【試合後コメント】名波 浩監督 第42節 長崎戦

――まずは試合の総括をお願いします。

ゲームの総括としては、まず横山をスタメンで使いました。コンディションがよくゲームパフォーマンスも非常によく、練習からコーチ陣が毎度毎度ゲーム形式の時にリモコンとして動かしていましたけど、自発的にもだいぶやれるようになっていましたし、本人も自信を持ち始めていました。春先に使ってもらっていた時期とはちょっと違うのではないかと思います。というのはボールに関わる回数が多かったと思いますし、ゴールに向かっていくシーンもありました。実際に3〜4回シュートチャンスがあって、思い切り振れたシーンもあって本人にとっては自信になると思います。前半の終わりくらいにあったカウンターからのファーストタッチで、持ち出しもパーフェクトだったのにシュートを打たなかったという判断で交代という決断をしました。本人にも「パフォーマンスはよかったよ」と言いましたけど、ビハインドの中でゴールに向かえず最終的にパスを選択したのがストライカーとしてどうなのか――を、ちゃんと自問自答しようねということを伝えました。

ゲームとしてはビハインドで先制点を取られてしまって、前がかりになっているところの背後でピンチになっていたかもしれないし、もっと言えば右サイドの野々村の背後をだいぶ使われていて嫌な時間帯が続きました。それもこれも自分たちのポゼッション、オンのプレーが雑すぎたのと、クリアもしくはセカンドボールの拾い合いになるであろうヘディングのパスの質の差が前半は出てしまったなと思います。

後半は前がかりになっていましたし、15〜20分くらいまでガマンしようかと思ったんですが、思い切ってシステムを変える選択をしました。2トップ2シャドー1アンカーにして、セルジーニョと河合を並べて稲福を入れると。2点目の失点はもちろん痛いものでしたけど、その前に1点返したのでだいぶチームも勢い付いていました。それからセカンドボールへのアプローチが甘かったときに2シャドーが追いかけた中で稲福が何度も何度も刈り取って、もしくは刈り取れなくても相手のスピードを殺すようなアプローチができて、攻守一体のチームが躍動感を持って最後の残り30分くらいはやれたんじゃないかと思っています。

(シーズンを)総括すると、自分が就任する前とか後という分析自体を僕自身がしていません。年間を通じて降格したのは間違いなく僕の責任です。では分析したのは何なのかというときに、「走り切る」「諦めない」「サボらない」という松本山雅らしさが欠落していた時期があったということと、ケガ人の代わりに出た選手のパフォーマンスが、チャンスをもらった自覚や自負が少し欠如していたのかなと思います。何回かチャンスをもらった中でも生かした選手が少なかったと思います。実際に生かせたのは宮部であったり榎本であったり。あとはケガとの兼ね合いで出入りもありましたが、もっともっと底上げという意味では出てこなければいけなかったですし、常に交代でプレー時間が少ない選手だったり、スタメンとベンチ外を繰り返したり。その意味では年間を通して高いパフォーマンスをキープできていた選手はほとんどいないと思います。

ここから自分たちの反省を生かすという意味では、やはりバックパスや後ろ選択をしたときに、それを受けた選手がミスしてしまって結局大ピンチを迎えて失点してしまう。きょうの2点目もそうでしたけど、何度もある。これだけ言ってもこれだけ練習をやってもなるということは、問題が大きく一つ挙げられると思います。明日の最後の解団式では選手たちにキツく伝えたいと思っています。

来年4クラブ降格で間違いなく史上最強のJ3リーグになると思います。レベルの高いJ3リーグになります。このクラブは日本でも有数のサポーターと、コロナ禍でなければ集客も圧倒的にチームの成績にかかわらずあったと思います。その熱量は間違いなく選手の後押しになるし、クラブを大きく支えてもらえるものだと自覚しています。

それとは裏腹に選手の何人かが言っていたのは、来季J3で対戦するクラブの選手たちが「早くアルウィンに来たい」と。なぜならサッカー専用のピッチで、有観客なら収容人員、設定されたものほぼパンパンで戦えるから、1.5倍のモチベーションがアウェイクラブは見込めるというのが一つ。もし声が出せて大声援があるのなら、コミュニケーションと伝えてきた中で選手の会話が声援でかき消されることも多々あるでしょう。満員のスタジアムでやったことのある選手が少ない。こういったものがパワーバランス的にどう出るかは未知数。選手たちは1試合、1分、1秒たりとも簡単なゲームはないことは自覚していると思うので、自信を持って臨みたいです。そうは言ってもサポーターの後押しと熱量がなければこのクラブはいるべきところにいられないし、もしくは高望みもできないと思うので、しっかりそういったものをみんながわかった上で戦っていければと思っています。

――セレモニーの挨拶や今の総括も含めると、来年を見据えているように受け止められますが、そういう理解でよろしいでしょうか?

まだハンコは押していないですが、クラブからの打診も含めてやりたいと思っています。たとえ2階級降格があってJ4とかJ5があるにしても、もちろんやるつもりでいますし、それくらいの覚悟を持ってここに来ました。

――横山選手や稲福選手の成長についてはどう受け止めていますか?

やはり10〜15試合前に今のパフォーマンスを彼らが発揮していれば、残留争いでキワキワのゲームではなかったので、もう少し早くトライできたとは思います。ただ彼らは彼らで自分たちが置かれている状況の中でやるべきことプラスアルファを真摯にやっていてくれていました。サッカーノートの文面を見ても、言われていることや一緒にユニットを組んでいる選手の特徴を把握した上での反省やコメントなどが見えています。その上でかりがねのピッチで非常にパフォーマンスよくやっていたので今回はチャンスを与えました。

決してこれは来年を考えてやったわけではなくて、トータル的に見れば自クラブ育ちの選手をもっともっとピッチに送り出さなければいけません。ただ単に「自前の選手だから使おう、ベンチに入れよう」ということではなくて、パフォーマンスがそろってきたとき、ライバルを上回ったときに初めてチャンスを得られるという選手間の競争意識はあると思います。その中で一つ看板を背負わなくてはいけないのは、自前の選手だというところが彼らにはあります。(横山)歩夢は高卒ですけど、稲福は育成組織の選手でU-18から初めてそのままストレートでJリーグにデビューした選手になりました。ボールボーイや担架を運んでいた育成組織の選手、もしくは見ていたジュニアユースの選手たち希望の光になると思います。しっかりクラブとして受け止めて、また後に続く選手たちが出てこなければいけません。長崎はスタメンのうち7人が自前の選手で、そういうクラブが上にいます。(3位の)甲府も8人前後。それはしっかり見習ってやっていかないといけないと思います。

――来季のJ3についてイメージしていることはありますか?

J3の監督さんの戦い方や選手の特徴を把握しているわけではないのでなんとも言えませんが、やっぱり積み上げたものをやり切らないといけないですし、常に選手には考えることを課題として与えてきたいと思います。もしかしたら4バックかもしれないし、もしかしたら3トップかもしれない。選手が柔軟にくみ取ってもらって、自分自身が成長してクラブの力になるような空気感、環境を与えていきたいと思っています。

――半年間松本にいて感じた、この地域の独自性を踏まえてやりたいチームづくりなどがありましたら教えてください。

何クラブも見ているしサポーターとの会話もしたりしますが、このクラブに独特なのは、クラブに対する思いが強く、生きがい、生きる活力、生活の一部になっている感覚を強く感じた半年でした。ジョギングしていて、レストランで食事をしていて声をかけられることも多々ありますが、それ以上にピッチで応援してくれる姿や練習場に来てもらっているときの感覚が、他のクラブにはないと思っています。松本市と信州の熱量を下げたくないという思いでここに就任しました。おそらく期待を込めてですが、ステージが下がっても皆さん(の熱量)は落ちず、我々を見捨てることはないだろうなと思っています。

――見捨てられないためには、まずピッチでパフォーマンスを発揮することが前提となります。その意味では今シーズンはルーズさをどうしても排除できず、きょうもそれが出てしまいました。その点についてはどうアプローチをしていきたいですか?

一つずつ映像を見せながら、フィードバックの重要性をもっともっと選手に感じてほしいです。同じような失点が繰り返されたり、同じようなシーンが繰り返されたりするのは、10万人が入ったワールドカップ予選で「ここで勝てば本大会に出られる」とか「勝てばワールドカップに手が届く」とか、そういう感覚じゃないという表れだと思います。そこはもっともっと強く言っていきたいです。単純に人を入れ替えるという手立てはあるけど、なぜ同世代の人間が同じポジション(センターバック)にこれだけいるのかということを考えると、やっぱり成長を促す方が僕としてもやりがいを感じます。こればかりはクラブの判断もあるので一概になんとも言えない部分はありますが。