山雅戦士×飯尾和也 対談 #4 飯田真輝

取材日:2015年5月21日

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和也 今日は飯田真輝選手にいろいろお話を聞きたいと思います…って、「こんな対談、早く終わらせたいな~」とか思ってるんでしょ?(笑)

飯田 いやいや、そんなことないですよ(笑)。いっぱいお話しましょうよ、和さん!

和也 お、嬉しいね。じゃあ、俺もいつも通り『飯ちゃん』って呼ばせてもらおうかな。では、改めて宜しくお願いします!飯ちゃんは松本山雅6年め、ゲーム キャプテンを務めるようになってからは…?

飯田 えーと、全ての試合で務めるようになってからは2年目くらいですね。

和也 そんな飯ちゃんの目から見てJ1はどうですか?シーズン前に思っていたのとは違う?

飯田 そうですね、シーズンが始まる前は「J1昇格時の完成度をキープ出来れば、ある程度は勝負になる」と思っていました。まあ、上位争いに加わるのは難しいとしても、10位前後は狙えるんじゃないかな、と。でも、当然のことながら選手の移籍などもあり、キャンプが終わる頃には「このままじゃあヤバいぞ」と。チームとしての完成度がちょっと厳しいな、と。

和也 そんな不安を抱いたまま臨んだ名古屋グランパス相手のリーグ開幕戦は3対3のドローという結果だったね。

飯田 自分としても詰め切れなかった、という反省もありますが、とにかくリードを守り切れなかったのが悔しいですね。

和也 俺も分かるけれど、ディフェンスとしては点を取ってくれたフォワード陣に対して申し訳ない、っていう気持ちがあるよね。

飯田 それはありますね。3点も取ってもらっておきながら、守備のミスから失点を招き引き分け、という結果は本当に残念です。先ず失点をゼロに押さえ、その上でどうにかするのがウチのスタイルじゃないですか。それなのに…という思いはあります。あの失点も、ディフェンスラインがちゃんと構築されていれば未然に防げた筈です。1点差や失点0で守り切る、というゲームを去年からやってきた僕らのような選手からしたら我慢が利く場面でも、まだ当時の後藤や酒井には厳しい部分もあったのかな、と思いますね。「ヤバい、ずっと攻められている!」とパニックに陥ってしまったのかも知れない。

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和也 不安を抱え迎えた開幕戦の試合内容がそんな感じだと、余計に焦燥感に駆られたりしたんじゃない?

飯田 はい。本当に「どうにかしないと」という危機感を強く抱きましたね。試合の映像をDVDで見て振り返り、改善点を見つけるようにして。自分のプレイだけでなく、後藤と酒井のプレイも併せて見るようにしました。そして、後藤と酒井も交えて3人で試合の映像を見ながら「この場面はこうするべきだよな」と話し合ったり。本当は面倒くさいし、そんなことはしたくないんです。でも、やるしかないな、と。和さんはご存知でしょうけど、去年はそんなことしたことないじゃないですか。

和也 うん、した覚えがないね。二人は飯ちゃんの言うこと聞いてくれるの?

飯田 うーん、二人が俺の話を聞く、というより山雅というチームの決まりごとを確認してもらう、という感じですね。ウチはいろいろ決まりごとが多いんですけれど、試合を見ながら「この場面ではやるべき決まりごとがちゃんと出来ていないよね?」と確認していく。2人とも自分たちが(その決まりごとが)出来ていないことが分かっているから「どうすれば良いかを教えて欲しい」というスタンスです。だから、それに対して「じゃあ、ここはこうすれば良いんじゃないかな」とアドバイスしていく。先ずはチームの決まりごとをちゃんと出来るようにすることが先決です。選手個人がそれぞれのストロングポイントを出す、なんていうのはその先の話ですから。まだまだそこまでいってない状態でしたよね。

和也 俺も経験があるけど、ディフェンスラインが2枚変わるとなるとね…。

飯田 キツイっす(苦笑)。

和也 そういった立て直しを経て、今のディフェンスラインはどう?試合を重ねてきて変わってきた部分はあるの?

飯田 そうですね…補強もしているから、最終的な到達地点は当然、去年より上にいく筈なんですけれど、まだまだあのレベルには程遠いかな、と思いますね。終盤は何だかバタつくし、最後の最後まで守り切れない。鳥栖戦も結局、ボランチが引き過ぎて、ミドルシュートを決められてしまって…。結局、あれはディフェンスラインに信頼感がないからボランチが勝手に戻ってきた、というそれだけの話だと思うんですよ。そう考えると、まだまだ去年のレベルには全然足りていないかな。でも、去年のベストを超えるポテンシャルは間違いなく皆、持っているんで。ここからどれだけ上がっていくか、ですね。

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和也 期待しています!ここまでJ1リーグ1stステージを戦ってきた中で、特に印象に残っている試合はどれだろう?山雅のJ1における記念すべき初勝利となった清水エスパルス戦?

飯田 そうですね。清水戦もハッキリ言って出来はあまり良くなかったんですけれど、あそこで勝てたのは大きかったと思います。あそこで負けていたら、もう誰も言うことを聞かなくなっていたかも。でも、印象深い試合となると…そうだなあ(しばらく考えて)甲府戦、ですかね。

和也 第10節のヴァンフォーレ甲府戦?

飯田 そうです。ヴァンフォーレ甲府というチームは、今の僕たちとレベル的に近いチームだと思うんですよ。そんなチームを相手に完勝出来たのが印象深いですね。ちょっと危ないシーンもあったけれど、ボールもちゃんと拾えて潰しどころは潰せ、そしてホームでしっかり勝ち切れた。とても大きな手ごたえを感じましたね。

和也 なるほど!完勝だったもんね。
そういえば、清水エスパルス戦の…

飯田 戻りますね(笑)。

和也 うん、ちょっと戻ってもらって(笑)。あの試合の飯ちゃんの得点シーンについてなんだけれど。

飯田 あれはもう、絶対にオビナから(ボールが)くると思った。なんていうのかな、後ろから見た時に「ああ、俺のことを見ているのは大前(元起)選手だし、ゴール前であっち側にいるのは犬飼(智也)だし。多分これは入るな、と思いました。

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和也 へえ、オビナへの信頼かな。あそこを簡単に収めちゃうよね。

飯田 そう、そうなんですよ。で、まあ、あそこに池元さんとかいて。まあ、ワンちゃん(犬飼智也選手)は俺が来ていたことに気づいてたんだけれど、俺に気付いていたからこそ結果的にカバーが遅れ外してしまったという感じで。

和也 まさに読み通り?

飯田 そうですね、あれは。自分個人のプレーで言えば、あれが一番気持ち良かったかな。

和也 その他にも結構、前に出ていくシーンを見るよね。ヘディングをカマしたりしてるけれど、行ける時には行けっていう指示なの?

飯田 反町監督はもともと前に出ていく選手には何も言わないんですよ。ネガティブな走りでなく、ポジティブに上がっていく分には伸び伸びとやらせてもらえるんです。その代わり、戻ってくる時にはダッシュしろって言われますけど。それさえしていれば、自分で「行ける!」と判断した時には勝手に行って構わないって思っていて。まあ、でもああして結果も出せましたから。

和也 ここまでJ1リーグで戦ってきて、飯ちゃん個人としてはどう?例えば、ヘディングの手ごたえとか。サガン鳥栖戦では豊田陽平選手を相手にしたり、ヘディングの強い相手ともやっているよね?

飯田 J2の方がヘディングに特化している選手が多いんですよ。選手としてのバランスはさておきヘディングだけが上手いっていうのかな…「ヘディングを売りにして試合に出てます」っていう感じの選手が多いから。どちらかというと、ヘディングに関してはJ2の方が怖い選手が多かったですね、今思うと。そういった意味では、僕のヘディングは全然通用しているかな、と思いますよ。

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和也 J2のサッカーは感覚としてそんな感じかもね。今は守っていて「浮き球が少ないな」とか思ったりする?

飯田 簡単にはクロスを上げませんね、J1のチームは。

和也 それは「来るかな!?」と思わせておいて実際は来ない、というのが多いってこと?

飯田 そうです。精度も高いし、上げられた時はもう危ない。でも、そんなにやたらめったら上げてくるわけじゃあない。だから、それはそれで難しいかな。ま、物足りないっていう気もしますけれど。

和也 言うね(笑)。ここまでJ1のいろいろなストライカーとぶつかってきたと思うんだけど、「こいつ凄かったな」っていう選手は誰かいた?

飯田 ガンバ大阪のパトリック選手は別格でしたね。

和也 へえ?それは宇佐美貴史選手よりも?

飯田 そうですね。ウチはガンバ大阪戦において、宇佐美選手の良さを消せていたとは思うんですよ。まあ、点は取られてしまいましたが。でも、パトリック選手のボールを収める力や競り合いの強さ、キープ力…あれはちょっと違うな、と。

和也 ぶつかった感じとかも?

飯田 もう、ぜっんぜん違う。まるで違いますね。

和也 動かない?

飯田 動かないっていうか…なんて言えば良いのかな、競り方が上手いっていうのもあるんだけれど、力もあるし幅もある。それと、ボディバランスが恐ろしく良くて。こちらから当たっていって、態勢を崩しにいっても全然崩れないんですよ。

和也 そのまま走っていっちゃう、みたいな?

飯田 そう!それであれだけ献身的に頑張れるから凄いと思いました。ディエゴとか、そっち系ですね。

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和也 そんなワールドクラスのJ1のフォワード陣と当たれるのは楽しみではあるのかな?

飯田 そうですね。

和也 頼もしいね!
ちょっと話は変わるけれど、チームで仲の良い選手って誰?

飯田 最近は(岩間)雄大と一緒にいるかな。練習のある日は連れ立ってランチに行ったりしています。まあ、休日までは一緒にいませんけれど。

和也 ランチは二人で行くんだ?他の誰かを誘ったりはしないの?

飯田 基本的には二人ですね、楽だし。何ていうのかな…ちょっとした温度差ってのがあるじゃないですか(笑)。あ、でも、「最近、椎名(伸志)が頑張ってるんじゃない?」なんて話が出れば、じゃあ今日は椎名をメシに誘おうか、なんて話になったりしますよ。

和也 頑張ってるヤツを連れていくって感じ?

飯田 そうですね。「安くねーよ、俺らとメシ行くのは」っていうのがありますね(笑)。もっと頑張ったらメシに連れていってやるよ、というか(笑)。

和也 松本にも慣れたと思うけれど、東京に帰ったりもするの?

飯田 いや、行かないですね。行っちゃうと、戻るのが嫌になっちゃうから。ごくたまに行こうかな、と思うくらいですね。実家にも行きません。…絶対に帰ってきたくなくなるのが自分で分かっているから。

和也 実家がそんなにいいんだ?

飯田 そうですね。漫画があるし、ママもいるし(笑)。

和也 マザコンキャラになっちゃった(笑)。
それではサポーターの皆さんにメッセージをお願いします!

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飯田 僕が一番伝えたいのは、やっぱりマツさん(故松田直樹選手)のことですね。僕らはマツさんを失ってしまった。もちろん、僕らに責任は取れないけれど、僕らにも出来ることがあると思うんです。AED普及マッチをしたり、僕らが声を発し続けることで救える命もあるのではないかな、って。だったら声を挙げ続けるべきだろうと。サポーターの皆さんも大好きなマツさんのことを忘れずに、僕たちと一緒になって何か出来ることを探していきましょう!

和也 松田選手の件は本当に胸が痛むけれど、だからこそ意味があるものにしなければならない、という思いはあるよね。

飯田 そしてもうひとつ、今シーズンに掛ける意気込みもあります。これから日々、暑くなる季節を迎え総力戦になるのは間違いありません。でも、その暑い季節を僕たちは自分たちのものにしなければならない。そのためのトレーニングもしてきたし、そこで結果を残す準備もしてきました。そんな僕たちと一緒にサポーターの皆さんも是非、戦ってほしいと思います。そして、チームが勝利したら一緒に喜んでください!

和也 アツいメッセージをありがとうございました!飯ちゃんの活躍に期待します。頑張ってください!

飯田 ありがとうございます!和さんもまた一緒にやりませんか(笑)。

和也 じゃあ、勝っている時のロスタイムだけなら出てみようかな(笑)。ありがとうございました!

飯田 ありがとうございました!

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飯尾和也

Interviewer  コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表