【試合後コメント】名波 浩監督 第23節 愛媛戦 ※無料配信

――まずは試合の総括をお願いします。

戦前の予想通り、相手の動き出しとポゼッションはセカンドボールを拾った後も非常にリズムが良かったです。立ち位置の変化を起こして改善した中でサイドバックがインサイドから急に上がってきたり、ボランチエリアでボールを動かしながら両ワイドの小原(基樹)と近藤(貴司)を使うリズムができていました。我々が前から追うのを諦めてしまうと、なかなか難しいゲームになるというのが前半の率直な感想です。

ただ、奪った後にしっかりとファーストプレーで前を向けたとき、それからプラスアルファでシンプルにサイドを変えたり、一つボールを飛ばす意識があったときは十分にチャンスが生まれたと思います。先制ゴールに代表されるように、右で作った後のシンプルな左への展開。それからクロスからの飛び込み。練習でやっていた通りの形が出て、そこまでは良かったです。

追い付かれてから僕も含めて反省しないといけないのは、少し落ち着きがなくなってゲームが壊れかけたところ。それでも選手たちはしっかりと勝ち越しゴールを目指してやってくれたと思います。前節この場で僕に強く指摘された、途中から入ってきた選手たちが、前向きにシンプルに献身的にやってくれました。決勝ゴールもそういった2人から生まれましたが、その10分前くらいから外山の左サイドのクロス、右サイドの下川から外山のボレーと深いエリアにボールを運べたのは、我々の攻撃のコンセプトがハマったから。決勝ゴールも彼らの特徴が出た良いゴールだったと思います。

逆に我々がピンチになったシーンというのは、セカンドボールを繋げたのに相手にロストボールを渡してしまったシーン。それから最後に大野がバウンドのカウントミスをしたように、自分たちのミスから一気に推進力を持たれてしまいました。ただ、それ以外はそこまでなかったと思うので、守備も最後まで粘り強くやってくれたと思います。

このゲームの重要性というのは、始まる前に鹿児島が勝っていて、ハーフタイムにいわきが勝った知らせが来た中で、自分たちが3ポイントを取らなければならない。「マスト案件」でしっかりと選手が3連勝という綺麗な形で繋げてくれたと思います。開幕戦以来の劇的な3ポイントだと思いますが、この(サンプロ)アルウィンではサポーターに取らせてもらった3ポイントが多い中で、きょうはサポーターにしっかりと3ポイントをプレゼントして、気持ちよく帰ってもらえたのではないでしょうか。

次節はアウェイ福島で移動も長いですし、横山がどうなるかわからないという中で戦わないといけません。そんなことも吹き飛ばすようなチームの上昇気流を止めないように、明日からしっかりと作っていきたいです。

――浜崎選手のクロスを榎本選手が決めました。両選手ともベンチを外れる機会もありましたが、彼らのここまでの歩みについては?

信用と信頼で言えば、開幕前から契約した選手たち全員に持っていましたし、練習でもそこまでレギュラーとの差をつけることなくトレーニングしています。選手の特徴を把握してほしいとか、コミュニケーションをいろいろな人たちととってほしいというコンセプトの中でやってくれていると思います。

2人に限らず、スタメンで出ていたのに外れたとか、ベンチに入っていたのに急に外されたとかいう中で、コミュニケーションはしっかりと我々は取っているつもりでいます。(榎本)樹に関してはあえてコミュニケーションを取らずに、言葉を悪く言えば3週間「放置」を決行しました。彼自身が気付いて居残り練習をしたり、壁に向かってストイックに思うことがあるであろうボールワークをして、自分自身のモチベーションを下げないように努力してきたのではないかと。やっとプロ4年目で気付いたと思います。自分の力量、なぜベンチに入れないのかという自問自答の中で、前節は守備で献身的にやってくれましたが、今節は攻撃の部分で結果を出してくれました。

18人以外のメンバーもしっかりと結果を出すように準備してくれていると思います。(横山)歩夢がいなかろうが、ビクトルがいなかろうが、パウロ(パウリーニョ)がいなかろうが、出た選手が3ポイントを持ち帰るという努力をすることがチームに浸透していると思います。

――いわき、鹿児島が勝っていて負けられない中で、こういう劇的な勝ち方をしたことは残り試合にも繋がるのでは?

いわきだって点がいつも取れると第三者が考えている中で、ずっとゼロが続いてヒリヒリしていたのではないかと。鹿児島に関しても中盤のトライアングルが出ていなくて、苦しい台所事情がある中でやってきたのではないかと。そこで3ポイントをきっちり取ってくるという強みが上位2チームにはあると思います。我々は上位の中では一番引き分けが多いチームですし、きっちり3ポイントを取るのをずっと続けていかないと離される一方。そこのメンタリティは僕ではなくて選手がしっかりと出してくれたと思います。

次節以降もこういう夢見心地なゲームが続いたらうれしいでしょうが、もちろん我々スタッフとしたら開始10分以内に先制して、前半のうちに中押しして、後半頭になってダメ押しできるようなゲームをやってほしいとは思います。

――前節と違って中盤でセカンドボールをかなり拾えて、そこからリズムを作れていたと思います。こういった戦いを続けていけたら大きいのでは?

細かいことは戦術的なことなので言えないですが、簡単にいうとスターティングポジションの徹底をやろうと。いつも誰がフラッと出ていって、そこの穴を使われたり、セカンドボールをそこの穴で拾い切れなかったりすることがあったので、そこは選手たちも理解してやってくれたと思います。2トップもそうですが、疲れているときに戻れないときこそダブルボランチが広範囲にわたって守備に加担するというところは、カズ(佐藤)もパウロも浜ちゃん(浜崎)も、最後にダブルボランチに戻したときの(中山)陸もやってくれたと思います。

――いまは大きな波に乗りかけているのか、乗っているからこそあの時間帯でのゴールが生まれたのか。

先週のロッカールームでの怒り方からいえば、乗っているとは口が裂けても言えないです。ただ、我慢強く3ポイントを取れていることが選手に自信という付加価値をつけていると思います。きょうも無闇なハイボールやロストボールがあまりなく、前節の反省が十分に生きたと思います。最後に(田中)想来がキープしながら(中山)陸に出したシーンがありました。陸は全然追い付けなかったですが、あれこそが前節にできなかった何気ないワンプレー。ああいう意図のあるプレーをやると選手たちは動き出しますし、そういうアクションをもとに考えることもありますし、時間の使い方も含めてサッカーらしくプレーできると思います。前節の反省を生かして18人全員が具現化してくれました。

――横山選手の現状についてはいかがですか?

肩の脱臼だと思いますが、脱臼にもいろいろな種類があるので、様子を見ないとわからない状況です。検査の結果次第です。

――彼が離脱したときにどう戦うかは一つのポイントだと思いますが、いかがですか?

ゴール数はもちろんですし、恐らく米澤(令衣)と1、2を争うシュート数で、ドリブルもリーグ1位ですし、いろいろな意味で相手にとって脅威を与えるような選手がいなくなると。それはイニエスタ、鈴木優磨、家長(昭博)がいなくなるのと一緒で、どこのチームもエース級がいなくなればそれは大きな痛手だと思います。それも織り込み済みでチームを作っているので、彼ではない特徴を生かす準備をするだけだと思います。