【報道対応】霜田監督就任について(2022.12.5) ※無料配信

――来季の監督として霜田正浩氏が就任することが決まりました。改めて経緯を教えてください。

下條 監督選考については今年の成績を受けて(名波浩)前監督が代わることに伴い、スピーディーに進める運びとなりました。クラブとして、松本山雅としてどういうサッカーをやっていくべきか。もちろん勝つ確率が高いものをクラブが掲げて、我々と目指す方向が合致したというのが一番大きなところだと思います。

――「クラブが掲げる方向性」というのは、具体的にどのように整理されましたか?

下條 一番は勝利のために「より主体性を持ったサッカー」「攻撃的なサッカー」を進めたいということです。今はワールドカップ(W杯)期間中で一番分かりやすいと思いますが、どこのチームがというわけではなくて、主体性のある攻守一体となったサッカーを目指さなければ、結局は良い成果が挙がっていません。そういう部分が一番のコンセプトです。

――新監督は数人の候補の中から選んだのか、それともある程度霜田さんを選ぶことを念頭に置いていたのでしょうか。

下條 我々のクラブが来季昇格するのか、J3に残留するのかというギリギリの戦いがありました。結果が出た後にリストアップしている候補の中から人選していった運びです。

クラブとしても年間を通して監督をリストアップしていますし、我々の中でも何人かの候補がありました。今季のJ3は終わるタイミングが(各カテゴリの中で)一番最後で、選手の編成も監督の人選もスピーディーにやっていかなければならない側面がありました。その中でいろいろな新監督候補のコンセプトがあって、共鳴する部分があったので霜田さんを選ぶことになりました。

――人選にあたって最も重視したことを教えてください。

下條 やはり我々のボールを握る時間を多くしなければいけないということです。主体的、能動的に我々がサッカーを攻撃的に進めていく。そのためには何をやればいいか。さまざまな議論がありました。その中で私の考えている部分、それからもちろん松本山雅の社長が考えている部分で、合致したものが出てきたということです。

――霜田さんは日本サッカー協会で技術委員長などを務め、レノファ山口と大宮アルディージャを指揮するなど、多彩な経験をお持ちだと思います。このチームで特に期待する部分はいかがでしょうか?

下條 私は以前、(横浜F・)マリノスや(名古屋)グランパスの強化担当などとして日本サッカー協会の会議にたくさん出ていて、霜田監督と同席することもたくさんありました。一緒に仕事をしたことはありませんが、経験値の中で地方クラブの実態と今後作っていくサッカーに関して深掘りできるのではないか…という部分が私としてのフックです。

――選手と向き合っていくという意味では、どのように力を発揮してほしいでしょうか?

下條 選手との関係は心配していません。霜田監督が今まで作ってきたチームは、なかなか成果という部分では見えるものと見えないものがありますが、チーム一体となったサッカーを実現していたので、そこにも期待したいと思っています。

――霜田監督はJ2の2クラブを率いて最高成績は8位でした。J2昇格やその先を考えると、不安に思われるサポーターもいるかもしれません。

下條 サッカーは優勝経験のある監督を連れてきてもハマらないケースがあります。ステージやコンセプトが変わってくる中では、選手と同様に経験がものを言ってくるところがあります。過去というよりも前に向かって進むために、山雅でそういった部分でハマってくれれば、必ず良い成果が出てくるのではないかと思っています。

経験と実績の両方がある方はそう多くはないと思います。ただ(順位が)下のほうのクラブを経験して、日本サッカー協会で技術委員長も経験して、(ザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチら)海外の監督も招聘している。先陣を切ってそうした仕事に従事していた方なので、いろいろなものが頭の中に入っています。その中からこの松本山雅で生かせるノウハウを実行していただければ、一番良いのではないかと考えています。

――クラブとしては長い目で見て考えているのか、まずは来年ということなのか。どのようにお考えでしょうか?

下條 成果はまず来年だと思います。いろいろ良いことをやっても順位が上がらなかったりしますが、我々のミッションにはまず昇格があります。ミッションを果たせられれば、中身はともあれ結果は出たということになると思います。ただそこだけではなくて、より勝つ確率の高いという意味では、攻撃的に我々が持つ時間、攻守のバランス、推進力やボールの奪いどころだとかがチームで共有できれば、また違ったサッカーになっていくと私は信じています。

――就任コメントに「山雅の流儀」という言葉がありましたが、クラブとしてこれまで大切にしてきた部分もお話されたのでしょうか?

下條 もちろんです。「山雅の流儀」という言葉が一人歩きしてもいけませんが、難しいものであるとは思っていません。このクラブがはい上がってきた歴史の中で、そこは非常に大切な要素だったと思います。それは会社、選手、サポーターの皆さまが共有しているもので、良いサッカーをやるためのベースにあるもの。ただここでは「山雅の流儀」「山雅らしさ」を定義して、継続的にやっていかなければいけないことだと理解しています。このクラブが歴史を作っていくにあたって大切にしていたものなので、それを尊重しながら我々が引き受けて、継続的にもっと良いものを作っていくと理解していますし、チームにも伝えたいと思います。

――霜田さんがこれまで監督として表現してきたサッカーは戦術設計が明確で、攻撃的なイメージがあります。その半面、守備面には少なからず不安定さも見られたと思いますが、その部分はどのようにお話しされましたか?

下條 やってきたチームの順位を見ればなかなか成果が出ていないですが、やろうとしていたサッカーは明確で、得点は取るけど失点が多いところがあります。要は、どちらのリスクを背負いながらやるか。バランスを見てできれば一番良いですが、そこはサッカーのいちばん難しいところです。W杯で日本がなぜ強豪チームに勝てたかといえば、いろいろな分析があると思いますが、やはり監督の考えやサッカーの戦術を大会の中でアップデートしたところ。そういう中で山雅というクラブでも勝つための最適解が出てくれば一番良いと思っています。その一番のフックとなるところが、まず主体性のあるサッカー。アグレッシブにやって、チャレンジして、その跳ね返りで失点するのは仕方ないと思います。点を取らないとサッカーは勝てません。サッカーは2-1のゲームが多いですが、4-3でも5-4でも勝ちさえすればいいのです。そこのマネジメントはいろいろとありますが、何しろ点を取らないことには勝てないという前提があります。もちろん失点が少ないに越したことはないですが、ゲーム数×1失点であれば勝つ確率は高いと思います。その代わり、1点ではなくて2点以上を取るサッカー。これはバランスですが、必然的に年度が終われば勝つ確率が上がっているということだと思います。

私はグラウンドをいつも見ています。なぜグラウンドにいるかというと、どのクラブもそうだったと思いますが、いろいろな現状を見ないとコメントも言えないですし、どこに課題があるのかもわからない部分があります。前監督だって一生懸命にやられていて、成果が出てくればやりようもいろいろとありましたが、成果が出てこないとモチベーションも下がってしまいます。「やりがいがあるものとはなんだろう」と考えた時に、次のステージに向かうためにはチャレンジをしないといけないと考えました。

私は来季に向けての一大プロジェクトだと思っています。監督が替わって、クラブのスタッフは「攻撃的にやってほしい」という人たちが多いと思いますが、そんな簡単なことではありません。名波監督も攻撃的にやっていたんです。ただ成果がついてこなかったという部分で、より確率を上げていくためにデザインすることがすごく大事。それが選手たちと共有できて、同じ方向を向ければ、より成果が出てくるのではないかと思います。

――名波監督は若い選手たちを伸ばしていくことに熱心に取り組んでいました。霜田さんも特にレノファ時代はそうしたアプローチをしてきたと思いますが、そこに対する期待はいかがですか?

下條 もちろん若手を育てることは大事ですが、かといってベテランを使わないとかそういう話ではないですし、年齢は基本的には関係ないと思っています。年齢ではなくて、その選手が何ができるか。選手たちができることをどういう戦術や起用であれば発揮してくれるか。我々が努めなければいけないのは、選手が自分の持っている力を100%発揮できる環境を用意することです。

戦術によってポジションチェンジがあったりして、出られない選手や本来のポジションではないということもこれからたくさん出てきます。そこで最適なものをプレゼンテーションしていくのは監督の役回りだと思っていますが、そこまでのある程度のロードマップを監督と共有できれば、そこから先はフロントがとやかくいう話でもないと考えています。

もちろんシーズン中にいろいろな部分を修正したり改善したり、システム変更したりというのは常日頃からあることです。何しろ勝つために目の前にいる選手たちの最大限のパフォーマンスを引き出すのが監督の仕事であって、コーチングの極みだと思うので、そこに期待したいと思います。

――次の監督には現場任せにするのではなくて、クラブとしての前提条件を伝えていくという話もありました。霜田さんにはどのような前提条件を伝えましたか?

下條 言葉だけが一人歩きするのは本意ではありませんが、キーワードは「ハイライン、ハイプレス」です。言葉を変えればより攻撃的なスタイル、攻撃的な守備。我々が主導権を握ること、受けに回らないということです。もちろん相手が強ければ受けに回って、ブロックを作って下がる時間帯も試合の流れとしてありますが、ただ下げるのではないということ。FWから連動したプレッシャーをかけなければいけないですし、W杯の日本代表もそういう戦いになって、先制されても逆転しています。(FIFA)ランクの下のチームが低い位置でブロックを作るなんて、一つもありません。

サッカーはリスクを背負わないといけなくて、ゴール前で守ってビンポイントのクロスから相手にゴールされるリスクなのか、前から(プレスに)行って裏を使われるリスクなのか。トランジションという言葉がありますが、私は「遅攻」か「速攻」しかないと思っています。速攻が一番点を取る確率が高いですが、言葉を変えればショートカウンター。敵陣でボールを奪って、ゴールに近いエリアで攻撃できれば一番得点率が上がります。今季の山雅はそこが苦手でした。チームとしても整理し切れなかったので、相手にボールを握られると少しラインが下がってしまっていました。

言葉で言うと簡単ですが、ファーストディフェンダーからきめ細かいアプローチをしていかなければ難しいことです。ですが主体性を持って自分たちからボールを奪いにいって、相手のミス待ちではない守備を実現することがすごく大事だと思っています。それができればデータとしても山雅のインターセプト率がものすごく上がってくると思います。

あとはイエローカード、ファウルの多さ。これは決して監督が推進・推奨していたわけではないですが、山雅が大切にしなければいけない要素として「フェアにボールを奪う」「最後まで諦めない」ということがあります。諦めないのはいいけど「ファウルで止めろ」なんてことはないはずです。そういう行間は埋めていかないといけないので、新しいチームには必ずそういう話をします。私の経験からすると、優勝したチームや強いチームはイエローカードもファウルも少ないです。我々のクラブのコミットメントとして、フェアにプレーすること、フェアにボールを奪うことが非常に重要です。

――先ほどキーワードに挙げられた「ハイライン、ハイプレス」を実現するためには、走力やインテンシティ、連続性、球際という要素が含まれてきますし、そもそもそれがなければできないと思いますその部分を練り上げていく作業についてはどのような期待がありますか?

下條 90分とは言わないですし、そこは使い分けないといけないですが、そのためのハードワークやフィジカルだと私は思っています。J1やJ2の上位チームのパフォーマンスというのは、そこでエネルギーを使っているんです。マリノスと(川崎)フロンターレのサッカーは違いますが、攻撃も守備も彼らのコンセプトでやっています。結果として今は走行距離がスタッツで出てきます。それを見たら明らかに高し、特に中盤の選手は相当高いです。場合によってはGKの走行距離が5kmを超えるチームもあります。昔のサッカーだったら考えられないです。ただ、一概に「それがいい」ということではなく、「それで勝てたらいい」ということです。そこも含めて「勝つ確率の高い」という言葉で私はくくっています。

――反町康治元監督の時代から、山雅は決してポゼッション率の高いチームではありませんでした。主体的、能動的にボールを持つ時間を長くするというのは、時間がかかることではないでしょうか?

下條 ですから選手の判断力とスキルが必要です。狭いスペースでスピードアップすれば、うまくないと困ります。スキルアップするのは監督が変えるところではなく、選手個々が高めないといけません。どこのチームもそうですが、今はスペースも時間もないサッカーの中で「シンプル」「テンポアップ」という言葉をミーティングでよく監督が使いますが、それは個の能力だと思います。個の能力が高い選手の集合体になれば、監督はやることがなくなってきます。それを高めるためには形。スタイルという言葉はあまり好きではないですが、要は次にやることがわかっていれば判断が速くなる。そういうことを積み上げていけたら一番いいと思っています。

今は(Jリーグに)ヨーロッパの監督も多いので、「オートマチズム」「パターン化」「ポジショナルプレー」などの言葉がいろいろあります。ポジションに番号を打ってここのポジションはこうだと言っている海外の指導者もたくさんいますが、そこまでやるのは逆に選手を縛ることにもなります。ある程度フレキシブルな対応をしながら、でも選手が迷子になるようなことはやりたくないです。やることだけは明確にわかっていて、そこでコントロールミス、パスミスが起きるのは大した問題ではなくて、「うまくなれ」という話です。ただチームとしてやっている狙いはこうだということをベースにして、それぞれの選手の特徴が表現できれば一番良いと思っています。

霜田監督は攻撃の部分でそれをわかりやすく説明してくれると思います。守備は過去のデータを見て苦手だとか、預かったチームは失点が多いというのはありますが、守備というのはある意味チーム力だと思います。狙い目や奪いどころといったシナリオを明確にして、ブラッシュアップしていければと思っています。森保ジャパンもそうですが、いろいろな選手がそういうコンセプトを理解して、人が替わってもサッカーの質が落ちず、やり方を変えなくても大丈夫なものを増やしていきたいです。

というのも、こういう地方クラブや下のカテゴリに所属しているクラブは、選手を抜かれることもあります。選手の獲得ももちろんできますが、獲得するのは比較的若い選手が多いですし、今回もそうですが新卒で初めてJリーグにくる選手もいます。彼らが迷わないようなことだけは提示したいので、そこは監督にもきちんとやってもらいたいと思います。

――そのベースがキャンプで構築できて、開幕から右肩上がりにいって結果につながれば理想ですが、時間がかかる要素もきっとあると思います。それでもあくまで来季の霜田さんのタスクとして、昇格というのは変わらないでしょうか?

下條 そこを下げてはいけないですし、それがあっての方法論だと思います。それに、あまりやりたくないことを選んでやったところで、成果は出ないと思っています。どんな監督もそうですが、自分の戦術論を刷り込むには多少時間を要します。こういう理想論やシステムを持ってきて、この選手をここで使おうと思っていても、トレーニングを重ねたら「あっちかな」「こっちかな」という試行錯誤も出てきます。そういうものも含めて右肩上がりに成果が出てくればいいと思っています。そのキーワードが先ほどから言っていることと、もう一つは攻撃も守備もシンプルにテンポアップすること。それからコレクティブな作業を増やしていくということが、サッカーにおいてはすごく大事だと思います。

――これから選手やスタッフの編成も進んでいくと思いますが、霜田さんからも要望や方向性はお聞きしているのでしょうか?

下條 そういうものは全て共有しながら編成するのが理想です。ただ選手には契約期間があったり、他クラブからのオファーもあったり。我々からしたら戦力として見極めたり、契約満了にする選手もいる中で、シーズンが終わってから急激にいろいろと進めているので、理想形という部分では少し物足りない部分がありますし、結論が出ていないことが今はいっぱいあります。そういう部分で情報交換しながら、可能性のある獲得や編成を考えてはいますが、これはもうお互いさま。獲りたい選手が簡単には来ないですし、現有戦力の若い選手も含めて、J3なのでそこを育てないといけないことも事実です。若い選手がハマってくればなおさらいいですし、そういう全体的な部分のバランスを見ながら進めていくしかないと思っています。

――クラブとしてここ何シーズンかは守備をベースとしてきて、なかなか形にならない部分がありました。攻撃的にシフトするという部分でのすり合わせはどのように考えていますか。

下條 形を作ったらサッカーは勝てるという話でもないですし、チームは機能するものです。私の中では「機能するものをチームと呼ぶ」と、ずっと思っています。会社もそうですし、組織というのは機能しないことには良くなっていかないので、そこが一番。3バックだろうが4バックだろうが、2ボランチだろうが1ボランチだろうが、機能すればいい。攻撃するときに人が前へ前へ出ていって、よく最近ではテレビの画角に(両チームのフィールドプレーヤー全員の)20人が入っているときもあるので、そういう時間を増やしたいです。そういう中でのスキルアップが選手も一番成長すると思っています。

――2022シーズンにテクニカルダイレクターとして1年間チームを見てきて、そういうスキルアップも含めて、スタイルの転換が形として実ってくるだろうという手応えがあったのでしょうか?

下條 我々は昨年スピーディーなサッカーをしていて、スピーディーな選手が点をたくさん入れていた半面、前と後ろの距離が少し分離してしまう側面がありました。後ろがラインを上げようと思ったときにはすでに相手チームにボールが渡っていたりしていて、またラインを下げないといけない場面もありました。足の速い選手はそういう武器がありますが、ボールを失うこともあります。(前線に)人数が少なければチャレンジしないといけないので、シュートに持ち込みたいというのはありますが、決定機を作る=シュートの本数ではないと思っていて、もっと得点の確率の高いプレーが必要です。

それともう一つは、サッカーではシュート数が少ないほうが勝つことは結構あるんです。とはいえどこから打っているかというと、スペインなどが良い例かもしれないですが、変なエリアからシュートは打たないです。この間日本と対戦したときも、私たちの感覚だと「なぜそこからシュートを打たないのか」と思ったときに、彼らはおそらくボールを持てるのでもっと確率の高いことを探しているんです。そういうサッカーに慣れているから違和感がないのかもしれないですが、「もっとリスクを負ってもいいのではないか」とスペインのサッカーを見た時に思いました。ですがシュートを打ったパフォーマンスだけを褒めるようなサッカーはやりたくなくて、より取られにくいフリーな人間がいたら、その選手にシュートを打たせる。それが崩しだと思っています。相手陣内を深くえぐってのクロスも得点率が上がります。そのように、相手の守備ラインを振り回すようなボールの保持。緩いボールポゼッションは面白くもなんともなくて、点取りゲームなので、ゴールに向かっていく中での効率の良いボール保持。それが一番やりたいことです。

――霜田さんは語学堪能で、プレゼンテーション能力や選手に落とし込む力も長けているとお伺いしました。大きな転換をしていく中で、そういった力も一つのキーはなりますか?

下條 名波監督も選手たちに共有するものをプレゼンテーションしていましたし、非常にまめにやられていたと思います。そこの説明の仕方や色というのは、いろいろな監督の独自性があります。そういうところは一般論としてサッカーの意見交換をしても、そこまで齟齬がありません。日本サッカーの進めるべきところ、山雅の目指すところなどでいろいろなサッカー談義の中も含めて、本当に我々と共鳴してくれたところがあるので、そこには期待しています。ただ我々のチームの選手をみんな知っているわけではありません。そういう中で目の前にいる素材をどうやって料理していくか。どういう編成にしていくかというのはキャンプを通して春先にベースを作って、そこがいい形で繋がっていけば一番いいです。それでまずは第1節に勝って、モチベーションを上げてさらにエネルギッシュにチームの改善に向けてやっていければ良いと思います。

――振り返れば反町監督、布監督、柴田監督、名波監督も、歴代監督はそれぞれに理想や表現したいことがありながらも、やはり途中から現実路線を選んだ経緯もあります。霜田さんは確固たる意志で貫くタイプあるようにお見受けしています。もちろんサッカーの世界ですからどうなるかは分かりませんが、現時点ではクラブとしても忍耐強く支えていく考えでしょうか?

フロントとしてもいろいろな意見交換をしていければと思っています。よくこの世界では監督から「ブレずに」という言葉が出ますが、それはすごく大事なことだと思います。相手のほうが勝率が高かったり強いと感じたときに対策は立てないといけませんが、「相手に合わせたサッカーをやる」ということではなくて、我々の積み上げてきたものがある程度通用するのであればまずはチャレンジすること。その上で試合の流れの中で変えるという柔軟性の実現は、監督が表現しなければいけないことです。それによって途中から入った選手がゴールを決めたり、アシストしたりして流れを変えて結果として勝てれば、日本代表のように「ハマったね」となります。そういうことが多くなってくれればいいですが、そこに頼るわけではありません。誰を先発にして、誰を後出しにするか。W杯の日本代表もそこがすごく大事なところですし、監督にお任せするしかないと思います。

――これまでの霜田さんの成績を見ると、49勝42分78敗となっています。「勝つ確率が高い」という観点からすると勝率という意味では低いですが、「勝率を上げてくれる」という期待はどのような部分に感じているのでしょうか?

下條 確率というのは年度の最後の数字で出てきます。J1、J2、J3では対戦相手が違いますし、チームも選手も違うので、一概にそこだけでは結び付けられませんが、そこで何が起きていたのかは一番監督が理解しているところです。まずは預かったチームで選手たちと良いチームを作ってくれることがすごく大事だと思います。やろうとしていることに選手たちも共鳴してくれて、チャレンジしてくれるという姿勢があれば、やがて良くなっていく部分もあります。そこで食い違ってしまうと難しいですが、かといって選手は監督に言われたことをやろうとするので、まずはそういうトライをしてほしいです。いきなり勝った負けたを選手に言っても仕方がなくて、自分の最大限を監督の掲げた戦術のもとで発揮してほしいと思います。より理解を高めて、チーム一体となって…というところです。

また、確率うんぬんで言えば下位のチームを預かっていた監督というのは、そのような数字になってしまうのではないでしょうか。霜田監督は山口のときも大宮のときも、難しい状況の中で指揮を執っていました。監督には私からもまめにコミュニケーションを取って、客観視している人間の意見も尊重していただいてやっていただくしかないと思います。

これは新たに歴史を作りに行くことで、そういう意味では大きなプロジェクトです。保証がある人は誰もいないですし、誰かに預けたからと言っておんぶに抱っこで進むわけでもありません。クラブの考えていることと私のサッカー観に共鳴してくれて、同じように歩みを進めていただければ一番いいと思っています。