【報道対応】神田 文之社長(2022.11.23)※無料配信
本日は皆さん、足元が悪いなかお集まりいただきまして本当にありがとうございます。そして1年間松本山雅の取材活動を通じて、多くのファン・サポーターの皆様に情報を届けていただいたこと、改めてクラブを代表して感謝を申し上げます。
このたび、2023シーズンに向けた話し合いを重ねる中で、今シーズンをもって名波監督との契約を満了する形になりました。まずその旨、皆さまにご報告をさせていただきます。
――ご本人から辞任の申し出があったのか、いつ頃どのような経緯で結論を出したのかを教えてください。
(11月20日の)最終戦終了後、名波監督と話し合いの場を設けさせていただきました。クラブとしてJ2復帰という結果を出せなかった中で、来シーズンどのような覚悟を持ってクラブが臨むのかをまずお話させていただいたうえで、名波監督の意見や振り返りも聞かせていただき、お互いにここで契約の満了と決めました。
基本的にクラブ側が「こういう方向でやりたい」ということに対して、「それであればクラブの意見を尊重する」と。名波監督としてはこちらの結論に賛同してくれた形になるかもしれません。
――ご本人にお話をしたのはいつで、契約を結ばないとなったのはいつでしょうか?
最終戦が終わってから話し合いを持ち、決まった場面で言うとリリースのタイミングという形になります。
――チームとして契約を結ばないという判断をしたときのきっかけや今後のチームづくりをするうえでどのタイミングで考えられたのでしょうか。
最終戦まで100%昇格が不可能な状況ではありませんでした。終盤では盛り返した試合もありましたし、昇格のチャンスも十分にあったので、結果で判断をするという意味では、評価を下すのが難しいシーズンだったと考えています。そういう意味ではどんな形で終わったとしても、「シーズン終了後に今年の戦いを双方でしっかり振り返ったうえで結論を出したい」と考えていました。ですから最終戦が終わってからの話し合いにいろんな意味が込められていましたし、途中でこちらが判断を決めていたということはありません。
――名波監督の意見や受け止めについては、クラブ側との認識の違いなどもあったのでしょうか?
1年間を通じ、結果も含めて「評価する」という意味では難しい結果だったと思っています。それが唯一判断基準として置けるのは、やはり「昇格できたかどうか」という部分だったとシンプルに言えばそう思っています。マネジメントにおいても、現状でやりうること、名波さんの表現としてやっていただいたことも理解しています。一方で規律やフェアプレーなどの部分に関しては、監督に依頼する前提条件としてもう少しクラブ側が整理していれば、もう少し違う戦いができたのかもしれない。互いにそう振り返っています。できたところと足りなかったところに関して、お互いにあまり差異はなかったと思っています。
――名波監督としては、要請があれば来年も指揮を執りたい意向はあったのでしょうか?
そこまでの明言はなかったですが、「とにかく、このクラブの未来を大事にしてほしい」というご意見もいただきました。リリースしたコメントにもあったように「このクラブの輝かしい未来」と言っていただきましたし、直接「このクラブを好きになった」とも話してくださいました。私個人としてもやはり、人間として非常に魅力的な方であることに変わりなく、それを双方に確認するような形でした。
――シーズン4位という結果でした。クラブに何を残してくれたか、という功績なども含めて、どのように振り返りますか?
「原点回起」というスローガンを掲げて、本当に一緒に取り組ませていただきました。本当に人間性が素晴らしい監督でしたし、私も本当に大好きな監督でした。そういう意味では一緒に結果を出せなかったことが率直に残念だったということが全てです。人間性を持ち味にしたチームマネジメントということで、新しいクラブの姿、チームの姿を見せてくれる監督でした。
フットボールについてとやかく言える立場ではないですが、「この監督と一緒に結果を出したい」と思わせてくれる監督でしたので、本当に感謝しかありません。選手時代も素晴らしい実績がある方が、松本山雅の監督という立場でこの地域に来てくれたことに改めて感謝しています。
――今後ですが、どこをどのように伸ばす監督を望むのか。どのように考えていますか?
これまでもさまざまな議論は重ねてきたのですが、やはりフットボールの部分をしっかりと見極めるのはプロの仕事ではないか…という観点から、下條(佳明)テクニカルダイレクターを中心にクラブの意向を確認し合ったうえで、フットボールをどう表現するか。下條からの話を聞いていただきたいと思います。
基本的にはシーズンが始まれば監督にすべてフットボールの現場のことはお願いするしかないのですが、前提として「クラブが目指したいもの」「フットボールを通じて表現したいもの」をクリア(明確)にするにする必要があると思っています。私たちが今シーズン「原点回起」に取り組んできて、(クラブの)中ではクリアになってきたと思っています。その部分について下條を中心にフットボールをいかに伝えていくか、前提条件をしっかりクラブが作ることが必要であると整理しました。監督に頼らないサッカーを作っていくということも一つのメッセージとして必要だと思っており、監督の人選はその上で進めています。
――大きな判断をしたというなかでは、「原点回起」を進めるなかで改めてクリアになって整理できたということですが、その中身の部分については具体的にいかがでしょうか?
もう少し整理して皆さんにお話しできるよう整えているところです。例えば(田中)隼磨くんの引退時にコメントにもあった部分であったり、過去に言われた「山雅らしさ」であったり。今回そういった要素をひっくるめて「原点回起」を総括する中で、フットボールの表現というところでは本当に名波監督に全力でやっていただき、今できる限りのパフォーマンスを出してくれたと思っています。
ただ、Jリーグ参入以降にクラブが積み上げてきた土台をもう一回明確にする必要があるということを、クラブとして整理させてもらった1年でした。そういう意味では規律のところなど前提条件をクラブで再整理したうえで、監督に最後の仕上げをお願いする形にしたいです。クラブと共にチーム作りを改めて考える必要があると感じました。
――規律というのは、クラブ内の行動規範やルールなど、山雅の伝統のようなものを整理し、アイデンティティとしてクラブ側が再定義していくイメージでしょうか?
そうです。実際にはそれを追い求めてここ数年も過ごしてきました。元選手である飯田(真輝)くんもクラブに戻って来たり、ここで隼磨くんも引退したり。あと、鐡戸(裕史)フットボール部長がそこにどうしてもこだわりたかったのは間違いない事実です。その部分を再整理して表現できる土台を作るのが大事だと改めて思いましたし、それはフットボールをやるうえで…というよりは、行動規範であったり、若い選手や新卒の選手をしっかりクラブとしてピッチ外も含めて接していく部分であったり、いろいろなアプローチが必要ではないかと。クラブOBたちの意見も聞く中で、それがクリアになってきたと私は思っています。
――クラブとして明確にメッセージを発していくという必要性も感じられたのではないでしょうか?
しっかりメッセージとして発信できるものを整理していくと、やはり名波監督の素晴らしいマネジメントが現場にあったと私は思っています。ただその響き方や伝わり方は、選手の理解度の上に成り立つ部分があって、多少は差異が出るとも感じました。その土台の部分はクラブで整えたうえで、その時に合う、そのチームに合う監督に対してミッションをしっかり確認し合ったうえでお願いする。この段取りをしっかりするべきだと強く思っています。
――それを踏まえて次の人選については、改めてクラブとしての継続性であるとか、トレンドを両立しながら選んでいくのでしょうか?
クラブの「原点回起」の考え方についてはこの1年、下條さんが(故郷に)戻ってきていただいて、内外から互いに理解し合える1年だったと思っています。その土台をお互いに共有できた中で、フットボールをどうデザインしていくか。知見がある下條さんに任せたいと思っています。(フットボールの)表現にはいろんなやり方があるので、そこは人選に生かしていただきたいです。ただクラブとしては、しっかりその土台のところを、監督が誰になっても大丈夫なように体制を作ること。そこが重要だと思っています。
――クラブとして方針を整備して土台を作ったうえで託したい、というお話がありました。ただ、「原点に戻ろう」というテーマで今年がスタートして、その原点をこれから整備しようということは、「戻ろうとしている原点」を名波監督に提示しないまま1年行ってしまっていて、今やろうとしている作業は本来であれば「原点回起」というスローガンを掲げた今シーズンにやっておかねばならかったのではないでしょうか?
名波さんに監督をお願いしたとき、クラブとして一番確認した事項は「あきらめない」「切らさない」「サボらない」という表現でした。それは当時に言われていた「山雅らしさ」と重ねてお互いに理解し、スタートを切ったつもりです。その部分で「握り方が浅かった」と言われればそうだったかもしれません。終盤戦でそれを表現できたかというと、難しいシーンが試合を通して出ていたのではないかと思っています。ただ、前提として追い求める姿は共有したつもりですし、それに対する結果が出たというのも、互いに受け止めるべきかと思っています。
――終盤戦に神田社長が取材に対応する中で、当然名波監督の去就をどうされるのかという質問を向けました。「(シーズンが)終わった後、結論を持たずに話し合いをしたうえで決める」と繰り返し言われていました。しかしながら、ある選手の契約満了について名波さんは「知らなかった」と話されていました。来年も続けるという選択肢があるのなら、既存の選手を残すべきか満了にすべきかは、当然意向や意見を聞くなり参考にするなりやり取りがあってしかるべきではないでしょうか。それがない以上は結論があったようにしか思えませんが、どうご説明されますか?
そこに関していろんな見方があるのは、確かに受け止めなければいけないところです。ただ、きょうの話の中でお伝えしたい重要な要素になりますが、再整備していくクラブとしての土台の部分です。それに照らし合わせて当該選手が在籍期間中にどのようなパフォーマンスであったか…というのを、私たちはよく見てきました。その上で活躍して成長を見せてくれた部分はありますし、名波さんにもそう導いていただきました。その点においては感謝しかありませんが、松本山雅が求めるフットボールの表現の中で、「サッカーが上手いか下手か」以外の部分でも、クラブとして判断しなければいけない要素がありました。それは私たちが向き合わなければいけない現実でした。そういった意味でもクラブが強い覚悟をもって前提条件を作り、その上で来年の監督にお願いできるかどうかも含まれています。決してネガティブな判断ではなく、そこに意志を込めて判断しました。
――仮に名波さんが監督を継続したとしても、先ほどお話されたクラブの前提条件に照らせば、当該選手の能力や今後の期待値があっても相応しくないので、その選手には頼らないということでクラブ判断で契約満了にしたということでしょうか。
仰るとおりです。次の監督をお願いする人には、この判断の主旨をしっかり伝えた上で、クラブとチームづくりを握れる方にしたいという強い覚悟があります。
――非常に知名度の高い監督でもありました。名波浩監督が松本山雅にいたことの地域の効果や貢献度という部分ではどのように受け止めていますか?
名波監督は非常にしっかりとしたご自身の色を持った方です。その中で緑に染まってもらって、チームマネジメントの中でこの地域に自分の色を浸透させてくれた方だと思っています。なおかつビッグネームの方がこの地域の色に染まって指揮を執っていただいたというのは本当に感謝しかないと思っていますし、この地域のさまざまな方にサッカーを知る機会や、松本山雅を改めて見てもらう機会を作ってもらったと思っています。
――反町(康治・元監督)後の3シーズンで、結果的に3人の方に監督をお願いする形になりました。新しいスタイルを上積みしてきたい思いがあった中で、土台が築けたのかどうか見極めが難しい流れの中で体制が変わった印象もぬぐえません。託した人選を含めて、そこまでの判断にはどのように目を向けて省みていらっしゃいますか?
Jリーグに上がって以降追い求めてきたものがあり、今年は「原点回起」という言葉でもう一度ベースに置いて望んだシーズンでした。過去の呪縛というかそういったものに引っ張られながらも、何かベースとしたいものを探ってきたのは監督の人選にもそれは含まれています。今回の決断で言うと、監督だけにそこを任せるのではなく、クラブ側がしっかり土台を作る作業をしなければいけない。それが今年見えた「原点回起」の答えであると思います。前監督の柴田(峡)さんも当然(2011年から在籍していたため)山雅のなんたるかを知ったうえで現場に立ちましたが、それでも表現することが難しかったという結果も踏まえて今があります。僕らが大事にしたいものはクリアになったので改めて整理して示したいと思っていますが、クラブでしっかり土台を作ることについて、下條さんを中心に進められる体制を構築すること。それが、見えてきた課題だと思っています。
――後任選定は編成も含めて動いているわけですが、先延ばしにするのは得策ではないと思います。どのくらいまでにという目処はクラブとして設定してありますか?
編成は早いに越したことはないと思っています。一方でクラブの土台の部分を強化に関わる人間でしっかり確認しながら進め、今度お願いする監督とも明確に共有することを最優先にしたいと考えています。下條さんを中心に目下動いておりますので、なるべく早くさまざまなことを決めていくべく話を進めています。