【試合後コメント】名波 浩監督 第10節 今治戦 ※無料配信
――まずは試合の総括をお願いします。
相手の両ワイドが、例えば鹿児島などのようにライン際に張っていて、自分たちのサイドをピン留めするような選手ではなかったです。それから事前にサイドチェンジもそんなに多くないという分析があったので、3バックの縦ズレするスライドで十分に守れるのではないかという認識の中でゲームはスタートしました。セカンドボールの反応と、それから奪った後の前選択。ちょっとラフなボールが多かったですけれど、自分たちのテンポの良さが出た立ち上がりだったと認識しています。
1点を取ってからはサイドを変えられるシーンが多くなってきて、自分たちのブラインドサイドはウィークでもありストロングでもあるかもしれないんですが、そこを使われることが徐々に出てきたので、ボールアプローチにもう少し行こうと。特に菊井と榎本のところでシンプルに簡単に出させないようにアプローチに行こうという中で、やっとスライドも追いついてきたという時間に自分たちのミスで失点してしまいました。
あれでちょっとリズムが狂った部分があって、他でも自陣でのミスがあって決定的なシーンを作られてしまった前半だったなと。ただ、相手のミスに乗っかった菊井のJリーグ初ゴールがチームに勇気をもたらせてくれたと思いますし、この暑さを踏ん張れるというか、かいくぐれるというか、そういう時間になったんじゃないかなと思います。
後半は決していい内容ではありませんでした。まずはマイボールを自分たちのボールにできなかったところ、それから連続性のあるアプローチの中でセカンドボールが拾えなくなってきてしまったところ、それから疲れて声が出なくなったので、重なったアプローチで一瞬怪しいなというシーンが何回かあったところ。この3つが大きく今後の課題になると思います。
ただ選手たちに今伝えたのは「きょうに限り許す」と。やっぱりこの30度あったほぼ無風の中で、日陰のないピッチでよく90分間耐えたと思います。それでも最後、住田が足をつった後も、(山本)龍平、住田、ルカオなども含めて既存の出ていた選手とフレッシュな選手がアプローチで囲みに行こうとしていた。そこが攻撃的な守備というものを90分間貫いてくれた証拠だと思います。スタンドはちょっとザワついていましたけれど、全く怖さがなかったのは最後に橋内がラインを上げてくれて、ブラインドの中川(風希)がヘディングでゴール裏にやったシーンですけれど、蹴った瞬間にオフサイドだと僕もわかっていました。あれも暑い中、ラインをしっかりと橋内中心にそろえた結果だと思うので、ああいったところでも戦術が浸透しているんじゃないかと思います。番記者の皆さんにはいつも言っているかもしれないんですけれど、「ぬるっと3ポイント」という感じです。
――榎本選手シャドーに入ったと思います。「急遽」というよりは彼も最近シャドーをやっていて、得点シーンも本来の(FW起用の)彼であれば最初のところで競りに行っていると思いますが、シャドーだからこそあそこで背後を狙って、そこが先制点につながったと言えるのではないでしょうか?
そうですね。スリッピーさをうまく利用したところもそうですけれど、後で(榎本)樹に聞いてくれたらわかると思うのですが、「アングルをとにかく作っておけ」と。(小松)蓮と一緒に平行になったらたぶん背負うことが多くなるので、後ろから出ていくのが自分のストロングと考えるのであれば、同サイドを再度走り抜けようがダイアゴナルに走って左サイドに抜けようが、蓮より後ろから出ていけと。それを忠実にやってくれた結果、あのゴールシーンが生まれたんじゃないかと思っています。
――ゴールとは関係ないですが、前選手のゲームコントロールや戦術眼、球際の読みがかなり効いていた印象があるのですが、そのあたりの評価はいかがでしょうか?
特にセンターバックからワイドに出て誰かアプローチに行ったときの1対2を作る速さが、ボールホルダーの選択肢を消すような、それからボールホルダーから見えないアングルで顔を出しにいって、体それから足等にぶつけられる。パウリーニョを見ているようなダッシュの仕方。あとは奪った後の質という意味では、彼も課題を抱えていると思うのですが、それだけにとどまらず、最後シュートブロックなり、クロスへのアプローチも決して怠ることなく90分間やり続けました。きょうは本当にキャプテンらしいパフォーマンスのリーダーシップとコミュニケーションのリーダーシップをしっかり取ってくれたと思います。
――きょうはこれだけの熱さになることが想定されていた中で、後半本来であればもっと自分たちでボールを持つことで疲労の消耗度を下げたい青写真やプランもあったと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか?
やっぱり島村(拓弥)のところと楠美(圭史)が前を向いたところがやっぱりスイッチになってしまって、もちろんインディオとか近藤(高虎)とかワイドの選手がボールを前向きにもらった時もそうですけれど、「スピードが上がるな」という回数は前半より後半のほうが圧倒的に多かったんじゃないかなと思います。ドリブルに対してはがされたりかわされそうになったりはしましたが、ボールホルダーにしっかりくっついていた分、いい選択を消していたという意味では評価できると思います。
あとはマイボール時に「しっかりとマイボールだよ」「ここは動かしながら休もうよ」ということが前半はできていて後半はできなくなっていたので、ファーストプレイの質かなと。奪った後のファーストプレイが悪かった。逆足についてしまったり、受け手が準備できていなかったり。そこらへんの決して軽くない問題がまだまだ起きていると思っています。
――今言われた守備の部分がある程度機能した部分もあって、今季初めてカードが出ない試合になりました。特にカードらしいプレイも特になく、後追いにならずにできていた結果ではないでしょうか?
今治は戦術がしっかりと構築されていて、FKをクイックでやられる可能性もありました。スローインも含めて。だから余計なファウルをして自分たちが心だけ休んじゃってスッと始められるよりは、緊張感を持ったままボールホルダーから離れずにやり切ったことが、そういうファウルが少なくカードがなかった要因かなと。最後は(今治の)橋川(和晃)監督が「我々のベンチが非常にクリーンだった」と言ってくれたので。他のクラブは文句が多かったり、それから四審、副審に対しての抗議が多かったりしたかもしれないのですけれど、「しっかりと教育されていますね」と褒めてくれました。そのことは村山を中心に伝えました。
――菊井選手が10試合目でプロ初ゴールを決めました。改めて彼への評価をお願いします。
本人もものすごく欲していたと思いますし、得点に絡むアシストも含めてですけど、ゴール前で違いを出せる選手という意味では、他のゲームでも(ペナルティー)ボックスの中に入って得点シーンには絡んでいましたけど、「自分が取る」とか「自分が味方選手に取らせる」とか実数がつきます。試合前にメンバー表を見たときに「0」が続くより「1」が入ることによって、彼自身のメンタルが変わってくると思うので、今後さらに飛躍してほしいと思います。
同時に(横山)歩夢がいない中で複数得点を取れたというのも、ここ何試合かは(得点)ゼロが続いてたので自信になるのではないかと。12時キックオフだったので多分フランスは7時間マイナスで朝の5時。試合前の合言葉として「おそらく歩夢は寝てるけど、試合が終わった後にいい報告を届けよう」というのは選手たちに伝えたので、それができたのはよかったと思います。
――これで10試合終わって6勝3分け1敗。この成績への受け止めと、先ほど戦術的な浸透もあったり、ファーストプレイの質のような、簡単ではない課題も話していただきましたが、今の時点でのチームの完成度というか手ごたえも併せて教えてください。
僕の口から「ぬるっと勝つ」という言葉が出ている間は、やはり確固たる強さがないと思います。もちろんたとえ昇格したとしてもJ2で苦しむと思うので、もっとゲームをコントロールしたり、自分たちのストロングを常に出せるようにしなければいけません。そういう意味ではこの暑さでも走ってクロスオーバーをかけて、どんどん後ろからリスクを冒してでも出ていく。それを継続してやっていく。出し惜しみせずに、自分の体力がなくなるまで、足がつるまでしっかりとやり切る。それをもっともっと浸透させなければいけないと思います。
あとはメンタル面。これだけ負けてないというのは非常にいいことですが、やっぱりホームで勝てなていなかったことがあります。今日も7,000人以上のお客さんの中でホーム2勝目が達成できたというのはチームとしても非常にいいことだと思うので、また一度カップ戦も含めてホームを離れますけれど、負けずに帰ってきたいと思います。