【試合後コメント】名波 浩監督 第31節 長野戦 ※無料配信

――まずは試合の総括をお願いします。

まずはダービーという熱のあるゲーム、ゲーム強度のある戦いに我々が勝ったという事実を皆さんに素直に伝えてほしいと思います。

内容を何個かピックアップします。まず前半は左サイドでの縦ズレが非常にスムーズで、圧力をかけるタイミング、それから相手のラフなボールに対してもマイボールにする意識が非常に良かったです。徐々に右サイドも連鎖して、そういう縦ズレとスライドが思うようにいって、相手がやりたいボール回し、動きたいスペースをことごとく消せていたので、攻撃的な守備ができたのではないかと思います。

そういった中で先制しましたが、2点目を取れないと苦しい展開になることをハーフタイムで言っていて、次の1点でこのゲームを終わらせることができるということも選手に強く伝えました。我々が悪かったというよりも、パルセイロの左サイドが特に躍動して、杉井(颯)、森川(裕基)プラス山本(大貴)だとかが絡んだときのパワーとリズムにだいぶ押し込まれてしまいました。失点シーンもそうですが、それ以外でも決定的なところを作られてしまったと思います。

後手になっても無理やり縦ズレしようとしていた右サイドをどうにか替えたかったので、野々村、宮部という同期の2人を入れて、彼らのあうんの呼吸でそこのパワーを抑えたかったのと、PJ(田中パウロ)に関してはここ何試合か非常に良いパフォーマンスを出しているので、攻撃のカードを1枚切ると。2トップをなぜ替えなかったかというのは、最後の切り札で2枚同時投入するタイミングを探っていて、相手がどういう交代をしているのかも含めてですが、スペースができる時間帯を探ろうと思いました。結果は自分たちがあまりリズムが良くならなかったので、最後は「前線でかき回せ」「とにかくアクションを起こせ」「とにかくゴールに向かえ」ということを言って送り出しました。

決勝ゴールは練習でやっている形なので、ルカオも普段はフルスイングしているようなシュート練習の中でもリラックスして打とうというところで、しっかりとゴールに流し込んでくれたと思います。その後は残り時間がアディショナル(タイム)も含めて10分前後あったと思いますが、体を張るところ、球際に行くところもスムーズで、ほとんど危険なシーンもなく終われたと思います。

ここで自分たちが手放しで喜べるほどいい順位にいるかと言ったらそうではないです。残り3戦、ましてやアウェイ2連戦が続く最後のヤマだと思うので、富山、宮崎としっかり6ポイントを取って帰ってきたいです。64チームのトーナメントは辛くもベスト16を突破して、さあ準々決勝という舞台になると思うので、いい準備をしたいと思います。

最後に、これだけのゲーム強度を生み出してくれたのは、現場スタッフはもちろんそうですが、松本山雅に関わる全ての方々、携わるボランティアも含めた全ての方々、それから両ゴール裏とバックスタンド、メインスタンドで緑を着て背中を押してくれた全てのサポーターだと思います。この勝利はそういった方々に捧げたいと思います。引き続き後方支援をよろしくお願いします。

――ここ2試合は逆転勝ちが続いていて、きょうも終盤に勝ち越し点が取れました。今まで欠けていた勝負強さが出ていると思いますが、どう感じていますか?

私は結果論はあまり好きではないので、プロセスを大切に今までチームを作ってきているつもりですし、そういう意味ではチーム全体の一体感が生み出したこの3試合の決勝ゴールだと自覚も自負もしています。山本龍平がリハビリからやっと走れるようになって、(田中)隼磨が部分合流できるようになって、ピッチで顔を合わせない選手がいなくなって全員がピッチに立てる状況になったという喜ばしい環境も、一体感をより強めていると思います。

あとは外的要因になるかもしれないですが、番記者の皆さんに関して選手たちからポロポロと聞いているのは、「あの人たちは本当に山雅が好きなんだ」ということ。その気持ちが選手にも乗り移って、気持ちよくピッチまでの流れが1週間できているのではないかと思うので、番記者の皆さんにも感謝しています。

ただ先ほども言いましたが、まだ何も得ていません。勝ち方うんぬんは山雅らしさが出ているかもしれないですが、最後に笑って終われるような努力をまた絶え間なくしていきたいと思います。

――パウリーニョ選手は途中交代が続いていましたが、きょうはフル出場でした。結果的に彼の良さが決勝点に繋がったと思いますが、彼を残した意図を教えてください。

安東に替えてもう少しモビリティを、というのは皆さんも何試合も見ているので、そう来るかなと思ったかもしれません。両天秤にかけたときに、2トップのパワーを重んじたところがありますし、とにかく右サイドを両方替えたかったので、消去法でどちらか一人は残さないといけませんでした。となれば榎本か安東かというところで、榎本の前線でのパワーを買って送り出しました。(榎本は)ゴールには繋がらなかったですが、大内(一生)に競り勝つくらいの気持ちの入ったゴール前での空中戦がありましたし、前線もしくは守備での空走りもあったかもしれないですが、貢献度はあったのではないかと思います。

――交代のタイミングを考えていたというところを、詳細を教えていただけますでしょうか?

一つは相手の左サイドの杉井と森川のところで、2対2の局面ができていてもボール状況が良いときに飛び込んで、前を使われたりはがされたりというシーンが多かったです。下川と篠原が縦ズレとスライドするところで、(試合前のホワイト)ボードに「Go or Stay」と書きましたが、結局行く行かないのジャッジをお互いにできていなかったなと。前半の途中に「とにかく余らず行け」と言ったところで成功体験があったので、少し遅れても行ってしまうシーンが続いて、軒並み相手に深いエリアに運ばれたり、クロスを上げられたり。そこを改善したかったというところと、森川の推進力と杉井のラフなクロスのタイミングというのは戦前からケアしたかったところなので、紅白戦であのメンバー、あの形でやっていました。もしデューク(カルロス)が出てきたときもそこのケアは宮部に頼むというところ。前回対戦のときは宮部がデュークを完封していたので、それも含めて交代に踏み切りました。

田中パウロに関してはダブルボランチのトップ下というのは彼にはまだ荷が重くて、守にわたってのポジショニングの修正などをできないところはあるかもしれないですが、1アンカー2シャドーになると攻撃へのタスクと自分が前向きに守備できるという利点を彼自身もよく理解しているので、あのまま突っ込みたいと思ったところです。勝ち越した後はダブルボランチに戻していますが、そのときはトップ下で、守備で少しワイドに行かないとならない、もしくは自分が相手のお尻を追いかけないといけないシーンが出てくるかもしれないと、きのう個別で捕まえて言っていました。そこは従順にやってくれたのではないかと思います。

――サポーターが作り出した雰囲気をどう感じましたか?

結果的に叩きのめされる可能性もあったので、一概に喜びひとしおとは言えないですが、難しいゲームになると思った中でサポーターの声と手拍子と熱量というのは間違いなく力になっていました。選手に「君たちは松本の街の誇りなんだ。松本の人たちの活力なんだ」「だから勝ったらその瞬間からスーパースターだ。レストランに行ってもコンビニに行ってもマンションでも、毎日のように『残り頑張ってね』『ダービー頑張ってね』と声をかけてくれる。それに応える義務もあるし、逆にそれだけみんなが支えてくれているという意味では、自信に変えていいのではないか。きょうはその自信を示すゲームだ」と伝えていました。その通りにやってくれたと思いますし、その通りの温度をサポーターが作ってくれたと思うので心底感謝しています。