになることもないですし、役割分担をしっかりしながら自分たちの方向性をスタッフ自らがバラけないようにしていきたいです。
――監督業の魅力についてはどんな部分に感じるか。
監督を離れてからより強く感じるようになりましたが、若い選手のパワー、バイタリティーを自分自身のアイデアやパワーに変換できることは素晴らしいと思います。サッカーの奥深さや難しさをより感じながら、1+1が2だけじゃないんだよということを選手に発信し続けられる立場にいます。確かにこのSNSの時代にネガティブ要素もありますけど、そんなことよりも、この時代にいい大人が男同士で抱き合えるシーンなんてなかなかないので、そういうシーンをたくさんつくっていきたいと思っています。
――改めて、現場に立つ胸の内は。
本心で行くと監督を前所属クラブで6月に退いてから、半年後にオファーを待っていました。そこで来なくて翌シーズンの途中かなと思ったなかでコロナで各クラブが経営逼迫で監督人事がなかなか動かないと。タイミングの悪さもあって、自分の中ではもどかしさがずっと続いていました。ストレスを感じていましたが、それでもテーブルに名前が載っていると信じて、サッカーを見たり解説をしたりトレンドを逃さないようにしてきたつもりです。サッカーに必要な要素が100だとしたらまだまだ20か30くらいだと思うので、ここから選手とともに自分も学んでいかなければいけないという身の引き締まる思いです。
何よりも感謝しなければいけないのは、いろいろなメディアの仕事をさせてもらってからピッチに戻るまで協力してくださったテレビはじめメディアの方々、そしてピッチに戻していただいた神田社長であると思っています。
――前所属の磐田に比べると山雅はまだ歴史が浅い。そこにどんな文化やスピリットを植え付けたいか?
サッカーという観点で言うと、やることは変わりません。松本でプレーしようが指揮しようが他のエリアでそうしようが、スタンスを変えるつもりは全くありません。ただサッカー文化というと違います。地域交流のなかでどんな特産物や観光地があるのかは知らないことも多々あると思います。そういったものも自分の中で勉強しなければいけませんし、地元の方々や山雅サポーターの方々に愛されるにはどうすればいいのか、自問自答しながらやっていきたいと思います。
――ヴェネツィアや東京Vなど、緑のチームにも縁があるのでは?
そうですかね?あまり考えたことがなかったですけど、家に100本くらいあるネクタイの中で1本もありませんでした(笑)。これ(今着けているネクタイ)は神田社長にいただいたんですが、「あ、俺は緑を持っていなかったんだ」と改めて思いました。