【試合後コメント】名波 浩監督 第12節 藤枝戦 ※無料配信

――まずは試合の総括をお願いします。

戦前の予想でボールは握られると思った中で、立ち上がりは我々のほうが背後の意識があったり、セカンドボールからの展開も速かったりしたので、相手に捕まることもなく、判断も良くゴール前まで行けるシーンがありました。12〜13分くらいからセカンドボールを拾われるようになって、相手の可変に対して、特に我々の右サイドで想定よりも秋山(貴嗣)が出てくることが多くて、そこで住田が後ろに引っ張られる。逆に下川がサイドでチャレンジに行ってしまって、ワンツーのコンビネーションだったりフリーランニングで剥がされることがあって、3バックに変更しました。25〜26分くらいでしたが、きょうは早く判断しようと自分で決めていたので、迷いなく変えられました。変えてからアディショナルタイムを入れて70分くらいは非常にコレクティブにできたと思いますし、まめなラインコントロールと中締めの徹底によって、相手に余分なパス回しをさせることができました。引っかけた後の質も後半は相手に脅威を与えるシーンが何回かあって、我々らしさが出たと思います。

ゴールシーンを振り返ると、1点目、2点目は両方ともクロスからです。クロスの練習を2月からさんざんしてきて、前節(鳥取戦)は大きな反省点として、クロスの質と入り方。入る人間のメンタリティを求めていこうという中で今週はトレーニングして、それが結果としてすぐに表れたのはよかったです。田中パウロのクロスを(前)貴之がボレーを打ったように、逆サイドからウイングバックが飛び込む形もずっとトレーニングしてきたことなので、ゴールこそならなかったですがシーンとしては素晴らしかったと思います。勝ち方としては、藤枝は攻撃的にメンバーの固定、戦術の浸透も含めて非常に良いレベルにある中で、完封できたのは自信になると思います。手元のデータだと被シュート数も少ないので、そういう戦い方ができたのも自信になると思います。

試合前には選手の前で「(横山)歩夢が次に帰ってくる」と。もしこの試合に負けて歩夢が帰ってきたらなんと言うか。我々スタッフも「僕がいないからこうなった」と言われるのが目に見えていたので、それだけは言われないように頑張ろうという一致団結のもとでこの12節は戦えたと思います。10戦無敗、それから勝って愛媛に乗り込めるのは良い兆候だと思います。

――雷雨で82分間の中断がありましたが、ハーフタイムにはどうアプローチしましたか?

最初にマッチコミッショナーもしくは実行委員からもらったタイムスケジュールから徐々に変更がありました。個人的には前半の振り返りをしてしまっていて、ハーフタイムに後半の修正点をボードに書いて伝えて、円陣も終わったくらいに「ちょっと待った」となったので、非常に難しい後半の入りになるだろうと想定していました。体が冷えるとか固まるのもそうですが、気持ち的なところの浮き沈みをどうコントロールするか。コーチ以下フィジカル、メディカルのスタッフ、もしくはメンバー外の選手たちが、ピッチに立つ選手たちによく声をかけてくれていました。最後に送り出すときにも「こんな経験をできるお前たちは幸せだ」「これを良い思い出にするのか、悪い思い出にするのかはお前たち次第だ」と伝えていたので、良い思い出として残ると思います。

――鳥取戦の反省点として、シンプルにプレーできないことがありました。きょうは空いている味方を使いながら、シンプルにゴールへ向かえていたのではないでしょうか?

前半の2本の下川のクロスは、1本は(小松)蓮に合って、相手がギリギリでクリアしたCKになりました。そこも何のストレスもないパーフェクトなボールが2本とも入って、ボールスピードがないので相手もクリアが飛ばない。2本目はボールスピードがないけど嫌らしいところに落ちたのでCKにするしかない。そういうシチュエーションもそうですし、PKのシーンの(外山)凌の左からのクロスと、2点目のクロス。2点目の前に住田がクロスオーバーしたところを凌が無理やりクロスを上げて、DFに当てるシーンがありました。その後に凌にアドバイスして、クロスオーバーした人間をシンプルに使って、どうせ凌がクロスを上げる意図で前に抜けていくのだから、一回クロスオーバーに出ていくようにといった矢先のゴールシーンでした。ベンチ側とピッチ側が合致した素晴らしいゴールだったと思います。

――戦術的な修正をしつつ組織的に守り切ったDF陣への評価はいかがですか?

小笠原(佳祐)が出てくる回数が多い中で、そこを意識して消せたと思います。小笠原が下がった後も水野(泰輔)が張るようになったりして、嫌らしいところに立っていると思いましたが、菊井と凌の受け渡し、それから住田なり安東のスライドの速さで、一番良い選択肢を消すということを徹底できたので、そこからスピードに乗られることもなかったです。ボックス脇のところで2〜3枚重なって崩されそうなシーンで、宮部なり安東がボックス付近でギリギリ体を入れてクリアするシーンもありました。ただ、手間をかけてくれればボックス内は準備できるので、あれはあれで自分たちが春先からやってきたことをしっかりとやってくれた成果だと思います。あとは被シュートが少なかったのは、良い守備、良いスタートポジションへの準備につながった要因だと思います。

――小松選手は鳥取戦でビッグチャンスを生かしきれなかったところもありました。きょうは2ゴールを決めましたが、評価はいかがですか?

田中パウロも小松もそうですが、歩夢が帰ってくるという意味ではラストチャンスだと思っていたかもしれないです。ルカオが傷んで来週は戻ってきますが、今週は競争意識の中で「俺が、俺が」という気持ちが強かったところで結果を出してくれたので、非常に良かったと思います。相手の(須藤大輔)監督も「19番は別格だった」と言ってくれたので、彼も自信がつくと思います。あとはきょう非常に良かったポストプレー、エアバトルのところをどのゲームでも同じようにやってほしいと思いますが、中断が1時間25分あったのに最後にバテていたので、そこはどうにかしてほしいです(苦笑)。

――サポーターは雨に打たれながら再開を待っていましたが、勝利を届けられたことはどう感じていますか?

(前半の)映像を確認しながら手拍子や太鼓もよく聞こえてきましたし、5,000人以上の方に雷雨が予想される中で来場していただいて、本当に頭が下がる思いです。サポーターの皆さんが望んでいるかといえばそうではないかもしれないですが、コイントスに勝って陣地を替えているホームゲーム。後半は守備陣の背中を押してくれている状況で、完封のゲームが多くなってきているので、心から感謝したいと思います。次節は遠方の愛媛ですが、たくさんのご来場を期待しています。良い結果を残して、このクラブに関わった村主(博正)率いる、いわきFC戦に臨めればと思います。