【試合後コメント】名波 浩監督 天皇杯1回戦 北陸大学戦 ※無料配信

――まずは試合の総括を。

ゲーム前には選手たちに、2015年の(天皇杯の)ジュビロ対北陸大学のサッカーノートを見返した時に「球際や対人が悪い」とか「奪った後の質が悪い」とか「セカンドボールが拾われている」ということが書いてあったということを伝えました。映像以上にプロとの戦いというモチベーションでやってくるし、簡単なシチュエーション、簡単な時間が長くなるかもしれないですが、一瞬の隙を必ずついてくると伝えた中では、そのままのゲームになったと思っています。

1失点目は深いエリアに入った自分たちのマイボール時に、ボックス内で榎本が(吉田)将也に差しパスを出して、クロスを上げてクリアされてからのカウンター。自陣のボックス内で稲福のコントロールミスからの失点。2失点目はバイタルにコースを限定できていましたが、宮部がツルっと滑って2対1を作られて、外を使われてのマイナス。得点を取った8番の選手(平野旦敏)に対しても遅かった。こういう失点はもう食らうのをやめようと昨シーズンから散々言っていましたが、きょう露呈したなと。それから405分続いていた無失点が止まって、大学生に決められてしまったので、これがサッカーだと改めて感じました。

とはいえ、普段リーグ戦に絡めない選手たちが、立ち上がりから30分くらいまではテンポ良くボールも人も動いていました。変な色気を出さずに、綺麗なサッカーをやろうとせずに、相手が嫌がるタイミングでクロスを上げたり、ボックス内に侵入したりする回数が非常に多かったです。攻撃のところでクロスの精度やラストパスの精度を除けば、もう少しボックス内で人数が関わった時にアイデアのあるワンツーとか、個の突破が生まれても面白かったと思います。シュート数が手元のデータで11か12で、15本以上打てるような内容のゲームだったので、少し少ないなと感じます。選手たちには冒頭も言いましたが、天皇杯というのは非常に難しいゲームなので、まず勝てば良い。次にリーグ戦で戦う今治が沖縄SVに完敗しているので、それも含めて勝ち上がってみんなに静岡に乗り込もうと伝えて解散しました。

――クロスに飛び込む形や中盤の推進力は、立ち上がりから30分くらいまであったと思います。それが少しずつ落ちたのは、相手の影響なのか、自分たちができなくなってしまったのか。

30分ずっとハードにやった中で疲労もあって、少しゲームをコントロールしないといけないのに、まだそれに固執してやっていたかもしれない前線と2列目。そしてボールを回しながらマイボールで休もうと思っていたDF陣だったかもしれないですし、そういう意思が整わなかったのは僕自身での責任でもあります。攻撃と守備は表裏一体で、一体感を持ってやっていこうという中では、コミュニケーションが不足していたのも事実ではないかと思います。

あとはセカンドボールを拾えなくて、こぼれたボールが相手に行って、ボックス脇を使われてそれを食いに行ったのに入れ替わったようなシーン。特に(自分たちの)左サイドで立ち上がりにも何回かあって、そこで北陸大学が自信を持ったのと、0-2からほぼノーチャンスの中で1点を決めて前向きになってしまったところ。後半頭の野々村のヘディングシュートが入っていればゲームは終わったと思いますが、ああいうところを決め切って、もう少し楽にゲームを運べるように。それはリーグ戦にも通ずるものがありますが、自分の得意なプレーで苦しめてしまったところはあったと思いますし、それが同点ゴールに繋がってしまいました。

ただ、田中パウロは体のキレがいま一番良いかもしれない中で、ボールワークが良かったですし、プレーの選択も悪くなかったですし、シュートの意識もあったので2ゴールをきっちりと決めてくれて、それはチームにとってもプラスになるのではないかと思います。

――田中パウロ選手以外にも、リーグ戦を見据えた中で、戦力の台頭が期待された試合でした。その中では収穫はありましたか?

稲福、(山田)真夏斗あたりがチームの役割をやりながらも、自分の良さをどう出していくかというところだったと思います。稲福は90分の中で良い時と悪い時があって、ただ昨季はほとんどゲームに絡んでいない中では自信を持ってプレーしたところと、チャレンジとセーフティの境界線もよく見えたので、ゲームにはしっかりと入れていたかなと思います。

真夏斗はボールを50回弱触っていますが、プレースピードが遅い。止めて、こねて、パス。ではワンタッチパスが少なかったかというとそうでもなかったですが、顔を出しに行った時にバックパスで戻すだけとか、出し入れのポイントになっているだけで、もう少し自分の良さを出すという意味では足りなかったと思います。リーグ戦という観点でいくと、もっと前に推進力を持ってほしいですし、もっと危険なエリアに人が顔を出してくれるようなシーンが増えてほしかったです。

将也に関しては前半20分、25分くらいまではどんどんカットインして、左サイドにも顔を出していて。完結はしなかったですが、相手に「どこまで行くんだ」と迷わせるようなプレーが連続的にあったと思います。

――61分の2枚替えの意図はいかがですか?

中盤のエリアでプレースピードが遅くなったのと、真夏斗と(山本)龍平のところでプレーエリアが下がりすぎていました。下がってボールを受けるのは構わないですが、その後にもう1個前にスピードを上げてプレーしなさいと伝えましたが、その連続性がなくなってきたのが一番大きな交代の要因です。