【キャンプレポート】初のトレーニングマッチ 千里の道も一歩から ※一部無料
第1次串本キャンプ第8日は29日、今季初のトレーニングマッチ2試合を和歌山県串本町のサン・ナンタンランドで行った。アルテリーヴォ和歌山戦(45分×2本)は1-3、1-0の合計2-3。桃山学院大戦(45分×2本)は3-1、1-1の合計4-2だった。新たなスタイルの表現にトライするとともに、エラーを出して修正するのが主眼。その意味では、大きな価値を帯びる2試合だった。
新たなスタイルの体得はやはり、一朝一夕にはいかない。それが如実に表れたのは、アルテリーヴォ和歌山戦の1本目。低い位置からボールを前進させられず、ボランチにつけたボールを奪われるなどして開始18分までに2失点を喫した。23分にも、やはり最終ラインのミスパスをさらわれて3失点。いきなり大きなビハインドを背負った。
プレスも高い位置から奪おうと強襲したが、かわされて逆サイドに展開されるシーンも。スイッチの共有がまだ途上であることをうかがわせた。得点は38分。濱名が左サイドから出したパスに渡邉が抜け出し、右足で押し込んで1点を返した。
霜田監督に「前への意識」などを強調された後半は様相が一変した。背後への動き出しが増えて刺し込むボールも入り始め、前線の4人が流動的な攻撃を展開。ワンタッチなどを多用しながら敵陣深くをテンポ良く侵食していく。中央からサイドに広げるタイミングや受けるエリア、人数のかけ方など、トレーニングで落とし込んできた要素が一定の頻度で見られた。
流れの中からはネットを揺らせなかったが、40分に追い上げるゴール。左CKを野々村が触り、こぼれたボールを田中が押し込んだ。1試合目はこのまま試合終了。90分間フルでピッチに立った選手は6人。キャンプの疲労が蓄積した中で頭をフル回転させる新スタイルを体現するのは、難しかったかもしれない。
2試合目はメンバーを入れ替えて臨んだ。フォーメーションは2試合とも同じ。10分にハイプレスから奪われて先制を許し、暗雲が立ち込める。しかし、その後は踏みとどまって反撃。17分、常田を起点に榎本-下川と繋ぎ、左クロスから鈴木を経由して最後は滝が同点ゴールを挙げる。
その後も優位に試合を進め、主に左サイドから崩していく。28分に再び常田-下川-榎本と繋いで最後は鈴木が決めて逆転に成功。6分後には喜山を起点に榎本が左クロスを入れ、小松が決めてリードを広げた。最終ラインとボランチが効果的な配球で散らし、そこから何度もチャンスを演出した。
後半も同様の展開。20分には下川のクロスから榎本がヘッドでゴールを決めた。榎本は1ゴール2アシストを含めて全得点に絡んで存在感を発揮。直後にセットプレーから1失点を喫したものの、それ以上の失点は許さずゲームを終えた。
今回は2試合でメンバーを分けたが、主力などの色分けはせずに組んだ。ルーキーの藤本、國分、田中らは途中出場で2試合に出場し、先発したフィールドプレーヤーの出場時間は65〜90分ほど。GKは1本ずつで交代し、1人あたりの時間は45分だった。
初のトレーニングマッチの手応えはどうか。
霜田監督と選手6人の声をお届けする。
霜田 正浩監督
――今季初めての練習試合でしたが、振り返っていかがですか?
ポジティブな面もネガティブな面も両方出ました。ネガティブな面は課題になりますし、ポジティブな面はこのまま続けていけばもっと良くなるという実感はあります。紅白戦ではなく対外試合というのは、相手のレベル関係なく実戦形式なので、良いところと悪いところが出ます。良いところばかり出るよりはよほど良かったと思います。
――ネガティブな部分はどんな点が挙げられますか?
練習ではできていたことを試合になると忘れてしまうことです。まだ頭の中で定着していないので、先は長いと思います。
――ポジティブな部分はいかがですか?
いろいろな選手のストロングポイントがこのサッカーをやる中で出せそうだというのが見えたり、もっときっと良くなるという選手も見えてきました。チームとしてどう点を取るかというのは、チャンスの数とか決める決めないはありますけど、チャンスの数は確実に増えていく感覚があります。
――2本目は縦への意識や逆サイドから入っていく動きなど、トレーニングで落とし込んでいることが見られたように思います。
そうじゃないと練習している価値がないです。パターンではなくて、形ではなくて、仕組みでやるためには理解した上でそれをやるかやらないかという判断が必要です。その判断の部分はまだまだ定着していないという印象があります。
――1本目は守備で行ききれなかった部分もあったのではないでしょうか?
相手があることなので、なんでもかんでも100%自分たちの思った通りにはいかないですけど、自分たちが意図的に仕掛けられるかどうか。守備でボールを奪いにいくときも、相手の裏を取るときも、意図がないと。ただ自分がここまでサッカーをやってきた感覚だけでやっていると、選手の能力がそれ以上は伸びないし、その選手の能力に依存するようなサッカーになってしまいます。選手の能力を判断も含めて上げていきながら、チームとして一つの絵を描くことに関しては、まだ始まったばかりです。
――判断のスピードを早めるためには、やはり反復が必要でしょうか?
もちろん成功体験も必要ですし、やられながら覚えていくことも必要ですし、だから練習試合をたくさん入れています。練習試合の中でまた今までとは違った概念でサッカーをやろうと言っているので、1週間ここに来てやっているだけできょうの試合で全部できるとは思っていなかったので、そういった意味では良いサンプルがたくさん取れました。
――練習試合を積んでトライアンドエラーを重ねるというのは、もともと描いていたアプローチでしょうか?
一番簡単なのは何も言わないことで、それで勝てるならそれが一番ですけど、そういう選手がそろっているわけではありません。チームとして一つのコンセプトを共有しながら戦わないと、個の力だけでJ3を圧倒できるようなチームではないと思っています。我々がどうやって勝つか、どうやって点を取るか、どうやってプレーするかというのは合わせていかないと。
開幕してからもそういう作業が必要になってくるかもしれませんけど、尻上がりに、右肩上がりに上がっていくのが一番です。いまは調子が良くて「これで大丈夫」という雰囲気になるのも嫌なので、ネガティブな面が出ても全然良いと思っています。逆に「こうやったらうまくいかないよね」というのがたくさんありますし、それをまたビデオで見て練習で落とし込んで、「普段の紅白戦とは全然違うよね」という中で選手が体感して基準を上げていってくれれば良いと思います。