【試合解説】第1節 横浜FC戦 ※無料配信

いよいよ2017シーズンがスタートした。今年もなるべく僕なりに選手の目線に立って試合を心理的、戦術的に振り返り、皆さんにサッカーの魅力を伝えていきたい。そして松本山雅をもっともっと好きになってもらえるように解説していきたいと思う。

試合の流れを決めた 重い先制点

さて、横浜FCとの開幕戦は残念ながら0−1で敗れてしまった。

この敗戦の中でも得られた収穫は何か。ポジティブな面も見られ、特に新戦力でシャドーの一角に入ったセルジーニョの動きが目を引いた。ボールが入ったときにタメをしっかりつくって何かしそうな期待感のあるプレーを見せていたし、守備でもフルタイムにわたって献身的に動き回っていた。今後に期待を抱かせるプレーぶりで、もっとセルジーニョにボールが入れば山雅はチャンスをつくれていただろう。

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今回は2シャドーの言葉をヒントに分析をしてみよう。セルジーニョは「良いポジショニングをしてボールを受けないとフィニッシュまで持ち込めない」、そして工藤は「僕とセルジーニョはもっとボールを入れてほしいと思っている」と語った。この2人にボールが入り、前向きでプレーする回数が減ると山雅のチャンスも必然的に少なくなってしまう。さらに工藤は「相手の守備が引いた中でスイッチが入らないと攻撃の形がないし、僕のイメージだとパスのテンポが一緒で相手もついて来やすかった」と続けた。

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16分、イバが起点となり野村のミドルシュートで失点

そうなってしまった大きな要因はまず、先制点を与えてしまったことだろう。16分。逆にこの日最初に迎えたピンチから横浜FCにシュートを決められてしまう。バイタルエリアに縦パスを通され、要注意人物であるFWイバに起点をつくられ、そこからパス2本が繋がって再びイバへ。さらにシュートの精度の高い野村に前向きでボールを持たれ、ペナルティーエリア外からのゴールを許した。

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特に硬くなる開幕戦で早い時間に先制点を与えたことで、山雅は一人ひとりのプレーが慎重になったように映った。昨季の好調時のように、大胆に縦パスを入れたり、サイドチェンジしたりするプレーが少なかったように見えた。工藤の指摘する「スイッチ」とは鋭い縦パスを入れることで攻撃をスピードアップさせることだが、これには副次的な効果もある。縦パスを入れて相手を集結させると外が空いてきて、結果的に高い精度のクロスボールが配球されるのだ。

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10分、ヨソンヘの縦パスが起点となり高崎がヘディング

実際に先制点を与える前には、去年から継続して取り組んでいる後方からのビルドアップからスイッチを入れ、決定機に近い形を作り出している。10分。自陣から繰り出したヨソンヘの縦パスで攻撃のスイッチが入ると最終的に右サイド深くに橋内が侵入してクロスを上げ、高崎のヘディングまで繋げた。この一連の攻撃では橋内が右ウイングバックの田中の外側を追い越して深い位置からクロスを上げているが、これは得点を強く匂わせる楽しみな形だろう。

攻撃の「スイッチ」 どう入れるかがカギ

その縦パスを入れるために横方向にもボールを動かすのだが、そのパスも「各駅停車」ではなく、大胆なサイドチェンジなどで相手を揺さぶったりワンタッチプレーを入れたりすると相手に隙間ができ有効な縦パスが入る。さらに、縦パスを入れるには目に見えないメンタル的な「自信」も必要なのだ。先制できていれば一人ひとりが自信を持ってプレーできるため、試合の展開も大きく変わりチャンスもおのずと増えていたはず。飯田の「ゼロで抑えていればもっと(攻撃の)幅が広がったと思う」という言葉がそれを裏付ける。

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もう一つ、山雅がチャンスを作り出しているときの特徴がある。相手の最終ラインの背後に走るフリーランニングでラインを押し下げることでボランチなどとの間にスペースを生み、そこへ縦パスを入れてチャンスをつくり出してきたのだ。そのためにも、まずは背後を積極的に狙うとスイッチを入れやすくなるかもしれない。

外から言うのは簡単だがピッチで円滑に行うことは本当に難しい。しかし、今年は相手が昇格候補である山雅をリスペクトし、引いてブロックを作ってくるチームが多いと予想することもできる。結果的には昨季と同じ0−1からのスタート。だが昨季のこの時期と違うのは、ボールを動かしながら相手を崩す攻撃は積み上げてきたものがある。それだけに修正もスムーズにできると思うし、何より先制点を取るなどキッカケさえつかめばまた昨季のような「負け知らず」の状態になれるのではないだろうか。

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そして開幕戦の三ツ沢でも山雅サポーターの熱い声援は健在だった!今年も選手と共に戦う姿を見て熱くなれた。アウェイ戦が続くが、まずは次節。「One Sou1」で今季初勝利をつかもう!

構成/大枝 令

飯尾和也

文章:コラソン 飯尾 和也

元 松本山雅FC センターバック。
ヴェルディ川崎、ベガルタ仙台、サガン鳥栖、横浜FCなどでのプレーを経て、2011年 松本山雅FCへ加入。松本山雅FCのJFL→J2→J1昇格へ貢献し、2014年シーズン終了後引退。 現在はメンタルサロン コラソンの代表を務める傍ら、講演会等も行っている。
Jリーグ通算311試合出場
U-16、U-18、U-19日本代表