【試合レポート】第1節 横浜FC戦 ※無料配信
取材日:2017年2月26日
横浜 1−0 松本
ニッパツ三ツ沢球技場/13,244人
得点【横】野村(16分)
警告【松】パウリーニョ、セルジーニョ、ヨソンヘ、飯田
山雅 2年連続の黒星発進
【評】山雅は2年連続で黒星発進を強いられた。序盤からロングボールを多用する相手に対して後手に回り、攻撃の形をなかなかつくれない。そして16分、横浜FWイバを起点とした攻撃からミドルシュートを決められて失点。アディショナルタイムに田中が強烈な枠内シュートを放ったのが唯一の見せ場だった。折り返した後半も、横浜の守備的な陣形を効果的に乱すことができず時間が進む。65分以降に宮阪、三島、志知と攻撃的なカードを切って打開を図ったものの、決定機を生むには至らないまま。巧みに絡め取られ、試合終了のホイッスルを聞いた。
序盤に手痛い失点 苦難の船出
J1昇格へ不退転のシーズンにもかかわらず、重苦しい船出となった。山雅は序盤に一瞬の隙を突かれて先制点を許すと攻撃も振るわず、シュートわずか6本の無得点。先発したキングカズ50歳の誕生日に白星をプレゼントする格好となってしまった。「残念ながら自分たちの力を出せなかった。特に前半はゲームが分断され、攻守とも向こうのリズムになってしまった」。反町監督も苦しげに言葉を絞り出した。
横浜FCの攻撃は単純明快だった。ロングボール主体の攻めで前線のイバに集め、そこを起点に展開していく。「開幕戦ということもあって相手がリスクを回避してかなりシンプルに攻めてきたし、イバ選手にボールが収まってしまった。放り込みに屈したわけではないが押し込まれてしまった」と飯田。効果的な攻撃は数少なく、10分にヨソンヘの縦パスを起点にシュートまで持ち込んだワンシーンくらいだった。
そして16分、やはりイバがボールを収めた局面からミドルシュートで先制ゴールを許す。決めた野村直輝のマークに付いていた飯田は「組織としては守れていたのに、僕のところで失点してしまったのが一番悪い」と責任をかぶったものの、それ以前にフィルターをかけられた可能性があるのも事実。実際にGK鈴木は「失点は誰が悪いとかじゃない。ああいう場面を作らせてしまったこと自体がチーム全体の責任」と厳しい表情で振り返った。
折り返した後半、横浜FCは1点を先行したことで重心を下げてきた。「6−2−2みたいになってしまったらスペースはない。崩すのはセットプレーしかない」と指揮官。前線と中盤の息が合わない場面も散見され、1トップの高崎は「攻撃陣の距離が遠かったし狙ったようなボールが入って来なかった。もっと引き出せるようにしたいし、自分がボールに触って起点にならないといけない」と唇をかんだ。頼みのセットプレーもCKが前後半3本ずつと少なく、打開策が見つからないまま試合終了となった。
収穫は新たな面々がピッチの上で一定の存在感を示したことだろうか。新加入のセルジーニョは78分にドリブルで仕掛けてチャンスを演出したほか守備にも奔走し「特に守備の部分では、自分にとって良いゲームだった」と汗をぬぐった。大卒2年目の志知は82分に田中との交代でリーグ戦初出場。自身は「右サイドなので中に切り込んでのシュートと縦に仕掛けてのクロスが求められていたと思うが、得点に繋げられなかった」と唇をかんだが、今後への可能性を感じさせた。
三ツ沢に駆けつけた約6,000人の大サポーターと勝利を分かち合うことはできなかったものの、シーズンは始まったばかりだ。「我々の試合でなかったことは認めざるを得ないが、ここから這い上がっていくのが松本山雅。アウェーが2試合続くが、持っている底力を出し惜しみなくやりたい」という指揮官の言葉通り、次節の愛媛戦で初白星を飾りたい。
GK鈴木 初のリーグ戦出場で奮闘
耐えて出番を待ち続けた31歳がこの日、晴れ舞台に立った。
山雅はGKに加入3年目の鈴木をリーグ戦で初めて起用。16分に鮮やかなミドルシュートで失点し、自身も「ちょっとバタバタしたところもあって、そういう部分は改善していかないといけない」と振り返ったものの、それ以外の場面ではおおむね危なげなくゴールマウスに鍵をかけた。
特に74分はビッグセーブを披露した。DFのパスミスを奪われてイバと1対1と絶体絶命のピンチを迎えたが、素早い飛び出しでシュートストップ。ようやく日の目を見た185センチの守護神は「今年にかける思いは本当に強い。これに満足せず、残り41試合も全部出られるようにしっかり練習していきたい」と力を込めていた。
編集長 大枝 令 (フリーライター)
1978年、東京都出身。早大卒後の2005年に長野日報社に入社し、08年からスポーツ専属担当。松本山雅FCの取材を09年から継続的に行ってきたほか、並行して県内アマチュアスポーツも幅広くカバーしてきた。15年6月に退職してフリーランスのスポーツライターに。以降は中信地方に拠点を置き、松本山雅FCを中心に取材活動を続けている。